表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/45

第29話:挿絵、地形図あり

連合王国首都防衛戦(れんごうおうこくしゅとぼうえいせん)


 連合王国首都防衛戦は帝国歴千八十七年〜千八十九年に帝国軍と連合王国との間で行われた合戦である。この戦いは、同年四月に行われた帝国軍によるマーガトロイド公爵領征伐に端を発する関連戦役であるが、マーガトロイド公爵家の滅亡と第一次ガング城の戦いとは区別して記述する。この戦いは帝国軍の外征軍団に重大な打撃をもたらし、帝国は征伐戦略の抜本的な見直しを強いられた。また、連合王国初代朝廷はこの勝利により得た名声と影響力により、強烈な中央集権化を果たした。



戦争:連合王国首都を巡る帝国と連合王国による衝突

年月日:1087年〜1088年

場所:連合王国首都近郊の要塞

結果:帝国遠征軍は兵力七万の内五万を喪失。連合王国が帝国に対して領土防衛に成功。



交戦勢力

・帝国

・連合王国


指導者・指揮官

■帝国

ユアン・シャーリー

ティアン・フェーン

ルーブル

エドウィン・サントス

ティスター・ゴーン

コージー

チャーリー

■連合王国

クリストフ・リヒター

ヴォルフガング・リヒター

モーリー・ベルモンド

カーティス・メイヤー

シリウス・メイヤー

セレナ・シュタイナー


戦力

■帝国:七万

■連合王国:一万五千


損害

■帝国:五万(捕虜二万を含む)

■連合王国:二百



概要


帝国による援軍派兵

 千八十七年九月、反乱平定の為に帝国軍が第二次征伐軍を組織し、七万の兵を率いて第一次征伐軍の援軍として進発した。しかし、第一次征伐軍は同年11月に当時のリヒター子爵家、シュタイナー伯爵家連合軍の逆撃を受けて壊滅しており、第二次征伐軍の目的は文字通り第一次征伐軍の救援となった。


連合王国樹立と防衛戦準備

 十一月、第一次征伐軍を撃退したリヒター子爵家、シュタイナー伯爵家連合軍は旧マーガトロイド公爵領を帝国の臨時占領行政府から解放して、公爵家唯一の生き残りであるレアンドラ・フォン・マーガトロイドを国家元首とし、三家によるマーガトシュタイリヒター連合王国を樹立した。そして、初代宰相のヴォルフガング・リヒターは尚書令と外務尚書も兼任する事で事実上の独裁体制を構築し、新国家樹立と防衛戦準備、三万人の捕虜受け入れを並行して進めた。彼は首都近郊の要塞を防衛戦の舞台に選び、近くの丘に砦を築いて出城とし、水攻めの為の堤を山中の川と湖に築いた。これらの工事は連合王国のほぼ全軍と獲得した捕虜、戦争避難民とを動員した、当時としては最大規模の公共事業だった。


帝国の進軍

 11月中旬、第二次征伐軍を率いるユアン・シャーリー将軍は連合王国軍による徹底的な焦土作戦と遅滞戦闘に苦しめられていた。元公爵領の軍事拠点や村落は徹底的に破壊されており、井戸には例外なく毒が仕込まれていたという。シャーリー将軍は、山中に潜んだ連合王国軍のゲリラ部隊の奇襲攻撃に加えて、冬季の寒さへの対応をも強いられる事となっていた。これに対し、彼は物資集積拠点や途上の集落を修復し、山中の村落を砦化して駐屯兵を置き、連合王国ゲリラ兵の拠点を制限する事で堅実に進軍していった。従軍していたルーブル将軍はこの進軍を亀のようだと批判したと言われているが、シャーリー将軍は翌年一月には連合王国王都近郊に着陣しており、その堅実かつ迅速な行軍はむしろ脅威的と言えるだろう。後にヴォルフガングは彼に対して、後方錯乱等のゲリラ戦術に大きく制限を受けたと語って高く評価をしている。


挿絵(By みてみん)

資料1.当時描かれた焦土と化した村落。


宰相ヴォルフガングの狙いと行動

 彼は帝国軍の外征機能を破壊する事を目的としていたと言う。当時から「未来を見通す化け物」と称された彼をして、この短期間に大規模方面軍に対して二度も防衛戦を展開した事について、想定していた中でも最悪のケースだったと語っている。ただし、この機会に方面軍勢を二つ破壊すれば長期間の安全が確保出来るとして、防衛計画を立案して実行した。その最終局面では王城から脱走して、最前線に赴いて戦闘指揮を執っていた。あろうことか、彼は山中のゲリラ部隊を率いて偵察まで行っていたという。


挿絵(By みてみん)

資料2.当時の地形図。北側から本城、カーティス・メイヤーが守っていた出城とシリウス・メイヤーが守っていた出城。この回廊上地形に帝国軍は北東から侵入した。


戦闘の詳細


首都近郊の要塞攻防戦

 一月初旬、帝国軍が連合王国首都近郊の要塞に至ると、連合王国の出城は既に完成していた。出城は土塁、木の柵に覆われ、堀には水まで引かれた強固な要塞群として帝国軍に立ちはだかっていた。そして、ここでもシャーリー将軍は拙速な城攻めを行わず、本陣設営と攻城兵器の準備から始めた。

 そして攻城戦開戦初日、井闌や投石機の組み立てを終えた帝国軍は城攻めを開始し、まずは連合王国のカーティス・メイヤー大将が守将を務める南側の出城に攻めかかった。しかし、この拠点にも据え置き型の投石機が配備されており、帝国軍の攻城兵器が出城を射程距離に捉える前に投石攻撃を受け、散々に破壊された。歩兵による攻撃も行われたが、配備されたバリスタにより盾が破られ、堀を埋める事は叶わなかった。

 シャーリー将軍はその日のうちに攻城兵器による攻撃を一時中止し、包囲陣地の構築を始めた。本城と出城の間に陣を構えて、連合王国の連絡補給路遮断を試みたのである。しかし、それすらも阻まれる事になった。ヴォルフガングによる城壁上からの長距離狙撃である。彼我の距離は五百メートルにも及んでいたが、あろう事か彼はその狙撃を幾度も成功させたと言う。それを受けて、遂にシャーリー将軍は初日の攻城を停止して陣に引き上げた。

 城攻め二日目。帝国軍は包囲陣地構築の為の物資搬入路を兼ねる塹壕を掘り始めた。実際にはこれは囮であり、塹壕を掘る工兵の妨害に出てきた連合王国軍を、伏兵として配置したルーブル将軍率いる精鋭騎兵が粉砕するという作戦であった。これは第一次征伐軍から引き続き参謀として従軍していたスヴェン皇子の献策によるもので、前回戦役を勝利に導いたヴォルフガングが(冬とは言え)無策に籠城するとは考えにくい為、連合王国軍の反応を観察する事も目的としていた。実際に、帝国軍は本城に二万は籠っていると見立てていたが、実は五千しか籠っておらず、残りは水攻めの準備の為に工兵として出撃していた。連合王国軍は擬兵の計(実態より兵力を多く見せかける策略)が露見しない程度には出撃せざるを得ず、攻撃隊として騎兵を編成して攻撃を仕掛ける事になる。

 なお、この時帝国軍が何かの気まぐれで本城に総攻めしていたら、呆気なく陥落していただろうと後にリヒター元帥が語っている。


人外の一騎討ち

 塹壕を掘る帝国軍工兵に対して、連合王国軍弓騎兵による攻撃が仕掛けられた。ヒットアンドアウェイが繰り返す弓騎兵に対して、伏兵として配されたルーブル将軍率いる精鋭騎兵が猛然と襲いかかった。連合王国の弓騎兵は撤退したが、精鋭からさらに選抜された一千の騎兵を率いながら、ルーブル将軍はそれを置き去りにして猛烈な速度で斬り込んだという。その闘いぶりは凄まじく、ただ一騎で複数人を相手取り蹂躙していたと言う。そして、それを城壁上から見たヴォルフガングもまた出撃を決意し、麾下の重装弓騎兵一千を率いて出撃した。

 そして彼もまた麾下の騎兵を置き去りにしながらルーブルに斬り掛かり、一騎討ちが始まった。その打ち合いは数十合にも及び、双方とも一歩も引かずに長大な武器で打ち合う有様は人外の一騎討ちと呼ばれた。目撃した兵士たちは口を揃えて、彼らを化け物と称した。


決着の刻、水攻め

 人外の一騎討ちは勝者を決めないまま決着した。その刻、水攻めの準備を終えた山中の連合王国工兵が狼煙を上げ、別な山中からも狼煙が(どちらかが規定の水量を溜め切った時に、もう片方の堤が水攻めが可能な量を溜めていた場合に上げる手筈だった)上がり、水攻めの準備完了を告げた。本城で指揮を摂っていたリヒター元帥はすぐさまこれに応えて狼煙を五本上げて水攻め開始を伝達し、合図の角笛を吹かせて戦場に知らせた。


迅速な撤退

 ルーブル将軍はこの狼煙と角笛の合図から何かを察して即座に撤退した。帝国軍本陣でもスヴェン皇子が撤退を進言したが、即座に受け入れられる事はなかった。しかし、血相を変えて撤退してきたルーブル将軍がスヴェン皇子を連れて逃げ、遠目に濁流が迫っている事を報告されたシャーリー将軍もまた少数の騎兵と共に撤退した。しかしながら、後方を脅かしていた連合王国ゲリラ兵とヴォルフガング率いる船団に補足され、シャーリー将軍は捕虜となった。この時の水攻めで帝国軍三万の兵士が犠牲になり、二万人が捕虜として囚われた。


戦後の影響

 この敗北を受けて、時の皇帝パウロ21世は直接責任を追及されなかったものの、その求心力を大きく減らす事となった。この後に皇太子争いを制したカエサル皇子の立太子から皇帝即位に至るまで、パウロ21世は政治的に苦しい立場となった。

 また、名門であるシャーリー公爵家のユアン将軍もまた、その嫡流のスイレンと後継者争いをしていたが、この敗北により厳しい立場となり__

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ