表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/38

30 リユーとの初めての喧嘩(ベル視点)



「…………おい、今日は泊めてやるけれど明日は帰れよ。

そんなうじうじ湿っぽい奴が部屋に居たらキノコが生えてしまう」


「うぅ……クリストファーさん……」


「そんなガタイで甘えた声出すな」


クリストファーさんのところに逃げ込んだ俺に容赦なく言い放つ部屋の主。

ソファでクッションを抱いて丸くなって座っている俺の頭の上にバスケットをゴンと乗せる。


「ほら、夕食食ってないだろ?食べろよ」


「……ごめんなさい……ありがとう」


なんだかんだと面倒見のいい兄のような存在の師匠でもあるクリストファーさんに甘え夕食を受け取る。


バスケットに入ったサンドイッチにかじりつく俺をクリストファーさんは執事服から楽なシャツとズボンに着替え、ワインを飲みながら見ていた。


「なにか聞いて欲しい話があるんだろう?

何も言えないが聞くことはできる」


クリストファーさんはアイラおば様の実の弟だ。

アイラおば様は公爵家の養女となったので、近くにいるために侍従になったそうだ。


クリストファーさんは教えてくれなかったが双子のクリスティーナさんが教えてくれた。


クリスティーナさんはアイラおば様の侍女だ。

そんな二人に囲まれているからか、クリストファーさんの言い方は冷たくとも、とても優しい。

そして面倒見がとてもいい。


俺はクリストファーさんの優しさに甘え、のろのろと口を開いた。


「昨日リユーに……『顔を見たくない』と拒絶……された」


「ほう……。思い当たる節はあるのか?」


「……無い」


そう、全く思い当たる節が無い。

リユーの事は大事に大事にしてきたつもりだった。

……昨日だって……。


グロリアでの任務に赴く時もリユーを行かせたくない気持ちはあった。

けれどリユーの意志を尊重して俺はできるかぎりサポートに回った。


リユーがやりたい事をリユーがやりやすいように。

その考えは子供の頃から変わっていない。


そうすることでリユーはいつも言ってくれるからだ。

『ありがとう。ベル』と。


とてもかわいい笑顔で。



けれどいきなり『顔を見たくない』と跳ねのけられる手……。

ここまで拒絶されたことはもちろん今まで一度も無かった。

俺は今、悲しい気持ちと困惑で頭の中は混乱している。


「昨日、リユー嬢はアリアお嬢様と街に出かけていたんだよな?」

クリストファーさんの疑問に俺は頷くだけで返す。


「その時に何かあったとしか考えられんな。

アリアお嬢様に聞いたらどうだ?」


俺はその言葉に首を横に振って否定する。


「なんなんだよ。面倒くさいな。

アリアお嬢様ならリユー嬢からも話聞いているだろうし分かるだろ」


「だって……アリアがここに乗り込んでこないってことは……。

リユーは自分で何とかしようとしているってことだと思う……。

だから俺も自分でリユーに聞かないと……」


うじうじとかじっていたサンドイッチをいじりながら答える。


「まぁそう言いながら、ここに逃げ込んで来ているけどな」


「うっ……」


痛いところを突かれた。

クリストファーさんに鼻で笑われてしまう。

だって……。

昨日の今日でさすがにリユーにまた拒絶されたら……俺は立ち直れない……。


そんな俺の心の声を察したのかクリストファーさんがお茶を淹れてくれる。


「まぁ今日は許してやるけど、明日は帰れよ」


結局優しいクリストファーさんに甘えてお茶を受け取り口に運ぶ。

お茶は優しい落ち着く香りがしていた。


ほっと少し落ち着いた俺に突然クリストファーさんが肩を叩く。


「おい。ベル。外」


指でクイっとクリストファーさんが指し示す方を見ればリユーにつけていた鴉が木に止まって俺を見ていた。

未練がましいと思いながらもリユーのそばを離れることが未だ怖くて、リユーに鴉をつけていた。


グロリアで俺の見えないところで危険な目にあっているのではと思った恐怖が未だぬぐえないでいる。


鴉までリユーに拒否されたのかもしれないと悲観的になり、さらに落ちこむ俺の頭をパシッと叩きクリストファーさんが言う。


「おい。ちゃんと見ろ。

俺がどれだけお前に指導したと思っている。

またひなに戻りたいのか?

伝令だ」


言われたまま鴉を見ると伝令の合図で、筒がついている足をタンタンと鳴らしていた。


俺は転がるように窓に近づき窓を開ける。

鴉が俺の腕に止まり、足を差し出す。

震える手で筒を開け、手紙を取り出す。


クリストファーさんは俺の代わりにカラスに餌をやり、窓から放してくれていた。

鴉は再びリユーの元に戻るだろう。

手紙を震える手で開け目を通す。


「おい……。大丈夫か?」


心配そうに硬直したままの俺にクリストファーさんが肩に手を置いて声をかける。


「リユーが!

リユーが!! 明日の夜、俺の部屋に来るって!!」


興奮のあまりつかみかかりそうになる俺をなだめながら、クリストファーさんは優しく微笑んでくれた。


「よかったな」


そう言って俺の頭をガシガシと撫でてくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ