オネェのユニコーン①
「リーフ! どこに行っちゃったの!?」
私は喧嘩していた慎平と紅さん、嫉妬モードだった涼佳さんを放置して馬を追って行ったリーフを探していた。
--馬だったはず。
「リーフ?」
いくら呼びかけても返事は無い。
馬はエルフなんて食べないだろうし……
それにここどこ?
いや、森だけどさ。 森のどこよ?
「ねぇ、返事してってば!」
だんだんと辺りが暗くなって来て、今まで足を踏み入れたことがない所まで来てしまったことが分かる。
--あたしゃあここで死ぬのか?
「甲高い声ねぇ…」
何処から声がした。
あ、別に頭の中に声がする訳じゃないです。
「ど、どなたですか……?」
異種族の領地に入ってしまった可能性があるので、気を立てないような声で尋ねた。
「人に名前を聞く時は、まず自分から名乗らないとでしょ?」
声は男の人なんだけど……
こ、こういうのって言っていいのかな……?
「カ、カナデです。 貴方は?」
辺りを見回しても、上を向いても誰かがいる気配はない。
「うふふ、やれば出来るじゃない!」
真後ろに人が降りてきたんだろう、落ち葉を踏んだ音がした。
--いや、人が落ちてきたようにも聞こえなくはない。
「アタシはニンフィよ、よろしくね?」
振り向くと頭頂部が青く、そこから黄緑色に変化していくグラデーションのフワフワした髪の--
「よ、よろしくお願いします……」
痩せ型でタレぎみの青い目をした、綺麗な顔立ちをした青年が立っていた。
いや、その他に気になる箇所が一つ。
「鬼…… ですか?」
おでこに一本、慎平の物より細くて長い、白い角を生やしている。
「嫌ねぇ、あんな野蛮な種族とは違うわよ!」
--口調も気になるなぁ。
しかも「嫌ねぇ」の時の手よ!
左手を口に当てて右手を縦に、手招きするように振って! 近所のおばさんかよ!
「すみません……」
これはもうあれだ。 実物は見たことなかったけれど--
「アタシはユニコーンよ。 聞いた事あるでしょう?」
この人オネェだ--!
「はい、角が生えている馬…… ですよね?」
そう言うとニンフィさんは嬉々として手を口元で叩き始めた。
「正解よカナデちゃん!」
なんだろう、初めて会うタイプの人なのに警戒心とかは全くない。
むしろこの……だ、女性?ともう少し話してみたいと思う自分がいる。
「カナデちゃんは人間よね? こんな所まで歩いてくるなんて大変だったでしょう?」
なんて表現すればいいんだ……!?
そもそも男性? それとも女性?
「いえ、森は歩き慣れているので」
--この人は何属性なんだ?
兄?姉? ……え、性別はどっちが正解?
「そうなの!? アタシ、アクティブな子は大好きよ!」
男って言ったら怒られそうだし……
でも女って言ったら生物学上は男だって……
「あ、アタシの事はニンフィお姉さんって呼んでね?」
--あ、女でいいんだ。
よかった…… 地雷踏む前でよかった!
「はい、ニンフィお姉さん」
--「ニンフィ」か「お姉さん」のどっちかをカットしたい。
「うーん、やっぱりお姉さんにして? 名前長いわよね」
流石お姉さん。 女心が分かってる。
「うふふ、でしょ?」
--!?
え、声に出てた!?
「心が読めるのよ」
じゃあ私の性別で悩んでた事も全部知られて--!
「ええ。 すっごく可愛かったわ!」
性別については早く言って欲しかったよ……
あっ、これもバレちゃうじゃん!
「ゴメンなさいね? でも悩んでくれたってことは、アタシに気を使ってくれたってことでしょう?」
お姉さんは首を右に小さく曲げ、とてもあざとい姿勢になった。
「やっぱりそういう問題ってデリケートじゃないですか」
--性別がどうのこうので人の善し悪しが決まる訳じゃないし。
そもそも私は相手がどんな性癖を持っていても偏見とか無いし。
「うふふ、優しいのね?」
また口元に左手を当てて笑った。
多分彼女の癖なのだろう。
「だって大事なのは性別よりも中身じゃないですか。 半分だからとか、そういうので人を判断しちゃいけないと思うんです」
--半分じゃない女でもクズはいるし。
別にアイルお嬢様だなんて言ってませんよ?
「素敵……!」
お姉さんは両手を口元に当て、目を輝かせた。
私、何か変な事言いました?
あ、言ったか。 いや、でもアイルお嬢様がクズなのは本当だし--
「素敵よカナデちゃん!」
お姉さんは突然私に抱きつき、私の肩に頭を乗せた。
甘い、いい香りがする--
「こんな考えを持っている人間がいたなんて! お姉さん感動しちゃう!」
お姉さんの声が上ずっている。
あと締め付ける力が強くて苦しいです……
「お姉さん、カナデちゃんの事気に入っちゃった!」
お姉さんは私の肩から顔を離すと、今度は私の頬と彼女の頬を擦り合わせ始めた。
--お姉さん、スキンシップが凄くないかい?




