村
「ついた!」
ニオは村に着くや否やそう声を上げた。
村は柔らかな明かりに包まれていて。
そして暖かい。
先ほどまでとは、まるで別の世界のようだ。
「雪花ちゃん。私の家こっちだからじゃあね!」
急に口を開いたニオはそう言って、踵を返した。
私はすぐにその背中を追い始める。
村という場所で、森から出てきた少女が、迎えられると思えない。
だからこそニオについていく。
「雪花ちゃん?」
ニオはそう言って振り返る。
「どうした?」
「なんでついてくるの?」
追いかけてくる私を不思議そうに見つめる。
私はその問いに、正直に答えることにする。
「実は村を目指していたわけじゃないんだ」
「え?でもさっきは……」
先程の会話との違いにニオは困惑していた。
「先ほどの森で私は迷ってしまっていたんだ」
「そうなの……?」
少し事情を感じ取ったのか、立ち止まった。
「だから……その………」
「だから?」
私はこのチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「ニオの家についていっていいか?」
「え……?」
本心をさらけ出してしまった。
だがこれしかなかっただろう。
その問いにニオはこう返す。
「いいよ!」
「いいのか?」
「でもママとパパがいいって言ったらだからね」
何とか成功したようで、私は少しほっとした。
「ありがとうニオ」
ニオの目を見つめ、そう感謝を伝える。
迷惑だけは掛けない、そう決心を固めていると。
ニオは突然足を止めた。
「雪花ちゃん!ここが家だよ」
どうやらここがニオの家だったようだ。
木で作られて二階建ての家。
この木はきっと森からとってきたものなのだろう。
「じゃあ入るね、ちょっと許可取ってくるから待っててね」
そう言いニオは戸を開け、家の中へと入っていく。
私はその場に座り、ニオが戻ってくるまで、今までのことを整理することにした。
とりあえず、体の異変について。
私はあの時銃を撃たれた。
その証拠に太ももには服を突き抜けた後がある。
だが、血も垂れていなければ、傷すらない。
そのうえ腹を殴られても、気絶しない。
息をしなくても大丈夫な体になったせいだろうが。
理論が解っていても、気持ち悪い。
深く考え込んでいると、家の中からとても大きな声が聞こえてくる。
急に自分より年齢も身長も大きな子を家に泊めさせていいなんて聞かれたら。
まあ当然だ。
だが少し気になり、私は戸に耳を当てた。
そこから聞こえてきたのは。
「ニオ、あんた黙ってどこか行っちゃうの!?」
「い、いや全然大丈夫だよ!ほらこうして帰ってこれてる」
ニオの母親の怒号、多分日も暮れているから、そのせいだろう。
そう思った次の瞬間。
ニオの母親の口から、衝撃の言葉が飛び出す。
「本当に心配したんだよ、森に入って4日も帰ってこないから!」
とそんな言葉が。




