第17話「選別」
風が流れている。
荒野に、まだ戦いの気配が残っていた。
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「俺と組め」
フィートスが言う。
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俺はすぐには答えなかった。
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「……理由は?」
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フィートスが口の端を上げる。
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「アナグラムを止める」
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「それが俺たちの目的だ」
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短い。
だが、迷いはない。
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「……方法は?」
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さらに聞く。
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「力で押さえる」
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「暴れてる奴も、アナグラムも」
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「全部だ」
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そこまで聞いて――
俺は息を吐いた。
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「却下だ」
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「は?」
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フィートスの目が細くなる。
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「それだと終わらない」
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沈黙。
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「じゃあどうする」
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低い声。
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「止める方法があるなら言ってみろ」
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「選べ」
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短く答える。
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「全部じゃない」
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「止める対象だけ止めろ」
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「……選別か」
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「そうだ」
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「それ以外は巻き込むな」
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風が抜ける。
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数秒の沈黙。
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フィートスは目を閉じた。
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「……面倒なやり方だな」
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ゆっくりと目を開く。
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「だが、筋は通ってる」
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槍を肩に担ぐ。
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「いいぜ」
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「そのやり方、乗る」
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空気がわずかに緩む。
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「……助かります」
リリーニャが小さく呟く。
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フウカも、ほっとしたように息を吐いた。
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「よかった……」
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リドウが鼻で笑う。
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「随分と回りくどいな」
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「無駄は嫌いだが」
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「今回は悪くねぇ」
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その様子を、ドミールが静かに見ていた。
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「ふふ……」
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小さく笑う。
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「“壊す”だけじゃなくて、“選ぶ”か」
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「面白いねぇ」
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その目は、どこか試すようだった。
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少し離れた位置で――
クローは一言も発さない。
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ただ、全てを観察している。
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(……記録してるな)
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一瞬で分かる。
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そのとき。
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空から影が落ちる。
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「リーダー!」
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フィートスの仲間が降りてくる。
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「西側で衝突が起きてる!」
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フィートスが振り向く。
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「規模は?」
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「広がってる!」
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短い報告。
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だが、十分だった。
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フィートスがこちらを見る。
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「行くぞ」
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即断。
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俺は頷く。
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「案内しろ」
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リドウが肩を鳴らす。
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「やっと動けるな」
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リリーニャが一歩前に出る。
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「私も行きます」
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その目に迷いはない。
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フウカも続いた。
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「私も……!」
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小さな声だが、確かだった。
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ドミールが軽く手を振る。
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「案内は任せて」
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クローは静かに歩き出す。
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言葉はない。
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だが、その動きに無駄はなかった。
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風が強くなる。
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戦場は、もう始まっている。
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(続く)




