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妖精さん暗黒部署物語①

部屋の扉が勢いよく開く。黄色の服を着た妖精が飛び込んで来る。

「急ぎの案件が来たぞ!」

「急ぎ? 納期は?」

水色の服を着た妖精が問う。

「一週間後の正午だ」

「内容は?」

「それがちょっと厄介なのだが……」

「時間が無いんだから早く言ってくれ」

「賢人のかけた魔法の解除だ」

一瞬、あたりは静かになる。

「お前さ、それを一週間後の正午までってさあ、ウケない冗談は止めてくれるかな? 賢人の魔法の解呪ってさ、一人月以上は見てほしい案件だよね?」

「ごめん。マジです。お願いします」


黄色の服を着たのは営業部門の妖精だ。彼は人間の世界に行き、魔法に関わる仕事を取ってくるのが役目だ。営業の仕事はお客さんと技術者との板挟みだ。精神をすり減らす。

今回の仕事は特に難易度が高いのに期間が短いのだ。技術者が文句を言うのは分かりきっている。

水色の服を着たのは技術部門の妖精である。彼は魔法陣作成の責任者で営業が持ち込んだ案件をこなしていくのだが……


「今回の仕事は賢人ザラ様の依頼なんです。ザラ様自らがしっかりとした要件定義書を作成してくれてます。あの人の仕事は絶対に落とせません。申し訳ないですが、最優先にお願いします」

「あのな、その「ザラ様」って人以外の仕事を全て無くしても間に合うわけないだろう! 君がどんなにお願いしても1日の長さは変わらないんだよ? 手持ちの案件でメンバー達は疲弊してるんだよ。あいつなんて3日も家に帰ってない。隣の奴は一週間だ。ちなみに俺はもうすぐ一カ月になる。それなのにまだ頑張らせようってのか?」

「本当に申し訳ありません! これ、差し入れです!」

そう言って営業はたくさんの瓶の入った箱と要件定義書を渡す。

「特SSランクの栄養ポーションです。申し訳ありませんがこれで乗り切ってくださーい!」

営業は返事を聞く間もなく大慌てで部屋を出ていった。


残された技術者たち……

机の上のポーションをじっと見つめる。


「これ飲むとその時は元気になった気がするんですけど後でドバーって倍以上の疲れがくるんですよね。ま、もらっておきますけど」

瓶を開けて飲み始める。


ここは技術者という名の戦士たちが案件という名の敵と戦う場所なのだ。


難易度の高い魔法陣が使用出来るのは、魔法院地下の扉から繋がる世界にいる妖精さんたちが我が身を削って作ってくれているからなのだ。

だが、その事を知る人間はいない。


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