不安
「なんか瓦礫ばっかりだけど、魔王の手掛かりなんて本当にあるのかな?」
「バハムートの幻影に守らせていた以上、必ず何かがある筈です」
愚痴ってしまう私に、ローランが諭す様に答えてくれる。
数百年前の城塞跡。
魔王軍の砦として使われていた、との言い伝えが残っているらしい。
この砦での戦いがあった時代は勇者が現れ、魔王軍との果てしない戦いが繰り広げられたという。
その激戦の凄まじさは数百年後の現在でも判るほど、内部は破壊し尽くされて瓦礫の山となっている。
魔王に繋がる物が隠されていたとしても、この瓦礫の山から捜すのは無理難題にしか思えない。
探索を始めてから、3時間近くが過ぎた。
「ローラン、そろそろお昼ご飯にしよ!」
私が背負うリュック。
中にはお弁当が入っているのだ。
立ち寄る宿では毎回、無理を言って厨房を借りては2人分のお弁当を作っている。
元の世界に居た頃からの夢だったんだもん。
彼氏にお弁当を作ってあげて、昼休みに一緒に食べるのがさ。
この世界の食材にもかなり慣れてきているが、最初の頃に作ったものは絶対に不味かったと思う。
ローランは『美味しい』と言って完食していてくれてたけど…。
「きゃっ!」
ローランが居る場所に駆け寄ろうとして、私はつまづいて転んでしまった。
「セーラッ!?」
一瞬でローランは私の元に駆け寄り、手を取って起き上げてくれた。
こういう所が本当にスマートなんだよね、マイダーリンってば!
あれ?
私は転んだ地面が、周りと少し違う事に気付いた。
勿論、ローランも。
何か、鉄の蓋の様な…?
ローランが蓋を上げてみると、地下へと続く階段がある…!
「ここを探索してから、昼食にしましょう」
ローランはそう言うと、階段を降りて行く。
私も後ろをついて行く。
灯りが無く、暗い…。
ローランは神剣を引き抜くと、その眩いばかりの輝きが松明の代わりとなる。
便利だね!
階段を降り切ると、そこは広間になっていた。
壁には手鎖が付いており、拷問部屋かと思われる。
初めてこの地に召喚された、薄暗いあの広間を彷彿する、なんだか嫌な場所。
『ガシャン!!』
降りてきた階段の上、地上への蓋が勝手に閉じた様だ。
益々と気味が悪い…。
その時だった…!
「うわっちゃ〜〜! まさかの巫女チャンが自らやって来てくれるなんてぇ〜、俺チャンってば幸運ッ!」
奥から男の声が響く。
「しかも! 聖戦士の英雄チャンまで一緒だなんてぇ、まさに鴨ネギってヤツぅ〜〜?」
そう言いながら私達に近寄る男。
見た感じは20代の銀髪チャラ男。
男前かもしれないが、絶対に私のタイプじゃない。
真っ赤なマントみたいなコートを纏っている。
まさか、この男が魔王……?
「あ、勘違いしないでくれよぉ巫女チャンよぉ〜? 俺チャンは魔王チャンじゃねぇからさぁ〜!」
まるで私の思考を読んだ様に、チャラ男は言い放った。
本能的に嫌悪したくなるタイプだ。
アンタなんか…ローランに成敗されろっての!
「セーラ、よく聞いて下さい…!」
怪しいチャラ男が近寄る中、ローランが背後に居る私にそっと呟く。
「この男、僕が今までに戦った誰よりも強い。 おそらく、僕より遥かに…!」
ローランが初めて、私を不安にさせる事を口にした…。




