↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
21/31

第21話 協力者の真相

 アクトたちを見据えて大きく鼻息を鳴らしたジアドは、早速とんでもないことを口にした。

 それはある意味、地下世界全体を揺るがしかねない言葉だった。


 「ベルの協力を得られたのは僥倖だ。

  地表へ帰るために、まずは下層を手に入れよう。」


 「はああああ!?」


 アクトは目を丸くして叫んだ。

 さすがのマーガレットも飲み物を吹き出し、リーリアに至っては目を見開いたまま固まっていた。


 「いやいやいや!手に入れるってどういうことだよ!?」


 「ちょっとお!?さすがにそれは無理があるんじゃなーい……?」


 アクトとマーガレットはほぼ同時に声を上げた。

 だが二人の驚きを気にする様子もなく、ジアドは不遜なままだ。


 「ふんっ。祖父の代……いや……

  ずっと昔からコソコソとネズミのようにするのが気に食わなかったのだ。」


 ジアドはどうやら本気らしい。どちらにせよルシウスやベルの野望を叶えるためにも必要なことであるのは間違いない。

 ただ、あまりにも突拍子のない話にアクトは言葉が見つからなかった。


 「……なぁ、そもそもなんだけどよ。」


 アクトはふと、ずっと気になっていたことを口にした。

 それは、ジアドと出会った時からずっと疑問に思っていたことだった。


 「なんだ?」


 「ジアドも……これまでの王たちもどうやって地下世界に……?

  まさか、毎回騒ぎを起こさずに忍び込んでたなんて言わねえよな?」


 アクトの問いはもっともだ。

 永い時間をかけて築かれた地下世界は確かに広大だが、ジアドみたいな目立つ夜眼が頻繁に出入りできるなんておかしい。


 「……まあ、お前たちになら話してもよかろう。」


 ジアドはアクトとリーリアを見据えた。

 二人を連れて行くと決めてから、まさか自分が人間であるアクトにここまで気を許すとは思ってもみなかった。

 ただ、アクトにはそうさせる何かがあると、ジアドは不思議な感覚を覚え始めていた。


 「中流層には、地表に繋がる道があるのだ。我らはそこから出入りしている。」


 「なっ!!?」


 まさかの言葉だった。中層にそんなものがあるなんてもちろん聞いたこともない。

 仮にあったとして、なぜ見つからないのか──アクトはにわかには信じられなかった。


 「いや、そんなもんあるとしても……なんで見つかってねえんだよ!?」


 アクトは身を乗り出した。そんなものがあるなら、一刻も早く地表に向かいたいという焦燥がアクトの顔に滲む。

 しかしそれを見透かすように、ジアドは険しい顔を浮かべた。


 「人間にも協力者がいると言ったろう。人間も一枚岩ではない。

  中流層を仕切るカグラザカファミリーは、ずっと昔から我らの協力者なのだ。」


 それは青天の霹靂と言えるほどの衝撃だった。中流層のカグラザカファミリーといえば、かつては上流層にも影響力を持っていた巨大ファミリーだ。

 そんな存在が、まさか裏で夜眼に協力していたなんて思いもしなかった。


 「そ、そんな……信じられねえ……」


 だがジアドはアクトに向けて言った。

 それもまた、アクトにとっては信じられない言葉だった。


 「いや、お前は信じるさ。リーリアをお前に託した院長……

  それこそが、当時ファミリーのボスだったマリアなのだからな。」


 「は!?」


 「え!?」


 アクトとリーリアは同時に声を上げた。自分たちを拾い、育ててくれた母にも等しい院長が、まさか一大ファミリーのボスだったなんて。だがそれを聞いて妙に納得する部分もあった。

 カグラザカファミリーはある日を境に上流層への影響力を無くしてしまう。それがまさに8年前──アクトがリーリアを託されたあの日からだった。


 「8年前、マリアが密かに未登録の夜眼を匿っていたことが露呈した。

  そしてそれが、お前たちが逃がされた日というわけだ……

  だがまさか、託されたリーリアを8年もの間隠し続けていたとは驚いたぞ。」


 ジアドはそう言ってアクトに微笑んだ。

 それは戦いを生き抜いた戦友に向けるかのような、深い労いの込もる笑みだった。


 「はは……まじかよ。確かに食えねえババアだと思ってたけど……」


 久しぶりにマリアの影を思い出し、涙を滲ませるアクト。

 リーリアも同様に、彼女の優しい笑顔を思い出し、アクトの横で瞳を涙で揺らしていた。


 「マリアさん……また会いたかったな……」


 「そうだな……」


 そう呟いて俯くアクトだったが、すぐに顔を上げるとジアドに向けて言った。


 「その道ってのはすぐには使えねえのか?

  本当にそんなもんがあるなら、今すぐにでも──」


 それを遮るようにジアドが首を横に振った。

 再び険しい顔を浮かべた彼は告げる。


 「中流層の道は、人間には険し過ぎる。

  我らの聴覚や嗅覚があって、始めて進めるような道だ。」


 「じゃあ……リーリアだけでも……!」


 それを口にした途端、リーリアはアクトを睨みつけた。


 「私……アクト兄がいないなら行かないから!」


 アクトは言葉を詰まらせた。リーリアは絶対そう言うと分かっていたからだ。

 そんな二人を見て、ジアドは不敵な笑みを浮かべる。


 「だから、まずは下層を手に入れる。

  そして、中流層でカグラザカファミリーと合流したのち、さらに上流層を目指すぞ。」


 当たり前のように言うジアドにアクトは再び目を丸くした。上流層なんて最下層の人間が一生かけても行けない場所だ。

 まさか自分が、そんなところを目指す日が来るとは夢にも思わなかった。


 「な、なんで上流層なんだよ……?」


 「上流層にも、古くから使われていた道がある。

  そこは中層と違い、専用の道具さえあれば人間でも進める道だ。お前が地表を目指すにはそれしかない。」


 ジアドの言葉は力強かった。その声には必ずアクトも地表へ連れて行くという意志が感じられた。

 そんなジアドの姿を見たアクトは、眉間に皺を寄せつつも思わず笑みをこぼした。


 「ははは……あんた、やっぱり無茶苦茶だな……!」


 そのやりとりを見ていたマーガレットがニヤリと笑みを浮かべて告げた。

 彼もまた、ガイアスとともに見た地表を再び目にする日を待ち望んでいた。


 「じゃあ、話がまとまったところでゲストを呼んじゃうわねーん。──入ってきてえ。」


 「ゲスト……?」


 首を傾げるアクトとリーリア。

 マーガレットに呼ばれ、部屋の奥から顔を覗かせたのは、なんとあのベルだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。