412話:やり方
「『流星雨』!」
「『地獄の業炎』!」
隕石が降り注ぎ、漆黒の炎が俺を飲み込む。五人の覚醒者たちが懲りもしないで攻撃を繰り返している。第一〇界層攻撃魔法と、最上位スキルの集中砲火。
だけど俺は身体を覆うように魔力を放っているから、服すら無傷だ。服さえ気にしなければ、ステータスだけでダメージは一切通らない。
「これだけの攻撃で無傷だと……化物が。ならば、これならどうだ――『殲滅破』!」
頬に傷のある男はスキルを発動すると、放電現象のように膨大な魔力を放つ巨大な戦斧を何度も叩きつける。だけど俺は躱さずに全部受けて、その場から一歩も動くことはない。勿論、ノーダメージだ。
「そろそろ無駄だって理解しろよ。そんなに死にたいのか?」
男の顔を鷲掴みにして地面に叩きつけると、周りの覚醒者たちを巻き込んで周囲が陥没。直径五〇mほどのクレーターができる。
「一二〇六レベルのおまえなら、これくらいじゃ死なないだろう?」
頭から地面にめり込んだ血まみれの男が唖然とする。
「どうして俺のレベルを……まさか『能力偽装』でレベルを誤魔化しているのか?」
「手の内を隠すのは当然だろう。実際に戦っても気づかないなんて、それで良く俺と戦う気になったな。俺と戦えばどうなるか教えてやるよ」
俺は周囲に無数の魔力の塊を出現させる。俺の師匠のセレナや魔王アラニスも使う集束させた魔力による攻撃だ。
無数の魔力の塊から大地向けてレーザーのように光を放つと、俺と五人の覚醒者、米軍の将校がいる場所だけをピンポイントで残して、周囲一帯の地面が一瞬で溶解。どれだけ深さがあるか解らないほどの巨大な穴ができる。
「こ、こんな馬鹿げた魔力が……」
「こんなの、幻術に決まっているわ!」
女が叫んだ弾みに足元の石が穴に転がり落ちる。それからしばらく経って、遠くから底に当たる音がした。
「嘘……」
『索敵』で魔力を感知すれば、その時点で幻術じゃないと解りそうなものだけど、これでようやく現実だと理解したみたいだな。
「力を見せつけるようなやり方は好きじゃないけど、この方が解り易いだろう。今回は殺さないけど次はない。おまえたちの国に対する最後通告だって理解しろよ」
恐怖の色を浮かべる五人の覚醒者と将校を見渡す。
「俺たちに一切干渉するな。そっちが干渉しないなら、こっちも手出ししない。ただし、こう見えて俺のルーツは日本だ。日本で好き勝手なことをしたら、俺が敵に回ると思えよ」
『異世界転移門』を発動して、無言の覚醒者たちを米軍基地内の邸宅に戻す。
「そう言えば、テーマパークで襲って来た奴らのことを忘れていたな。あいつらも返すから、二度と日本に来させるなよ」
一度俺たちの世界に戻って、『絶対防壁』の中に放置していた奴らを連れて来る。人数が多くて邸宅の中には入らないから、基地の敷地内に放り出した。
※ ※ ※ ※
俺は自然破壊をするつもりはないから、荒野に作った巨大な穴は、あとで魔法で完全に修復した。
あれから米国が俺たちに干渉することはなくなったけど、裏で動いていることは把握している。もし次に仕掛けて来たら、警告したことを実行に移すまでだ。
「米国政府が日本に覚醒者を送り込んだ表向きの理由は、覚醒者による犯罪を国際的に取り締まるためだが、本当の目的はアリウスと背後にいる組織を排除することだった。
米国は某国が関わっていると踏んでいたが完全に的外れで、アリウスという埒外の脅威が存在することを知った今は、アリウスに関する情報を集めようと躍起になっている」
今日、俺は紫藤武明と月島花蓮と一緒に居酒屋で飲んでいる。個室じゃない普通のテーブル席で。
覚醒者対策課が警察組織内であからさまに監視されることはなったけど、他の手段で監視されていることは承知の上だ。
「それでも異世界の住人であるアリウスさんの情報は限られます。米国政府はアリウスさんと関係のある私たち覚醒者対策課に協力させようと、日本政府を通じて警察に要請しましたが、どういう訳か警視総監は要請を拒絶……理由は想像がつきますが」
花蓮が苦笑する。
「だけど、そのせいで今度は米国の政府系機関から、おまえたち覚醒者対策課が監視されることになったんだろう? 俺のせいで巻き込んで悪いな」
「何を言っているんですか。監視されたところで、私たちの活動に支障が出なければ何の問題もありません。それにアリウスさんのおかげで、私たちは海外の組織の覚醒者を大量に検挙できたんです。おかげで残業も減りましたし、少しは協力させてください」
「月島の言う通りだ。今のところ、我々の行動が海外の組織に漏れている様子はないから、監視されることで支障は出ていない。これくらいのことでアリウスに協力できるなら安いものだ」
今も俺たちは監視されている。米国人が監視していると目立つと思うかも知れないけど、米国にはアジア系の人間も多いし、今は日本にも外国人が多いから、如何にも外人って感じの奴がいても、そこまで目立つ訳じゃない。それでも俺が目立つことは否定しないけど。
「いらっしゃいませ!」
このタイミングで居酒屋に客が入って来る。周りの客たちが思わず視線を向けるのは、そいつの見た目のせいだ。
年齢は二〇代後半で、ウェーブした金髪と青い瞳の物凄い美人。胸元の大きく開いたシャツとタイトなスカートが、圧倒的なプロポーションを際立たせる。女は真っ直ぐに俺たちのテーブルの方にやって来ると、英語で話し掛ける。
「アリウス、初めまして。私は米国陸軍に所属するミランダ・カーシェル中佐。貴方なら私が覚醒者で、近づいて来ることも解っていたわよね? 少しだけで構わないから、話をする時間を貰えないかしら」
「俺たちに干渉するなって言った筈だ。この前が最後通告だってこともな」
「ええ、理解しているわ。だから殺される覚悟はある。だけど貴方だって、私たちを誘い出すために覚醒者対策課の二人と、こんな場所で飲んでいるんでしょう?」
全部解っているって顔で、ミランダは真っ直ぐに俺を見た。




