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 昇降口を出て、空を見上げると、びっしりと雲が敷き詰められていた。


 これでもか! というくらいである。


 朝は、晴れていたような気がするのだけれど(それでも雲の量は多かった)、気がつけば辺り一面曇り空だった。ああ、でも今日は晴れ時々曇りの予報だったっけ。


 私は、あまり曇り空は得意ではない。特に、冬の季節の曇りは。


 冬の季節の曇り空は、雨が降るような気配はまったくないのに、とても厚みがあって重そうである。見ているこっちまで重たい気持ちにさせられる。道路を走るカラフルな車も、綺麗なブルーの屋根のお家も、何だか全て灰色に見えるのだ。


 私はため息をついた。


 そして、これからの天気が気になったのでスマホで調べることにした(これ以上、気持ちが重くならないことを祈りつつ)。


 カバンからスマホを取り出してスリープ状態を解除した。


 画面を、3タップくらいすると天気予報の情報が表示された。

 

 雨が降らない代わりに、今日は雪が降るらしい。


 なんと。


 朝の天気予報では、本日は晴れ時々曇りと言っていたのに。現代の科学でも地球の天気についてはまだまだ解明できていないものが多いということか。


 カバンの中にスマホを投げ入れた。そして、気をとりなおして歩き始める。


 


 冷たい空気が私の頬に、ビシビシと当たった。川沿いは特に冷たい。それでも、私は今日あのカフェに行けないと思う。なんでだかわからないのだけれど、行かなければならないのだ。よくある話である。謎の使命感。


 カフェが見えてきた。見えてきた時、意外と学校から近いと私は思った。


 朝の通学路にあるお店ではあるものの、私は朝は大抵、走っている。走っていなくても気分は走っている。


 ゆっくりと、落ち着いた気持ちで歩いて向かったときと、走った時とではここまでも時間的な流れ違うのは新たな発見だった。


 お店の入り口には大きな木製のドアがすっぽりとはまっていた。そしてドアには【OPEN】と書かれた小さな鉄製のドアプレートがかかっていた。


 私は、何も考えずにお店のドアを押して中に入った。


 店内に入った時に受けた私の第一印象は殺風景。何もない。人にモノを売る気があるのかというくらいものがない。

 

 初めは本屋か何かと思っていたが、最近はカフェだろうと思っていた。まぁ、何かを売るということはないよね。


 白い壁、床に塗りたくられたコンクリート。本棚はたくさんあるのに、置いてある本は少ない。


 入り口の正面には、あのお店の前で見かけた男性がいた。おしゃれなオールバックに黒ぶちメガネ。白いシャツに黒いパンツと黒いエプロン。このお店の制服なのかもしれないと思った。


 ただ、特段私になにか挨拶をしたりはしなかった。こちらを見ようともしなかった。ただ、黙々と机を見つめて、なにか作業をしていたのだ。私だったら、目の前に誰かが現れたら振り返ってしまう。ものすごい集中力だなと思った。


 

 とりあえず店員さんに話をかけることはせず(邪魔をしてはいけない)、左側にある木製の大きな本棚の方に私は向かった。


 遠目から見ていたわかってはいたことだが、やはり少ない。本よりも白い壁が目立っている。

 

 大きい本棚なのに、本が3冊しか置いていない。


 ワインレッドのカバーの本。


 スカイブルーのカバーの本。


 そして、真っ白のカバーの本。


 どの本も立てかけられるように置いてあったのではなく、表紙を表にして、飾られるようにディスプレイされていた。また、不思議なことにそれらの本に特段の印刷はされていない。タイトルも、なにもかも。ただそこに色のついた本が置いてあるだけだった。


 私は、ワインレッドのカバーの本に手に取った。


 たくさんの人の写真が載っていた。


 いい笑顔の写真、斜に構えてかっこつけている写真、眠そうな顔の写真。


 この写真の特徴的なのは、集合写真やグループ写真はなく、個人写真ばかりであるということである。また、被写体は老若男女問わず、特定の個人に限定されたものではなかった


 また、全てモノクロ写真だった。


 写真集、ということだろう。


 私は、あまりモノクロ写真というのは見たことがない。むしろ初めて見るくらいだ。


 そういえばクラスに、一人だけモノクロ写真が好きな男の子がいた。


 その子は、ちょっと変わっていて、あまり運動神経は良くない。でも、美術や音楽といった科目が得意で、絵や歌がとても上手だった。いい意味でエロティックな男の子。


 その子が撮って見せてくれたモノクロの写真とは、また違う気がする。彼の撮る写真とこの写真は少し雰囲気が違うのだ。でも、どういうことかは、ぱっと言葉に言い表せない。


 自分の語彙力のなさに私は、落ち込んだ。


「生きている感じがしない、とかかな」


 どこから、ともなく声が聞こえてきた。


「そう、そうなんです!」


 私は、思わず大きな声を出した。


 そして、ハッとして振り返った。すると、さきほどまでお店の入り口の机で作業していた人が後ろで立っていたのだた。


 

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