第02話 何かかをひとつ
三十年間、誰かに大きな迷惑をかけることもなく真面目に生きてきただけなのに、死んだら神様から理不尽な使命を押し付けれられた。元気に『承知しました!』などと言えたもんじゃない。俺はそのまま黙っていた。
「最後に。お前が必要なものをひとつだけ転生先に持っていくことができる」
『無人島にひとつだけ持っていくなら何がいい?』 みたいな流れだ。
「条件としては、今までの世界にあるもの。そして、物理的に数えられるもの。つまり、永遠の命や魔力のように存在しないものや、インターネットや電気のような境界がはっきりしないものはダメだ」
何かひとつだけね…
「特典なのだが、お前が選んだものは、一日経つと初期状態にされる。ナイフであれば折れたり錆びても新品に戻る。ライターのガスやペットボトルの飲み物であれば、満タンになり枯れることはない。そして、お前に対して悪意や敵意を持った者はそれを使用することはできない」
「俺がナイフを選んだら、それを誰かに取られても傷つけられることはないっていうこと?」
「その場合は、相手はそのナイフを持つこともできない。さぁ、何がいい。ひとつだけ選べ」
武器か食料か、それとも便利な道具のようなものか。俺が考えている間、神様は静かに待っている。
「そんじゃ、ショッピングモールで!」
「はぃ?」
神様が驚いて杉下右京のような声を出した。ショッピングモールなら、1軒や1箇所と数えることができるし、前世にもあったものだ。条件は満たしているはず。
「だめですか?」
「ちょ、ちょっと待て!」
神様はどこからか本のようなものを取り出し、恐ろしい速さでページを捲っていき、途中で手を止めて呟いた。
「激しくグレーだが、アウトではないな…」
とりあえず、俺の望みは叶えられそうだ。
「それでは儂の名代として、世界統一に行くのだ。詳しいことはむこうで使途に聞くとよい。健闘を祈る!」
俺としては言いたいことは山ほどあったが、目の前から神様は消え、意識が一瞬だけ遠のいた。




