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 帰り道は暗くなっていた。秋になると日が暮れるのも早い。


 私は肩にかけた学生鞄をぎゅっと脇に寄せて、まばらな街灯の下を歩き続けた。


 結局、先生は1日休んだようだった。


 そして、何度電話やメールをしても連絡はとれなかった。先生の自宅に学校の先生が行ったらしいが、そこにもいなかった。また、大家さんに頼んで部屋を開けてもらったらしいが、もぬけの殻。部屋の中に、遺書のようなものもなかったらしい。本当に『昨日までそこで普通に暮らしていた』という状況だったようだ。


 友達の友梨も何も考えていない感じだった。何を聞いても「別に、あんなやつ居なくてもよくない?」とか「それよりも、来週のテストなんだけどさぁ……」とか全然話を聞こうとはしてくれなかった。


 なんだか、先生は元々この世からいないような扱いを受けているような気がした。


 学校の近くの大通りに出た。


 私は大通りの反対側に渡るため、目の前の赤信号が青信号に変わるのを待った。


 右から左、左から右と、ライトをつけた車が勢い良く通り抜けて行った。


 車のヘッドライトがすれ違う瞬間をぼんやりと見つめていたら、ふと先生のことを思った。

 

 先生は、もしかしたらどこかへ行ってしまったのかもしれない。


 誰にだってある。誰にも何も言わず、どこかへ行ってしまいたいと思う気持ちを抱くことを。


 今頃、先生は誰にも何も言わずにハワイに行っているのかもしれない。ハワイに行って、もっていたスキューバのライセンスを使ってダイビングでもやっているのかもしれない。マンタやウミガメと触れ合っているのだ。もしかしたら、サメに遭遇して、不穏なBGMが脳内を駆け巡っているのかもしれないのだけれど。


 先生が、ハワイではしゃいでいる姿を想像して、少し笑ってしまった。あんなに厳格な人が、ハワイを満喫しているというギャップがなんだか面白かったのだ。


 私は、そろそろ信号が変わるかなぁと思い反対側に目を向けた。


 横断歩道の信号は依然として赤だった。私は少しだけ落ち込んだ。


 その時だった。


 横断歩道の信号の下を、見たことある人が通った。


 私は、思わずその場で飛び跳ねた。これは、運命というやつだろうか。いや、運命だったのかもしれない。


「今朝の、お店の前の……人だ!」


 私は、興奮を抑えきれなかった。気がつけば、先生のハワイの姿などとっくに消えてしまっていた。私の中のおしゃれセンサーがビビビと音を出しているような気がした(機械ではないので音は出ないのだけれど)。


 私が、信号を再度見つめると、目の前を大型のトラックが通った。牽引している荷台部分があまりにも大きく私は驚いた。確実に運転席の3倍以上はあるくらいの長さだった。


 そのトラックが通り過ぎた時には、今朝見かけた、おしゃれエプロンはいなくなっていた。


 信号の色が青に変わる。


 私は、横断歩道の白線を飛び跳ねるようにして横断した。


「ま、待って!」


 私は、大きな声を出す。でも、目の前にその男の人はいなかった。


 私の大きな声は街中に消えていった。


 肩を落として、私は悔しがった。


 しかし、今日の私はネガティブさとポジティブさが全開だった。


 今週末の休みには絶対にあのお店に行こう、そう思うのだった。



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