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 私の目の前に現れたスーツを着たサラリーマンは、走りさってどこかへと行ってしまった。


 とりあえず、私は立ちあがった。自然と「よっこいしょ」というおばあちゃんくさい言葉が出た。


 私は、地面に尻餅をついたせいで汚れたスカートを、両手でささっと叩いた。


 汚れが取れたとは到底思えないけれど、やらないよりかはマシと思い、なんとなく癖でやってしまうのである。


 それにしてもビックリした。


 空から人が現れた。


 正確には、アパートのベランダから現れたのだろうか。


 恥ずかしながら、私は、驚いて尻餅をついてしまった。おかげで、スカートの中身をなかなかのアングルで男性に晒すことになってしまった。ついてない。


 これが、世に言うエクストリーム出社というやつなのだろうか(こないだ、学校でこのワードが流行った。出社だけじゃなくて登校もありじゃないかと何人かの生徒が言っていた)。


 私は、スマホで時間を確認する。またしても、ギリギリである。


 走って学校に向かい、登校するのも十分にエクストリーム登校だと私は心の中でつぶやいた。


 私は、鞄を抱えて走り出した。両足に履いたローファで、地面を力強く蹴った。


 走りながら、最近の出来事を整理した。


 私の周りでは、変なことばかり起きている。先生はいなくなってしまったし、相変わらず神隠しは解決されていない。


 謎のイケてるカフェにはまだ行けてはいないし、おまけに人が空から降って(ジャンプ)してくる。


 真剣に、お祓いとかをしたほうがいいのかもしれないと思った。早くしないと、近くの工場で爆発が突然起きたり、私自身が妖怪にでもなってしまうんじゃないかな。


 ありえないことを永遠と考えるのは楽しいなぁと思った。走りながら考えることではないけれど。


 

 しばらく走り、校門が見えてきた。


 わたしは、いつものように勢い良く昇降口に入った。


 そして、目にも留まらぬ速さを意識して、下駄箱から上履きに履き替えた。


 右足の上履きは完全にフィットして履けておらず、私はかかとで潰してスリッパのようにして履いた。


 今日はカモシカのような走りは期待できない(そして、しっかりと上履きを履き直す時間はない)。


 仕方なく、私は一段ずつ丁寧に上がっていった。





 チャイムが鳴って、私は鞄を肩にかけて席を立った。


 学校なんてあっという間に終わってしまうものである。気がつけば放課後。


 先生が話していることの8割くらいは頭に入っていないのだけれど、きっと大丈夫。


 学校のテストは、なんとかなる。


 そう、周りの友達と言い聞かせあっている。実際に何とかなってしまうのは不思議なところである。


「もう、帰る感じ?」


 友達の友梨が声をかけてきた。


「そうだね。今日は先生から特に何も言われてないし。あと、帰り寄りたい場所もあるから」


 友梨は、なんだか一緒に行きたそうにしているが、私は丁重にお断りをした。一人で行きたいからである。


 友梨は、残念な表情で私を見るが、「今日行ってみて、二人で行けそうだったら今度一緒に行こう」と私は誘ってあげた。すると、友梨は「絶対だよ」と嬉しそうな顔をして、どこかへ走り去っていった。なんだか、小動物みたいな女の子だなと私は思った。


 さて。


 あの、おしゃれなお店に向かおうと思い、私は鞄を深く肩にかけた。 

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