襲来
王城の大広間を開放して、宴が始まった。
メアリ皇女は用意された純白のドレスを纏って、美しい姿を披露している。
サーテインも沢山の人に囲まれて忙しそうだ。
サーテインにはいろいろと聞きたい事があるんだけど、まだ暫くは無理かな?
国王と王妃にも、レイの事でお話ししたい。
勿論、本当の事は明かせないけれど。
で、広間の端で極力目立たない様にしている私。
しかし、往き交う人達の視線、視線。
やっぱり…もうやだー!
私は戦乙女の正装で馳せ参じる様に言われてしまったのだ。
こんな痴女みたいな格好でパーティーに参加してるの、私だけじゃないですかー!
度々、この格好に惹かれたらしき殿方が挨拶に来る。
しかし『私に声を掛けた貴様は魔王か?ぶっ殺すぞ』的な私の顔を見るや、入れ替わり立ち替わりに去って行く。
もうホントに勘弁して下さい。罰ゲームじゃないんだから…
こうして、自ら孤立しているぼっち戦乙女であった。
時を同じくして、ここ王都に恐るべき敵が来襲していた。
そんな事を私は未だ、知る由すら無い。
遂に魔王軍が動き始めている事を…!
王都の入り口、関所には2名の兵士が警備に着いていた。
夜になったというのに、一人の男が歩いてやって来る。
黒いコートを纏い、インナーも黒。旅人だろうか?
全身黒ずくめの男はまだ若い。20代くらいに見えた。
長い前髪で顔の半分は隠れてしまっている。
「ようこそ王都へ! 運が良いな! 今日はお祭りになっているぜ!」
「祭り…? それじゃあ、四聖人も来ているのか?」
兵士の一人が声を掛けると、男は逆に質問を返した。
その前髪の間から、鋭い目が光る。
「確か…戦乙女のセーラ様だけが来ているらしいが、さてはファンなのかい?」
「弓術士は来ていないのか…?」
「デューレ様が来ているとは聞いてないな。 あぁ、兄ちゃんはそっちのファンか! まぁ、どっちも別嬪さんだもんな?」
会話を弾ませながら、兵士達は彼に近寄って行く。
「おっと、忘れるところだったぜ! 兄ちゃん、一応は通行証を拝見させて貰……」
その瞬間、兵士達の声が途切れた。
いや、途切れたのではなく、2人の兵士が消えていた。
今、そこには黒ずくめの男だけしか居ない。
兵士達は忽然と姿を消したのである。
「俺に勝手に近寄るからだよ、マヌケが…」
そう言い放つと、彼は街へと入って行くのだった。
「弓術士は居ない…か。やはり俺はツイてる」
これが後に『王都の消失』と呼ばれる、終わりの始まりであった。




