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理不尽を論破したら異世界のルールが壊れた件  作者: 万丈トオル


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20/30

第20話「体系」


拠点の朝は、静かだった。




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戦場とは違う。




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だが――




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「……ここも、戦いの一部だな」




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俺はそう呟いた。




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「いい視点だねぇ」




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ドミールが笑う。




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「前線だけが戦場じゃない」




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「準備も、同じくらい重要ってことさ」




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フウカが隣で頷く。




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「……うん」




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少しだけ、表情が引き締まっていた。




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「じゃあ、始めようか」




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ドミールが手を叩く。




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「まずは基礎から」




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空気が変わる。




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「魔法っていうのはね」




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「“魔律量”を使って、“現象”を作る技術だよ」




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「魔律量……」




フウカが小さく繰り返す。




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「魔力とは違うんですか?」




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「似てるけど、別物だねぇ」




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ドミールが指を立てる。




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「魔力は“エネルギー”」




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「魔律量は“制御単位”」




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「設計図みたいなものさ」




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沈黙。




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「……なるほどな」




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俺は小さく頷いた。




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「今まで俺がやってたのは」




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「魔力の操作じゃない」




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「“条件設定”の最適化だ」




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ドミールが笑う。




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「そういうこと」




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「君は最初から“構造”で魔法を見てる」




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「普通は逆なんだけどねぇ」




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(やっぱりか)




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今までの違和感が、繋がる。




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「魔法はイメージじゃない」




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「設計だ」




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言葉にすると、しっくりきた。




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「じゃあ次」




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ドミールの視線がフウカへ向く。




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「出してみて」




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「……うん」




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フウカが目を閉じる。




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魔力が揺れる。




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「っ……!」




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火が生まれる。




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だが――




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不安定。




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揺らぐ。




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「止めて」




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ドミールが即座に言う。




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火が消える。




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「今の、何がダメか分かる?」




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フウカは首を振る。




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「全部」




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ドミールはあっさり言った。




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「えぇ……」




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「いい?順番が違う」




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指を立てる。




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「①量を決める」




「②形を決める」




「③維持する」




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「今のは全部同時にやろうとした」




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フウカが真剣な顔で頷く。




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「……やり直します」




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一方。




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「よし、次」




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俺は構えた。




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フウカが向かいに立つ。




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「ジュードーだ」




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「う、うん……!」




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少し緊張している。




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「力はいらない」




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「流れを使え」




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踏み込む。




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軽く腕を取る。




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崩す。




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「わっ――!」




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フウカが転がる。




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「今のが基本だ」




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「……早い」




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「遅いと意味がない」




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手を差し出す。




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フウカがそれを掴む。




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「もう一回!」




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その目に、迷いはなかった。




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別の場所では。




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「剣は“振る”んじゃない」




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「“通す”んだ」




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解放軍の男が言う。




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フウカが剣を構える。




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ぎこちない。




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だが――




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「……やる」




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振る。




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空気を切る音。




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「いいじゃねぇか」




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少しずつ。




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確実に。




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変わっていく。




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夕方。




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全員が集まる。




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「……どう?」




ドミールが聞く。




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「理解は進んだ」




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俺は答える。




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「バラバラだったものが繋がった」




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「それは大収穫だねぇ」




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フウカも頷く。




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「難しいけど……」




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「できる気がする」




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その言葉に。




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ドミールは、少しだけ目を細めた。




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「いいね」




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「その感覚は大事だ」




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そのとき。




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俺は、ふと違和感を覚えた。




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(……妙だな)




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魔法の構造。




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魔律量の流れ。




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理解すればするほど――




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「不自然な部分がある」




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「ん?」




ドミールが反応する。




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「何がだい?」




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俺は少し考えてから言った。




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「効率が悪すぎる」




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「この世界の魔法」




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沈黙。




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ほんの一瞬。




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ドミールの表情が、わずかに止まった。




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だが――




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すぐに笑う。




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「……さあねぇ」




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「それを考えるのは、もう少し先でもいいんじゃない?」




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軽い口調。




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だが――




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(誤魔化したな)




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確信する。




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風が吹く。




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静かな拠点。




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だがその裏で――




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“何か”が歪んでいる。




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(面白くなってきたな)




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俺は小さく息を吐いた。




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成長と同時に。




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真実にも、近づいている。




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(続く)

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