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転生したおじさん、目立ちたくないけど傾聴スキルでモテまくる  作者: なごやかたろう
新人冒険者編

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第22話 フィオナの才能

「今日の依頼は、少しだけ難しいぞ」


森へ向かう途中、アルベルトが言った。


「はい」


フィオナは頷いた。

今日の依頼は、森の奥にある薬草の採取。

ただし、最近その周辺で大型魔物の目撃情報が出ている。

危険度はこれまでより一段高い。


「怖くないか?」

「……少しだけ」

「正直でいい」

「でも、大丈夫です」


フィオナは前を向いた。


「私も、ちゃんと役に立ちたいです」

「もう役に立ってるだろ」

「……」


さらりと言われて、フィオナの顔が少し赤くなる。


「そ、そういうことを急に言わないでください」

「事実だからな」

「……はい」


フィオナは小さく笑った。



森の奥へ進む。

昨日までより、明らかに空気が違う。

鳥の声が少ない。

小動物の気配もない。


「……静かですね」


フィオナが呟く。


「そうだな」


アルベルトも周囲を見る。


「どう思う?」

「……何か、大きな魔物が近くにいると思います」

「理由は?」

「鳥だけじゃありません」


フィオナは周囲を見る。


「木の葉がほとんど動いていません」

「風がないからじゃないのか?」

「風はあります」


フィオナは自分の髪を確認する。


「でも……この辺りだけ、変です」

「なるほど」


さらに進む。

少し先に、大きな木があった。

その幹には深い傷が残っている。


「これは……」


フィオナが近づく。


「新しいです」

「分かるか?」

「はい」


爪痕の周りに、まだ削れた木の粉が残っている。


「それに……」


フィオナは地面を見る。

大きな足跡。

一つ。

二つ。


「……大きい」

「何だと思う?」

「分かりません」


フィオナは慎重に周囲を見る。


「でも、ここから先は危ないと思います」


アルベルトが頷いた。


「俺もそう思う」


その瞬間。

遠くから――。

地面を揺らすような音が響いた。

ドン。

ドン。

ドン。

フィオナの顔が強張る。


「……来ます」

「どっちだ?」

「……右です」


アルベルトが右を見る。

何もいない。


「もっと……奥」


フィオナは目を細めた。


「木の向こうです」

「距離は?」

「……五十メートルくらい」

「分かった」


アルベルトは剣を抜いた。


「ここで待ってろ」

「はい」


だが――。

フィオナはもう一度、周囲を見る。

何かがおかしい。

音は右から聞こえた。

でも。


「……アルベルトさん」

「ん?」

「待ってください」

「どうした?」

「右だけじゃありません」


アルベルトが振り返る。


「……どういうことだ?」

「左の森からも、音がします」


フィオナは耳を澄ませる。


「さっきから……木が少しずつ揺れてます」


アルベルトは左を見る。

しばらくして。


「……確かに」

「二匹……?」


フィオナはさらに集中する。


「……違う」

「どうした?」

「三匹です」


アルベルトの目が変わった。


「本当に?」

「はい」

「分かった」


アルベルトは剣を構える。


「じゃあ、予定を変える」

「はい」

「フィオナ」

「はい」

「お前が見つけた場所を教えてくれ」

「分かりました」


その直後。

森の奥から大型の魔物が姿を現した。

巨大な牙。

太い四肢。

獰猛な目。

一匹。

続いて、少し離れた場所からもう一匹。

そして――。

フィオナが指を向ける。


「三匹目!」


アルベルトが振り返る。

木の陰から、別の魔物が飛び出した。


「なるほど」


アルベルトは笑った。


「助かる」

「はい!」


フィオナは必死に周囲を見続ける。

アルベルトが一匹目をかわす。

剣を振る。

魔物が倒れる。

二匹目が襲いかかる。


「左!」


フィオナが叫ぶ。

アルベルトが身をひねる。

爪が空を切る。

そのまま懐へ入り――。

一撃。

二匹目も倒れた。


「残り一匹!」


フィオナは叫ぶ。

しかし、三匹目の姿が見えない。


「……どこ?」


静かだ。

フィオナは目を閉じる。

音。

匂い。

風。

足元。

そして――。


「……後ろ!」


アルベルトが振り向く。

三匹目が木陰から飛び出した。


「見えてる」


アルベルトの剣が走る。

最後の一匹が地面に倒れた。



戦闘が終わった。

フィオナはその場に座り込む。


「……終わった」

「ああ」


アルベルトは剣を収める。


「お疲れ」

「……はい」


フィオナは息を整える。


「三匹いるって……分かったんですか?」

「ああ」

「私が言う前から?」

「いや」


アルベルトは首を横に振る。


「俺は二匹までしか確信できてなかった」

「……え?」

「三匹目を見つけたのは、お前だ」


フィオナは魔物を見る。

三匹。

確かに三匹いた。


「……私」


アルベルトが振り返る。


「どうした?」

「ちゃんと……役に立てたんですね」

「だから、そう言ってるだろ」

「……」


フィオナは笑った。


「……嬉しいです」

「そうか」

「すごく……嬉しいです」


アルベルトは黙ってフィオナを見る。


「私、もっと強くなりたいです」

「剣を?」

「それもあります」


フィオナは少し考える。


「でも……」


自分の胸に手を当てる。


「この力を、もっと伸ばしたいです」

「索敵能力か」

「はい」

「なら、伸ばせばいい」

「私にもできますか?」

「できる」


アルベルトは即答した。


「お前には、その才能がある」

「……」


フィオナは目を伏せる。

以前なら。

そんな言葉を信じられなかっただろう。

でも今は――。

少しだけ信じられる。


「……ありがとうございます」

「礼はいい」

「でも、言いたいんです」

「そうか」

「ありがとうございます、アルベルトさん」


アルベルトは笑った。



帰り道。

フィオナは何度も今日のことを思い返していた。

自分が敵を見つけた。

危険を知らせた。

そして――。

アルベルトが、自分の判断を信じてくれた。

それが嬉しかった。


「……」


フィオナは隣を歩くアルベルトを見る。

昨日まで。

自分は、この人をただのCランク冒険者だと思っていた。

今は違う。

自分の力を見つけてくれた人。

自分を信じてくれた人。

そして――。

自分が冒険者を続ける理由を、もう一度思い出させてくれた人。


「……アルベルトさん」

「ん?」

「私……」


フィオナは少しだけ迷う。


「もっと、この人と一緒に冒険したい」


そう思った。

けれど、その言葉はまだ口に出せなかった。

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