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22 裏オークションへ潜入



馬車を降ろされて目隠しを外される。


一度、ベルと招待状の住所を確認しに来た場所と同じで心底安心した。

近くの木にベルの鴉が留まっているのを目にして、思わず頬が緩みそうになる。

急いで下を向いて誤魔化した。


「さぁ、ショーの時間だ」


私を連れてきた男がエスコートするように手を差し出すのを無視して歩き出す。


見た目の軽い感じにそぐわぬ気遣いをしてくれた。

そして時折、この男の所作が綺麗な時がある。

私が無視した手を苦笑しながら引っ込める。

手に私を縛っている縄を見せびらかすように私に見せる。


「まぁこっちでエスコートさせてもらうわ」


私は返答せずおとなしく着いていく。



「とりあえず、お前を引き渡すまでが俺の仕事だからここでさよならだ。

まぁ変な客に買われないことを祈っとくわ」


屋敷に入り、部屋に通された段階で別の男に縄が渡る。

手をひらひらさせながら、私を連れてきた男が出て行った。


部屋に入ると先ほどまで一緒に馬車に乗っていたであろう人たちが、動物を入れるような檻に入っている。

私も空いていた檻の一つに押し込まれる。


「時間までおとなしくしとけ」


男に背中を押され檻に入る。


2人の男が見張りだろうか部屋の中に立っている。

他の商品と思われる人たちもただ座って黙っている。

子供たちはびくびくと身を寄せながら静かに泣いている子を慰めているようだった。


会場は漆黒のカラスが制圧する予定だ。

私は合図があり次第、その時にいる場を制圧する予定だ。


ベルの手紙ではいったん私が出品されて、部屋に戻された後に合図が出ると知らされていた。

その時間をおとなしく待っていた。


最初、子供たちが檻ごと大男たちにまとめて運ばれていった。

人身売買の時間が始まったようだ。

子供たちが声を出して泣き始める。


「いやだーーーー」

「こわいよーーーーー」

「だしてーーーーー」


その声にグッとこぶしを握り耐えた。

今すぐ助け出したいが、それでは作戦が崩れる。


「必ず助けるから……」


私の小さなつぶやきは大きな音をたてて閉まる扉の音にかき消された。


全員が運び出され、おそらく落札と同時に別の部屋に運ばれているのが音と気配で分かった。

そしてついに私の番がくる。





大男たち4人がかりで運ばれる檻の中心におとなしく座る。

会場とされる、おそらくステージだろう場所にガタンと降ろされた。

灯りが落とされ暗い会場に人がザワザワしているのが分かる。


檻の近くで男に「立て」と小声で言われたのでおとなしく立ち上がる。

それを確認した男が合図を出す。

舞台上の灯りがつく気配がしたので一旦目を閉じる。


暗闇で灯りを急に見て、目をくらませないようにだ。

強い光を瞼のうらに感じたその時、会場が異様な盛り上がりを見せる。

私の檻のそばに立った男が声を張り上げる。



「さぁ!! 紳士淑女の皆さん!! 

本日最後の商品!!

髪は金色、瞳の色は珍しい金の商品!

最初は100万ルーから始めます!!」



「110万ルー!」

「120万ルー!」



値段が跳ね上がっていくのを横目に私は会場を見まわし確認する。

お兄様とアリアの姿を確認する。


「150万ルー」


静かに札を上げるご婦人がいた。


「150万ルー!! さぁ今までの商品と違い、泣きもわめきもしない!

おとなしいですよ!!

さぁほかの方はいませんか!?」



男の売り文句が耳に入ることも無く、私はご婦人を見て内心驚きで愕然としていた。

他に札を上げる者がいないので、このままだとあのご婦人に買われてしまう。

思わず口の端がヒクヒクとしてしまう。


「160万ルー!」


一人の男が札を上げ叫んだ。

仮面で顔は分からないが、金の髪を後ろで軽く結っている男だ。


「170万ルー」


ご婦人が静かに対抗する。

会場はご婦人と金髪の男との一騎打ちに盛り上がる。


「さぁいかがなさいますか!? 170万ルー!

ただいまあちらのご婦人の170万ルーです!」


男の煽り文句に金髪の男が意地になったのか札を上げる。


「200万ルー!!!!!」


「500万ルー」


値段を跳ね上げるご婦人を悔しそうに睨みながら男が叫んだ。


「800万ルーだ!!!!」


ご婦人は微笑みながら札を降ろし会釈をした。


「800万ルーで落札!!!!!!!!」




会場がドッと盛り上がる。

私は先ほどのご婦人の方に少し視線を遣ると、微笑んでいるように見えた。

盛り上がる会場を大男たちに檻を持ち上げられ後にする。


私を買った男に見覚えがあり、嫌な予感がする。

それにあのご婦人もだ……。

これはどちらに落札されても……。

いやこの男に買われた方がよかったか……。


気になることはたくさんあるが、これから大仕事が待ち受けている。

余計な考えを振り払い集中することにした。






違う部屋に戻され、おとなしく待つこと1時間。

数人の男たちが入ってきて、それぞれ檻に手をかける。

檻のカギが開けられ、外に出される。


縛られたままで縄の端を持った男に連れられ、それぞれ落札者の元に連れて行かれるようだ。


私が最後の一人になり、私が部屋に一人残されているとき、漆黒から掌に収まる小さな紙を落とされる。

私はそれを確認して軽く頷いた。



そのすぐあと、男が部屋に入ってきて私の檻のカギが開かれた。

私が連れて行かれたのは庭に面した一際豪華な一室だった。





さすが800万ルーで落とされただけあるなと、どうでもいいようなことを考えていた。

部屋で座っていた男が立ち上がり私に近づく。

服の質や、宝石を身に着けていることから、おそらくこのオークションの責任者かそれに近いものだろう。


「こんな棒っきれのような女が過去最高額で落とされると思わなかったね」


言いながら私の顎を手で上を向くように押し上げる。

意図せず男と目を合わせることになった。

私は無表情で男を見る。

仮面のせいで男の顔の全貌は分からなかったが、楽しそうに口をゆがめはじめる。


「あぁ確かにこの瞳はステージで光に照らされて目立っていたね」


私の顎から手をのけて、すぐに興味を失ったように席に戻る。


「まぁいい。今回の落札者はかなりの大物だからかわいがってもらうといい」


男が席に座ってそういった瞬間部屋の扉がノックされた。

部屋に入ってきた男は私を落札した男だ。


「おぉクレア卿に直接見合えるとは思わなかった」

「恐れ多い事です」


金髪の男がクレア卿と呼ばれる男に近寄る。

クレア卿は膝をつき金髪に挨拶をする。

最敬礼だ。

それも王族にする最敬礼……。


「この度は我々のオークションにお越しいただき恐悦至極に存じます」


「いや今は立場を隠しているんだ。

責任者の君が膝をつかなくていい」


慇懃無礼にふるまう金髪の男の正体に

「やはり……」という気持ちで思わずため息が出そうになる。


2人がソファに座り談笑を始める。

それを聞き流しながら神経を集中させておく。



「それではそろそろ……」



クレア卿の言葉に嬉しそうに笑いながら、金髪の男がカバンに手をかけたその時。

鴉が窓の外を飛び去った。




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