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オネェのユニコーン②

「ところでカナデちゃんはどうしてこんな所に来たの?」


 お姉さんが頬と頬を擦り合わせるのを止めると急に真面目になった。

 そういえばどうして--


「あっ、エルフの小さい女の子見ませんでしたか!?」


 そうだ、馬を追ったリーフを探していたんだ!

 ……お姉さんも馬だよね?


「エルフの子は見てないわねぇ……」


 お姉さんは腕を組んで少し唸った。

 その低い唸り声が男性なんだと認識させる。


「そうだわ、じゃあ『神秘の泉』に行きましょう!」


 うわ、RPGとかでよく出てきそうな名前!

 覗いたら武器とか妖精とか、強いアイテムとか出てきそうだな!


「その泉ってどこにあるの?」


 謎解きとかさせられるのかな……

 クリアしたら何処から音聞こえそう。


「あら、行ったことないのね? じゃあお姉さんが連れて行ってあげる!」


 そう言うとお姉さんの角が光り、人間から白馬の姿に変身した。


「これがお姉さんの本来の姿よ? 綺麗でしょ!」


 綺麗。 いや、綺麗は綺麗だけどさ--


「乗ってカナデちゃん!」


 ちょっと喋らないで欲しいなぁ!

 角生えた白馬が人間の言葉話してるってかなり怖いんだよね!


「あらゴメンなさいね……」


 いけない、彼女は心を読めるんだった……

 む、無心に……


「うふふ、大丈夫よ」


 馬の姿なのに彼女が笑顔でいるのが分かる。

 お姉さんの背中に跨り、手を置く。


「たてがみに掴まってもいいのよ?」


 --怖いなと思ったのバレたか。

 私はお姉さんの白いたてがみを掴み、彼女が歩き始めても落とされないようにした。


「ゆっくり歩くけれど、怖かったら言いなさい?」


 お姉さんの蹄が落ち葉を踏み、静かな森の中に乾いた音がする。

 一定のスピードで歩くので、まるでリズムを取っているかのようだった。


「はい。 よろしくお願いします!」


 --人生初の乗馬がユニコーンか。




「ここよカナデちゃん、足元に気をつけてね」


 神秘の泉は森のかなり深い場所にポツンと、思っていたより小さなものだった。


「綺麗……」


 まだ昼前だというのに泉の周りには蛍のようなものが光って飛んでいる。

 そして辺りの花々も蛍の光に応えるかのように、ほのかに光を放っている。


「でしょう? お姉さんのお気に入りの場所なの」


 お姉さんの方を向くとユニコーンの姿から人間の姿に変身していた。


「さ、泉に顔を近づけてみて?」


 お姉さんに右手を引かれ、泉に近づく。

 --手は大きくて長く、明らかに男性の手だった。


「……うわっ!」


 泉の中を覗いてみると、何故か私の顔ではなくお姉さんの顔が映った。


「そこには自分の頭で思い浮かべている人が映るの。 誰だった?」


 --お姉さんです。 はい。

 まったくもう、自由に心を読みやがれ!


「うふふ、嬉しい……!」


 横に並んだお姉さんは手を後ろで繋ぎ、満面の笑みで満更でもない様子だった。


「じゃあ、同じ容量でそのエルフの子のことを考えてみて?」


 同じ容量も何も、無意識だったんだけど……

 まぁ、とりあえずリーフの事を考えて--


「……出てきた!」


 リーフの姿が鮮明に泉に映る。

 しかも着てきた恰好もそのままに。


「もう少し、彼女がどこにいるか知りたいという気持ちを強く……」


 --リーフに会いたい。

 いや、会わなくちゃ。 彼女をエルフの森に送り返さないと!


「…………」


 お姉さんは黙ったまま、横で私を見つめていた、


「も、森の中で…… 白い馬と一緒に……いる?」


 リーフと白く輝く馬が一頭。

 そんな景色が泉に映ったけれど、その馬はお姉さんのようなユニコーンの物とは違う雰囲気を醸し出していた。


「もしかしたらそのエルフの子、まずい人に会っちゃったかもしれないわね」


 お姉さんは神妙な顔をした。

 --まずいって、味? それとも会ったら『ヤバい』とかの方?


「後者よ。 当たり前じゃない、面白いわねカナデちゃん」


 --ですよね。


「だとしたら森のあの辺ね……」


 お姉さんは顎に右手を着け、リーフがどこにいるのかを考えているようだ。


「よし、お姉さんが連れていくわ。 乗って!」


 お姉さんはここに来た時の様にユニコーンに変身し、私に背中に乗るように促した。


「お願いします!」


 --リーフが心配だ。

 その思いを読んだのか、お姉さんの足取りは泉に来る前よりも早かった。

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