第18話「衝突」
煙が見えた。
黒い煙。
空を汚すように立ち上っている。
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「……あそこだ」
フィートスが指をさす。
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荒野の先。
小さな集落。
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だが――
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「……酷いな」
リドウが低く呟く。
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建物は崩れ、
火が回り、
人影が走っている。
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「止めるぞ」
フィートスが言う。
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翼が広がる。
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「俺は上から制圧する!」
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一瞬で飛び上がる。
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「安心しな!すぐ片付ける!」
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空から急降下。
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槍が閃く。
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ドンッ!!
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地面が弾ける。
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暴れていた男が吹き飛ぶ。
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「な、なんだ!?」
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「味方じゃねぇのかよ!?」
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混乱。
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(統制がない)
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一目で分かる。
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「……やっぱりか」
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俺は前に出る。
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「リドウ」
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「ああ」
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それだけで通じる。
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突っ込む。
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ドンッ!!
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リドウの拳が一人を沈める。
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「雑だな」
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「動きがバラバラだ」
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そのまま二人、三人。
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圧倒的。
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リリーニャが後方に回る。
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「回復、行きます!」
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傷ついた住民へ駆け寄る。
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光が広がる。
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「大丈夫です、もう少しだけ……!」
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震えながらも、手は止まらない。
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フウカがその隣に立つ。
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「こっちに来て!」
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子どもを引き寄せる。
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「大丈夫、大丈夫だから!」
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声は小さい。
だが――
必死だった。
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ドミールは、少し離れた場所に立っていた。
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「……ふーん」
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戦場を眺める。
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「予想通り、ぐちゃぐちゃだねぇ」
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その目は冷静だった。
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クローは動く。
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一切の無駄なく。
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暴走している一人へ近づく。
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「……対象、確認」
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一撃。
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最小動作で、沈める。
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音すらほとんどない。
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(無駄がない)
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俺は一瞬だけ視線を向けた。
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「……そっちは任せる」
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クローは何も答えない。
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だが――
十分だった。
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そのとき。
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「クソがぁぁ!!」
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叫び声。
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一人の男が、魔法を放つ。
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炎が暴れる。
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無差別。
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「っ……!」
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住民に向かう。
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(間に合わない――)
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その瞬間。
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「遅い」
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俺は踏み込んだ。
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「対象:一点」
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「出力:最小」
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炎を“削る”。
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消滅。
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男が目を見開く。
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「なっ……!?」
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「成立条件が甘い」
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距離を詰める。
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そのまま――
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倒す。
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静寂。
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一瞬だけ。
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戦場の音が、止まった気がした。
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「……なんだ、あいつ」
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誰かが呟く。
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だが、関係ない。
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「フィートス!」
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俺は上を見る。
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空。
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フィートスが旋回している。
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「暴れてるのはこの辺りだけじゃない!」
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「まだ広がってる!」
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(……予想通りだ)
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俺は小さく息を吐いた。
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「一箇所じゃ終わらない」
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リドウが笑う。
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「面倒だな」
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「だが――」
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拳を握る。
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「潰しがいはある」
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リリーニャが立ち上がる。
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「次も行けます!」
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フウカも頷く。
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「私も……!」
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ドミールがくすりと笑う。
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「いい流れだねぇ」
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「でも――」
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少しだけ目を細める。
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「これは“序章”だよ」
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風が吹く。
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煙が流れる。
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戦場は、一つじゃない。
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そして――
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これはまだ、“始まり”に過ぎない。
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(続く)




