第29話「亡魔の終焉・前編」
――ドンッ!!
空気が、裂けた。
暴徒が、波のように押し寄せる。
だが――
「邪魔だァッ!!」
リドウが踏み込む。
その一歩は、以前とは違った。
重い。
鋭い。
そして――迷いがない。
――バキッ!!
拳が一体の暴徒を砕く。
続けて、もう一体。
「……遅ぇ」
低く吐き捨てる。
「こんなもんで、俺たち止められると思ってんのかよ……ッ!」
怒りが、滲む。
だがそれは、暴発ではない。
制御された、怒り。
一撃一撃に、確かな意志が乗っている。
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「リドウさん、前を任せます!」
後方。
リリーニャがグロリーを構える。
その瞳は、揺れていた。
だが――折れてはいない。
「任せろ!」
短い返答。
それだけで、十分だった。
信頼がある。
「……絶対に、倒します」
リリーニャが呟く。
「フィートスさんのために……」
「そして――」
グロリーが輝く。
魔力が、渦を巻く。
「これ以上、犠牲を出さないために……!!」
――バシュッ!!
魔法が放たれる。
圧縮された魔力が、一直線に暴徒を貫く。
炎が爆ぜる。
氷が砕ける。
空間が歪む。
「……止まらないでください」
リリーニャの声が震える。
「止まったら……きっと、心が折れます」
涙が、頬を伝う。
それでも。
手は止めない。
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リドウが前に出る。
「……止まる気はねぇよ」
その声は、低い。
だが――確実に燃えている。
「アイツが……」
拳を握る。
「フィートスが、ああなってまで……」
一歩。
踏み込む。
「守ったもんを――」
さらに一歩。
「無駄にしてたまるかァッ!!」
――ドゴォン!!
拳が、空気を裂く。
複数の暴徒がまとめて吹き飛ぶ。
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「リドウさん……!」
リリーニャが息を呑む。
「大丈夫だ」
振り返らずに言う。
「俺は、止まらねぇ」
「止まれるわけ、ねぇだろ……!」
その背中。
そこには、迷いがなかった。
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やがて。
視界が開ける。
暴徒の波が、途切れる。
そして――
「……いたな」
黒い影。
歪んだ存在。
亡魔トリコワ。
「くっはっは!!」
狂気の笑いが響く。
「まだ懲りずに戻ってきたか?雑兵どもが!!」
リドウが、ゆっくりと構える。
「……雑兵?」
小さく笑う。
「誰がだよ」
一歩。
踏み出す。
その圧に、空気が歪む。
「よく見ろよ、トリコワ」
さらに一歩。
「俺は――」
拳を握る。
「お前を“終わらせる側”だ」
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リリーニャが後方に構える。
呼吸を整える。
(怖い……)
心の奥で、震えが走る。
(でも……)
視線を前へ。
(逃げない)
グロリーを強く握る。
「……リドウさん」
小さく呼ぶ。
「なんだ」
「……絶対に、勝ちましょう」
その声は、震えていた。
だが――真っ直ぐだった。
リドウは、少しだけ口元を緩める。
「当たり前だ」
それだけだった。
だが、その一言で。
リリーニャの恐怖は、消えた。
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「来いよ、化け物」
リドウが言う。
「トリコワとしての最後だ」
その言葉に――
トリコワの目が、わずかに揺れる。
ほんの一瞬。
だが、確かに。
「……黙れ」
低く唸る。
「貴様らに、何が分かる……!!」
魔力が爆発する。
暴徒が再び動き出す。
だが――
「リリーニャ!」
「はい!!」
瞬間。
魔力が広がる。
「制御領域、展開!!」
グロリーが輝く。
暴徒の動きが、鈍る。
「魔律の流れ……止めます!」
「今だ!」
リドウが踏み込む。
――ドンッ!!
拳と拳がぶつかる。
衝撃が、空間を震わせる。
「ぐっ……!」
「くっはっは!!」
トリコワが笑う。
「いいぞ……いいぞ!!」
「壊しがいがある!!」
リドウが歯を食いしばる。
「……まだだ」
押し返す。
「こんなもんじゃ、終わらねぇよ……!!」
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リリーニャの魔力が、限界に近づく。
呼吸が荒い。
だが――
止めない。
「まだ……まだです……!」
涙が滲む。
「終わらせるって……決めたんです……!!」
その叫びに応えるように。
リドウの拳が、さらに重くなる。
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戦いは、まだ終わらない。
だが――
確実に。
終わりへと、近づいていた。
(続く)




