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ゆめ

 



 最近、自分のことがよくわからなくなってきた。感情の波が激しく動きすぎて混乱してしまう。


 基本的に柊くんは、私のことを肯定してくれる。私の誘いも最初はいやそうでも、結局は受け止めてくれる。声を掛けて一緒に登校したり、一緒に勉強したり…大体彼と一緒にいる。


 だから、テスト勉強しようと誘おうとして断られたとき、何かあったのかと思った。

 いや、もしかしたら何か用事があるのかもしれないし、別にそんなに気にすることじゃない。

 でも、その日の彼は少し変わっていた。話しかけても反応が薄かったり、私に目を合わせてくれなかったり…それはいつものことなんだけど、それなのにその日から彼に話しかけるのが怖くなってきて話しかけなくなってしまった。


 完全に気力を失くした私は、何もかもに手が付かなくなっていた。このままだと精神が壊れると思った私は、やっぱり話しかけようと思った。

 そう思った矢先、彼はちょっとの間学校を休んだ。


 久しぶりに登校してきた彼は、体調が悪そうだった。テストが始まったから無理やり来たのかな、と心配して声を掛けようとした。掛けようとしたとき、見えた彼の顔を見て止めた。

 テストが終わってようやく話しかけようと思ったら、声を掛ける暇がないほど足早に去って行ってしまった。


 なんで、私を避けるのかがわからなかった。いや、避けているわけではないかもしれない。実際、体調が悪そうなことが何よりの説明だ。何もおかしくはない。

 でも、避けられている気がしてしょうがなかった。見限られた?私のことを嫌いになった?

 もしそうだったら、そんなことがあったなら私はどうすればいいんだろう。

 次は、次は…今度会ったときには多少強引でもいいから、時間が欲しい。


 で、その次と言うのが補修になってしまった。完全に不本意だがいい方向には進んだ。本当に、なんでこんなことになったのかはわからないが…いや、数日間の私を客観的に見たらこうなって当たり前か。テスト中に限っては眠すぎて寝てたし。


 案の定、彼を誘って断られた。いや、断られそうになったところで押し切った。

 一応、取り返しのつかないことにはなっていないようだったが、それでも離れていくようで安定しない。




 なんてこと比にならないくらい不安定になっていた。

 目の前には、「私にも分けてよ」と提案したことで彼が口を付けたフォークが置いてあった。そして、それは既に皿の上に置かれたため、手遅れである。


(間接キス?あー、間接キスね…え)


 そして、その前にもあーんして食べさせるなんていう恥ずかしすぎることをしていた。する時は、恥ずかしがってるの可愛いな~、なんてことを考えていたのだが、今更になって何をしているのだろうか。


 向かいの席のテーブルには、意地悪しすぎた報復に命令されて半ば無理やり食べさせられた残骸。私が中途半端に口を付けたスプーンが…あれはどう処理すればいいのだろう。

 あれから動悸が収まらない。いつも大人しい彼が、強引に命令をして…それだけで体がゾクゾクしてくる。息が苦しくなってきて、頭も熱い。彼の前で無意識にはあはあ言ってないか心配だ。

 そして、目の前に置かれたフォークから目が離せなくなった。


 手を伸ばし、見つめる。ただ見つめ…意を決する前にはもう口に入っていた。

 頭がぐしょぐしょになって、体が…


(あ…)


 戻ってきた彼と目が合った。別におかしいことはしていない。頼んだものを食べているだけ。なのになんだか、いけないことをしている気がして、固まった。


 目の前に座る彼は、もう落ち着いているようだった。さっきの雰囲気とはまるで違っていた。なんだかまた、私と距離を取ろうとしていたときみたいな。


 ちょっとで済まされる域ではない程気まずい空気が流れている中、私と彼が目を合わせない理由はそれぞれ違うようだった。

 彼は、恥じらう様子も気まずそうな様子もなく、落ち込んでいるような…そんな彼を見て私は、さっきのやり取りのことを気にしていたのと同時に、今日なんで強引にでも時間を作ったのかを思い出した。


 私から離れていきそうで怖い。でもなんで?さっきみたいに断られそうになる度、心がえぐられていく。痛い、痛いのは嫌いだ。


「ごめん、私迷惑だよね」


 あんなにふわふわした気持ちだったのに、自分でも整理が追い付かない。そんな、魂から出た言葉。

 彼は私を驚いたように見た。驚いたのは一瞬で、また視線が合わない。


「いっつも我儘で、迷惑ばかりで、最近私のこと避けてるのも嫌いになったからで…調子に乗って、さっきも変なこと言ったせいで気まずくなっちゃって…必要ないよね、私から話しかけるのやめた方が―――」


 あれ?こんな重いこという雰囲気でもそんな雰囲気にするつもりもなかったのに、言葉溢れてくる。

 こんなこと言ったってどうにもならない。

 それに気づかなかった。私の口から出た言葉、少し気になったことがあっただけで一瞬で飽和して、今までいた私が嘘みたいに。いや、私が私に嘘をついていただけかもしれないけど…止まらない。


 さっきまで幸せだったはずなのに、狂って、狂って…見失いそう。

 伝えたら楽になるのかな?私の全てを理解してくれたらとっても幸せな気持ちになれるよ。


 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き

 好き




「ごめんね」




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