第30話「亡魔の終焉・後編」
街は、壊れていた。
建物は崩れ、火の手はくすぶり、空気は重く濁っている。
その中心で――
戦いは、続いていた。
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「……はぁ……っ」
リドウの呼吸が荒い。
全身に傷。
血が流れ、地面に滴る。
だが――
倒れない。
「まだ……だろ……!」
拳を握る。
トリコワを睨む。
対する亡魔トリコワ。
歪んだ身体。
狂気の笑み。
「くっはっは!!」
「どうした!!もう終わりかァッ!!」
暴徒の残骸を踏み砕きながら、ゆっくりと歩み寄る。
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後方。
リリーニャは、限界だった。
「……はぁ……っ……」
呼吸が乱れる。
視界が霞む。
魔力も、底が見えている。
だが――
「……まだ、です……」
グロリーを握る手を、離さない。
「まだ……終わってません……!」
涙が滲む。
それでも、前を見る。
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「……いよいよ、ですね」
リリーニャが呟く。
トリコワが笑う。
「貴様は我らがアナグラム……“⋯田”さまと……“ロー⋯”さまの生贄になるのだ!!」
リドウが眉をひそめる。
「……ん?今、誰の名前を言った?」
一瞬の思考。
だが、すぐに切り捨てる。
「まぁいい」
構える。
「悪いなトリコワ」
一歩、踏み込む。
「お前は俺に、また敗れる運命だ」
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――再激突。
拳と打撃がぶつかる。
魔力と肉体がぶつかる。
衝撃が、空間を歪ませる。
「ぐっ……!」
リドウが押される。
トリコワの力が、わずかに上回る。
だが――
「リリーニャ!!」
「はい!!」
魔力が走る。
リリーニャの支援。
暴徒の供給が止まる。
魔律の流れが、乱れる。
トリコワの動きが、わずかに鈍る。
「今だ……!」
リドウの拳が刺さる。
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一時間。
時間だけが、過ぎる。
互いに限界。
呼吸は荒く、血が流れ続ける。
それでも――
どちらも、倒れない。
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その瞬間。
トリコワが、膝をついた。
「……ぐ……」
魔律切れ。
供給停止。
完全な隙。
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「終わりだ」
リドウが踏み込む。
拳を振り上げる。
だが――
トリコワが、笑った。
「遅い」
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空間が、閉じる。
――ギィン
球状の結界。
完全封鎖。
リドウを、内部に閉じ込める。
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内部。
雷。
魔力。
連続する衝撃。
「ぐああああああああッ!!」
全身が焼かれる。
筋肉が裂ける。
骨が軋む。
動けない。
逃げ場がない。
ただ、耐えるしかない。
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「リドウ!!」
リリーニャが叫ぶ。
駆け寄る。
結界に手を当てる。
「……解析……!!」
魔力を流し込む。
だが――
(複雑すぎる……!!)
構造が歪んでいる。
多重構造。
魔律が絡み合っている。
解けない。
解けない。
解けない。
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涙が、溢れる。
「お願い……!!」
震える声。
「……壊れて……!!」
拳で叩く。
何度も。
何度も。
だが――びくともしない。
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結界の中。
リドウが、血を吐く。
「……はぁ……っ……」
視界が揺れる。
意識が飛びそうになる。
だが――
「……ふざけんなよ」
歯を食いしばる。
「こんなとこで……終われるかよ……!」
拳を握る。
震える。
それでも――
離さない。
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その時。
トリコワの動きが、止まる。
「……ぐ……」
内側からの抵抗。
本来の意識。
トリコワとしての“何か”。
一瞬だけ――戻る。
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結界が、揺らぐ。
「……今!!」
リリーニャが叫ぶ。
グロリーに魔力を込める。
限界を超えて。
圧縮。
増幅。
一点集中。
「……壊れて……!!」
――ドンッ!!
衝撃。
結界に亀裂が走る。
さらに――
――ドンッ!!
砕ける。
完全崩壊。
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「……遅いぜ、ジジイ」
リドウが立つ。
全身、ボロボロ。
だが――
目は、死んでいない。
「待たせたな……」
魔力を纏う。
最大強化。
一瞬で距離を詰める。
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トリコワ。
葛藤。
崩壊。
その中心へ――
「終わりだ」
拳を振り抜く。
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――ドンッ!!!
直撃。
魔力が弾ける。
黒と赤が霧散する。
空間が、静まる。
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トリコワの身体が、崩れる。
倒れる。
その顔は――
どこか、安らいでいた。
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静寂。
風が、吹く。
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リドウも、その場に崩れる。
「……はぁ……」
呼吸が荒い。
だが、生きている。
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リリーニャが駆け寄る。
涙が止まらない。
「……お疲れ様です」
優しく言う。
震えながら。
それでも、笑う。
「次は私が……貴方を運びます」
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遠くから、足音。
ドミールだった。
その腕には――フィートス。
「……やれやれ」
軽く息を吐く。
「派手にやったねぇ」
リリーニャが振り返る。
「フィートスさん……!」
ドミールは頷く。
「命は繋いでる」
「後はこっちの仕事だ」
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壊れた街に、静寂が戻る。
だが。
これは終わりではない。
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次の戦いが、始まる。
(第三章へ続く)




