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延長戦

 



 気付けばもうテストは終わっていた。なんだかあっという間に時間が過ぎてしまった。

 そんなことを感じながら、特に興味のない教師の話を聞かされながら眠気と闘っている。

 そして、実はとても重大なミスをしてしまっていた。


 テストが終わり、学校は数日間休日を設けられた。

 しかしだ。学生の本文は勉強である。家でただ暇を持て余し時間を浪費するなど愚行。

 そのため、勤勉な生徒は学校でこのように授業を受けている。


「二人とも勉強が出来ないって訳でもないだろ?赤点取ってこんなことに時間費やすなよ」


(どうして、こう、なった)




 時は遡ること五日前ぐらい。熱を出した。

 遡っても、頭痛くて勉強が出来なかったことと、無理やり登校して受けたテストも頭が回らずに撃沈したことという後に残った事実となんとなくのことしか思い出せない。


 無事に赤点を取り、こうして今に至る訳だが、もう一つ重大だと言えることがあった。


「雨間、お前に限っては流石に何もないなんてことないよな。体調悪いなら無理するな」

「いえ、お気遣いありがとうございます」


 隣の優等生は休日にも関わらず、学校に。

 そして、今回のテストはそこまで難しくなかったのか、赤点は合わせて二人らしい。


 遡らずとも、彼女は現在進行形で元気がない。そういえば、テストを受けに学校に来たときからそんな様子だった気がする。良くは覚えていないが、テスト開始後早々に存在感が消えたように錯覚した気がする。

 なんというか、今も眠そうにしている。もしかしたら寝不足なのかもしれない。

 どう考えても、何もないなんてことはありえない。彼女に限って。


 やがて補修も終わり、先生が教室を出て二人取り残された。

 彼女の様子が気になり、思わず声を掛けそうになったが、声を掛けたところで自分に出来ることなど何一つない。それに、彼女に声を掛けられることはあっても彼女に声を掛ける資格は自分にない、そう自分が言っている。

 そういえば、勉強を看てくれたくれたのに感謝の言葉一つ言えていない。まあ、疲れているみたいだし今はいいや、となんとなく逃げた。


 それにしても、テストが終わってからは何故だか調子が良い。

 テストが終わった後、治りきってない体を休ませるためにもたくさん寝た。そうしたら不思議と何もかもが吹っ切れて、体が軽くなってきている気がする。今までに悩んでいたことだって、別に深く考える必要はないのかもしれない。捨てるなら拾えばいい、消えることはない。そこまでの影響力は自分自身に備わっていないだろう。

 好きなように生きていくことが結局一番いいのかもしれない。


「ねえ」

「…何?」


 こんな風に話しかけられるのは、少し久しぶりな気がする。勉強会を断ってから、話しかけてこなくなった。体調を崩して学校に来れなくなったこともあってかなおさら。


「テスト、今度こそ終わったね」

「そうだね」


 話がなかなか進まない。区切れ区切れで会話が止まる。


「それじゃ―――」

「せ、折角だしどこか寄らない?」


 彼女は帰ろうとする僕にそう言った。どこか…時間的には夕飯?

 特に断る理由はなかった。


「…今日はちょっ―――」


 断る理由はない。しかし、反射的に断りの言葉が口から出る。しかし、それは彼女に吞み込まれた。


「どうしても…って言ったら?」


 あれ?と一瞬目を疑った。

 目の前にいる少女は紛れもなく雨間夢だ。しかし、そこに立って自分に話しかけている少女を僕はまだ知らない。


 その疲れ切っている様子の目は、線のように細いながらもその瞳ははっきりと存在することがわかる。静かに微笑むその口元は、惑わすような妖艶な雰囲気を放っていた。

 そんな彼女の表情からは、諦めと寂しさを。それなのに、彼女の内心にはしっかりと中身が満たされているような。

 感情において、全てが矛盾に始まりやがては一点に収束した。狂っていてもそれを不思議だと思わない謎の説得力がある。


 この提案を断ることは、どう足搔いたとしても強制させられる。

 雨間夢という存在に魅了された僕に逆らう術はない。


「…わかった」

「え?いいの?」

「…うん」

「ホントの本当に?」


 彼女ははしゃぐ子供のように何度も聞いてくる。

 彼女はいつもの様子に戻り、いつの間にか元気のない彼女はいなくなった。眠そうだった目はキラキラと輝いて、少ししつこい。


 刹那、姿を現した彼女に闇を感じた。彼女の中に、肚の底が露呈して出てきたような。

 しかし、それを闇というには美しすぎる。


「お腹空いたから何か食べない?」


 と彼女に聞かれた。聞こえたのにも関わらず、何故だか返事をする気にはなれなかった。

 最低だとは思うが、気分的に。


 はあ、と大きなため息が自然に出た。


「あ、ごめん。迷惑だったよね」


 違う。迷惑じゃない。結局、今の今までで自分が何をしたかったのだろうと、何が出来たのかと。そう思うと不思議とため息が出てしまっただけだ。

 隣に立つには、彼女の存在があまりにも眩しすぎる。それなら確かに迷惑なのかも?


「いや、元気だなあと」

「そんなことないよ」

「は?」


 自分から避けておいて、近寄られたら拒めない。

 迷惑か、なんて言わせてしまった。いつまで人に迷惑を掛ければいいんだろうか…もう、終わりにしようかな。




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