第9話「包囲と歪んだ理(前編)」
「その行動――論理的に破綻してるぞ」
俺の一言で、空気が張り詰めた。
黒ローブの一人が、静かに前へ出る。
「スレトートだ」
低く、機械のような声。
「結界精霊使い」
(ストレート、か)
無駄のない気配。
その瞬間――
空気が“閉じた”。
視界が歪む。
透明な壁が、音もなく展開される。
(……囲われたな)
外界との接続が断たれる感覚。
空間そのものが封鎖されている。
「この結界内では、逃走は不可能」
スレトートが淡々と告げる。
背後には三人。
女、男、そして老人。
完全な包囲。
「分断する」
直後、世界が裂けた。
視界が引き剥がされる。
(来るか――)
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■佐々木透 vs スレトート
足元の感触が消えた。
気づいたときには、俺は“閉じた空間”にいた。
上下左右の感覚が曖昧になる。
透明な壁――いや、空間そのものが固定されている。
「この結界は多層構造だ」
声だけが響く。
「お前はここで詰みだ」
(……言い切るか)
次の瞬間。
横から衝撃。
「――っ!」
見えない一撃に吹き飛ばされる。
床に叩きつけられる。
(攻撃も結界制御……!)
立ち上がる。
だが次は背後。
「ぐっ……!」
肩に直撃。
体勢が崩れる。
(位置が読めない……)
攻撃の起点が掴めない。
「無意味だ」
冷たい声。
(……落ち着け)
再び衝撃。
腹に直撃。
膝をつく。
「がっ……!」
(今、ズレた)
ほんの一瞬の違和感。
「……完全ランダムじゃないな?」
沈黙。
(やっぱりな)
次の攻撃。
読む。
(右……いや、上――!)
かすめる。
だが避けた。
「なっ……!?」
初めての動揺。
(読める)
「結界と攻撃、同期してるな」
一歩踏み出す。
「座標固定。波長制御」
「見せかけだけ自由にしてる」
空気が揺れる。
(当たりだ)
だが――
(まだ壊せない)
通常魔法は弾かれる。
(なら“普通じゃない”やり方だ)
魔力を流す。
一度、弾かれる。
(想定内)
もう一度。
今度は“合わせる”。
波長を。
結界に。
(ここだ……!)
一瞬、噛み合う。
「……!?」
だが弾かれる。
(まだズレてる)
もう一度。
微調整。
重ねる。
乱す。
「理不尽論破――」
空気が震える。
「やめろ……!」
「“テクノアンチズム”」
その瞬間。
結界の均衡が崩れた。
波長が狂う。
制御不能。
亀裂が走る。
「構造が単純なんだよ」
前に出る。
スレトートの姿が現れる。
驚愕の顔。
「管理された魔法は――」
拳を握る。
「応用に弱い」
一撃。
叩き込む。
スレトートが吹き飛ぶ。
結界が砕け散った。
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■リドウ vs 男メンバー
「逃げんじゃねぇよ」
リドウが振り返る。
地面が蠢く。
粘土が盛り上がる。
「“粘土奴隷”」
分身が次々と生まれる。
十体以上。
「数で押す」
男が笑う。
リドウは動かない。
(……遅ぇ)
襲い来る群れ。
一撃で粉砕。
二撃、三撃。
流れるように崩していく。
「軽い」
ぼそりと呟く。
数が増える。
二十、三十。
空間が埋まる。
「これならどうだ!」
だが――
「だから軽いって言ってんだろ」
踏み込む。
爆発的加速。
群れの中へ。
すべて粉砕。
「本体はどこだ」
視線が走る。
(そこか)
一瞬で距離を詰める。
「数で誤魔化すな」
拳を振るう。
「弱いのは変わらねぇ」
一撃。
男が吹き飛ぶ。
分身が崩壊した。
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■リリーニャ vs 女メンバー
「弱いわね」
魔法刃が襲う。
リリーニャは必死に避ける。
だが追いつかない。
「くっ……!」
回復で耐えるが押される。
「終わりよ」
魔力が収束する。
(間に合わない――)
その瞬間。
「――遅れて悪いな」
重い衝撃。
拳が魔法を砕いた。
「リドウ……!」
「一人でやるな」
二人が並ぶ。
「今は二対二だ」
リリーニャが頷く。
音が静かに響く。
(いける……!)
リドウが踏み込む。
戦いの流れが変わる。
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(後編へ続く)




