鋼鉄天使 3
突然。
レーダーに光点が映る。十や二十では収まらず、更に増えていく。
敵!
精神よりも早く肉体が反応する。目が機器類の正常灯を確認し、対空ミサイル(Anti-Air Missile)と装弾数を確かめる。
『進路変更、13時2分、高度6,500mまで降りる。速度M1.5に保て』
隊長機からの指示に従い、隊形を保ったまま敵部隊へと機首を向ける。
光点が近づく。敵もこちらを見つけた時分だろう。まだ見えはしないが、敵意だけはビンビン伝わってくる。
成層圏とはまた違った大気圏の青。その中に、銀の光点?
『敵機、視認っ』
誰かが言った。俺も必死で目を凝らす。――あの特徴あるシルエットは。
「畜生、エイだっ」
STINGRAY。その名のとおり、妙に平べったい戦闘機で、味方の被害の半分以上がこいつらのせいだ。ヒラメだとかコーヒー皿だとか呼びたいところだが(エイってなんか格好良過ぎ)、機体には確かに“STINGRAY”と書いてある。
そのあたりについては文句も言えないわけだが。動きがブーメランみたいで非常にしつこく、飛行コースの判断が難しい。こっちのF59を上回る機動性は充分脅威で、ようやく補充された新兵連中なんざあっさり喰われてしまう。名前も外見もだが、可愛げの微塵もない奴等だ。
可愛げの微塵もない、と言っても。
コクピットでひとり苦笑する。
可愛ければいいというものじゃないし、可愛かろうと如何しようと相手が手、緩めてくれるわけでなし。
その、敵は。STINGRAYが6機、BF301は15機、GADFRYは30と……3機。
「計54機」
9番機のシドが数えた。6個分隊、96機出撃したが、早々に分隊毎に別行動に入っている。だからこの空域に居る味方は俺達第18分隊16機きり。対して敵は54機――3倍以上。
口の端が自然に上がる。
そう、僅か3倍。
『散開させるな、かたまっているうちに叩け!』
隊長の声を聞きながら、俺も唇を湿した。そして待つ、たった一言を。
『撃ー!』
右手の親指がためらいもなくボタンを押し込んだ。白く軌跡を引きながら、何十本ものミサイルが飛んでいく。それを目で追う暇もなく隊長の声が畳み掛ける。
『散開――攻撃!』
ああ――今、だ。
思い起こすと、一寸びっくり。
これ書いてるとき、未だ湾岸前だったんだ・・・




