第13話 妹属性
全体的に白い部屋。
真っ白なカーテンに周りを覆われていて、右に顔を向けると柑子色の棚に薄型テレビが置かれていた。
ここは、病院だ。
ベッドから降りると、冷たい床だった。スリッパを探すが何処にも無い。
取り敢えず、カーテンを動かすとシャッ、シャッと音が鳴った。
行き成り、照明が灯る。
2ヶ所だけ、カーテンに覆われていた。
右へ顔を向けると布団が少し、捲れているのが見えるだけ。
普通の病院は男女で部屋を分けているがマンガやライトノベル的、展開だと相部屋。
そこからのラッキースケベ。
考え過ぎか。
『直久海晴さん。部屋から退出してください』
頭の中に直接、声が流れてくるような感覚。
(音響兵器のLRADか?)
警察が暴動鎮圧に使用する。見た目は大きな音響設備みたいなものだ。
上を見ながら、扉を目指す。
入り口。前の天井に、指向性音響設備らしきものがあった。
『病室から退出後、右に進んでください』
頭に語りかけられた。
正確には違う。
扉の取っ手を右手で掴み。右にスライドし、病室を出る。
右に顔を向けると、数100メートル先に広間。
なぜ病院にいるのかなど気にせず、広間へ向かって走り始めた。
部屋の中は、薄暗かった。
右側に刀剣、防具類。左側にはデスクトップPCが置かれてある。
一般人が抱く。誤った、諜報機関さながらの光景だった。
目の前になぜか、開絵さんもいた。
1人の男が近づいてくる。
革靴を履いているせいで、独特の足音を出す。
「柿谷俊田だ。質問は歩きながらで」
「あの!」
柿谷俊田と名乗った男は、開絵さんの声を無視。
柿谷は来た道を戻り始めた。
2人で追いかける。
数10メートル先の扉には、取っ手が無かった。柿谷が扉の前に近づくと自動で左にスライドした。
明るい通路に2人で入る。
「どうして。わたしたちは、こんなところにいるんですか?」
壁は白色のみ。換気口すら白塗りだった。
歩きながらの話が始まる。
「数日は隔離する必要が、あるからだ」
「隔離? 感染症か何かですか」
「開絵弓菜さんだね、開絵さんと呼ばせて貰うが、問題無いか?」
ゆっくりと頷く。
「魔力の影響を一般市民に与えない為だ。君たち2人は、一般人に恐怖を与える魔力状態にある」
(魔人みたいだな)
「魔力、ふざけてるんですか」
開絵は少し怒り気味に、声を発した。
「魔力は、人の意思や感情に強く反応する。また魔法の発動には心のコントロールも重要だ」
「そんな、ことは! そんなマンガみたいな」
魔力が、不安定になったと思ったら。
直ぐに魔力が安定した。
「エルフの女性が、関係していないか」
「その通り。直久海晴くん、最近のライトノベルの影響でエルフと言えばエルフ耳だろって感じに」
トラックのことも頭に浮かんだら、マスタークラスだな。
「取り乱してすまない。本題は、異世界組のやつが君たち4人に魔法を使用できるようにした」
(異世界組? 何だそれ)
俺たちは同時に足を止めた。
気づかずに歩き続け、距離を離されていく。
「待てよ、4人だと。他の2人は誰だ」
「友達の勾乃川一と心山琴咲」
オタクが現実に力を手に入れたことに対し、頭を抱えたら。隣で同じように開絵も頭を抱えていた。
顔を左右に振って、気持ちを入れ替える。
「もし、魔法が使えたどうする?」
いつか来ると思っていた質問。
「魔法が使える、簡単に言いますけど。そんなことは、ありえません」
意外にも、開絵さんが俺の言いたかったことを先に話された。
次の部屋に入るまで、柿谷は一言も話さなかった。
広い部屋の中には、ステンレス製らしき棚に銀鼠。そのアタッシェケースが4個、置かれていた。
体ごと振り返った、柿谷は口を開く。
「魔法と言えば、アニメや映画。ライトノベル、漫画に出てくるような。
派手で、体系化されたものを思い浮かべると思う」
「魔法は、目に見えるものでは無かった。だろ」
「その通りだ、直久くん。共感魔術と言われるものがある。
例えば、1度でも接触したことのある人物となんらかの相互作用があり。
力が強ければ、その人物の居場所すら把握できる」
棚の方へ向き直り、アタッシェケースの止め具を外し開いた。
「何かが、起こりそうや危険の察知。日本人はこの力を保持している者が多い。
だが、ほとんどの人物が眠らせている状態だな」
「本当ですか」
バランスのいい体から発せられる。美しい声だけで、悩殺されそうだ。
「日本独特の価値観が霊能力の高い者を生み。妖魔を生み出し、更に認識できた」
「日本なら陰陽道と修験道が有名」
「陰陽道? 陰陽師のこと、直久さん」
「そう」
右手人差し指と中指をくっ付け、それ以外の指は曲げ、前に出す。
印契の刀印
「あれだ!」
これも、知っていましたか。
「それは、印契だな。受け取れ」
「えっ?」
驚くしかなかった。
差し出されたそれは、文庫のライトノベルだったから……。
「ライトノベル?」
柿谷は開絵の言葉を無視し、俺にライトノベルを差し出し続ける。
「『ラノベ・マンガ・ラノベ』の1巻、えーと。普通のライトノベルだよな」
表紙にヒロインの宮名留深。
制服姿で右手に、ライトノベルを持っているだけのイラスト。
9巻まで出版されているが、主人公は1度も表紙のイラストに書かれたことが無い。
――表紙に、ヒロインを書いとけばイラスト買いして貰える。
川一の言葉が頭に浮かんだ。
ライトノベルを受け取ると体が、懐かしい感覚に包まれた。
このライトノベル、魔力を保有している。しかも高純度の魔力。
「文庫から温かみを感じます」
意識を集中させる。
空色の魔力が規則正しく、文庫を覆っていた。
柿谷は同じように、開絵にもライトノベルを渡す。
「説明は、彼女が行う」
柿谷の左側に制服が、投射されていく。
ホログラムに先ず、驚くが現れた人物に対しても驚いた。
現れたのは、宮名留深。
黒髪を揺らしながら、口を開く。
『お兄ちゃん。元気にしてた?』
「あぁ、留深はどうだ」
柿谷の言葉でのけ反りそうになる。
『元気、だけど……。お兄ちゃんが居ないと、寂しいかな』
今現在に技術では、不可能だろ。
ホログラムに人工知能、行っていることが数十年先の未来。
「悪かった。頭を撫でてあげるから、こっちにきてくれ」
『いつもは、撫で撫でってゆうのに』
ホログラムの表情が変わる。
『他人行儀だよ。お兄ちゃん』
ここまで、人工知能に感情を与えることができているのか。
背中に両手を回し、頭を下げ前に出す。
撫でられた後に少しだけ、はにかむ。
『特殊な性癖はおいといて。これは、人工知能ですね』
開絵さんの話に答えられる程度の知識は持っている。
「アーティフィシャル・インテリジェンス。頭文字を取ってAI」
『直久くん。今月は4503円も、ライトノベルに使ったんだぁ』
「どこから、手に入れた」
『秘密。行き成りだけど、今から魔法と魔力について説明します』
無視かよ!
『魔力は、魔体と呼ばれるものの中にある。魔力核を周回する魔素で、構成されているよ』
粒子みたいなものか。
『魔力は変換することで、魔法への具現化。固体化、気体化、粒子化して――』
彼女から、数時間ほど説明を受けた。




