4
ドアの方に体を向けてから数歩進み、僕は、お店のドアの前に立った。
お店は、面白いことに大きなガラス張りで覆われた外観であるのに対して、入り口にあるのは大きな木製のドアだった。そして、ドアには【OPEN】と書かれた小さな鉄製のドアプレートがかかっていた。
通りかかる際には店内が見えるのに、入り口から入ろうとすると見えないのである。これは、店主のこだわりなのだろうか。
一応、ドアプレートもかかっているということは、営業をしているということである。僕は大きな木製のドアを押して中に入ろうとしたが、見た目以上に軽く、力をあまり入れずとも楽に開いた。
店内に入ると、中は予想以上に殺風景だった。
外から見ると、綺麗に見えたのだが、中に入ってみるとまた違った印象を受けた。
真っ白い壁に、コンクリートで塗り固められた床。
壁には明るい茶色の本棚が所狭しと置かれていたが、あまり本は置かれていない。
また、店内はBGMのようなものは流れておらず、無音だった。
僕は、店員さんがいないのだろうかと左右を見渡したが気配がない。気配はないが、店は空いていたのである。ひょっとして、どこかに買い物にでも行っているのだろうかと思った。
しかし、ここはお店である(多分本棚があるから本屋なのだろう。よく見ると、小さな小物や雑貨が売っていそう。そして、奥にはテーブルもあるから、コーヒーでも楽しめるのかもしれない)。
とりあえず、僕は本棚に飾られている本を見ることにした。
コンクリートの床は、履いているスニーカーが吸い付くような感覚があった。ツルツルの床に違和感を覚えつつも、僕は本棚の前に向かった。
やはり、入り口から見た本棚の通り、そこに本はなかった。僕が歩いて本棚の前に立ったことによって、急に本が現れる仕組みでもなかった。そんな仕組みだったら面白いのにと僕は思った。
本棚はたくさんあるのに、3冊の本はその本棚の隅の隅に置いてあった。
ワインレッドのカバーの本。
スカイブルーのカバーの本。
そして、真っ白のカバーの本。
どの本も立てかけられるように置いてあったのではなく、表紙を表にして、飾られるようにディスプレイされていた。また、不思議なことにそれらの本に特段の印刷はされていない。タイトルも、なにもかも。ただそこに色のついた本が置いてあるだけだった。
スカイブルーの本に、真っ先に僕の手が伸びた(青色が好きということもあるかもしれない)。
本を開くとき、なんだか緊張した。時が止まったような感覚だった。
環境のせいもあるかもしれない。無音で誰もいない店内。不思議な3冊の本。これだけ揃えば、オカルトな感覚も芽生えるというものだ。
1ページ目は真っ白。2ページ目からは風景写真が続いた。
パラパラとめくったが、全て風景写真だった。
A4サイズの本、1ページにL版の写真。余白は真っ白であった。
特にその風景写真に、タイトルが記載されているわけでもない。海の写真が来たかと思えば、山の上から撮影された写真が来たり、見たこともない街中の写真が掲載されていた。掲載されている写真にジャンルの偏りはなかった。
普通の写真集だったため、僕は少し肩透かしを食らったような感覚があった。
すると、僕の背後で何かが動いたような気がした。
振り返ってみると、お店のドアが徐々に開かれていた。




