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エピローグ ~その後のねいね~


……

………


こうして長いロボバト大会は終わった。



同好会メンバーはこの後

お祝いとして飲みに行くらしいが

知奈はもう一つ大イベントが残っている。


それは八月朔日・パトラクシェの

最後の配信をアーカイブで見る事だ。


皆はその事情を知っているので

片付け等全て他のメンバーで行い、

知奈がすぐ帰れるよう手配してくれた。


「よーし、皆集まれ!」


今から帰る知奈を見送ろうと

戸坂会長は同好会メンバーを集めた。


「さぁ、ロボットアニメ同好会を

 優勝に導いた我らが天使に万歳三唱だ!」



『バンザーイ!

 バンザーイ!

 バンザーイ!』



「え……えぇっ!?」


いきなりの万歳三唱に戸惑いながらも

知奈はありがとうございましたと頭を下げた。


鳴り響く拍手の中、内海と会長が

知奈に話しかける。


「本当に最高のロボバトでしたw

 ねいねさんありがとうございました」


「知奈、俺の話を聞いて良かっただろ!」


「は、はいっ!」


色々無理難題を吹っ掛けながらも

なんやかんやでそれを乗り越えていく。

この二人はいつもこうなのだ。


本当に困った凄い二人だ。



「ところで次回のロボバトは何を作りましょう

 前回優勝枠で間違いなく出れますよ?w」


「えっ……?」


「そりゃあ、次は合体変形だろ

 ロボアニメの鉄板ではないか!」


「飛行ユニット搭載一択でしょ!」


「しかも脳波コントロール出来る

 サブユニットも搭載しましょうw」


「う、内海さん、それは流石に……」



いつしか知奈の事をそっちのけで

ロボネタでワイワイ盛り上がる同好会。


その光景を見て知奈はほほ笑む。  


そう、趣味に全力な彼らだからこそ

私は最後まで頑張る事が出来たんだと

知奈は改めて思った。



「それじゃ、私達行きますね

 ありがとうございましたー!」


……

………



その後、知奈はみぅと一緒にタクシーに乗り、

今日あった事について色々雑談していたが

だんだん家に近づくにつれて少しずつ

八月朔日・パトラクシェの事を考えてしまう。


おそらくそれが顔に出ていたのだろう。

みぅは知奈の顔覗き込むようにして喋りかけてきた。


「ねいねちゃん……」

「ん?」


「残念だったね。配信が見れなくて」


それを聞いた知奈は首を大きく振った。


「ううん。確かに最後の配信を

 リアルタイムで見る事は出来なかったけど、

 ほづみ君からそれ以上のモノを貰えたんだもん。

 これで文句言ったらバチが当たるよ!」


タクシーは知奈の家の前に止まった。

降りようとする知奈を寂し気な表情で見ている

みぅに知奈は話しかける。


「みぅ」

「何?ねいねちゃん」


「本当に今日までありがとう。

 みぅが一緒じゃなかったらこのロボバトも

 つまらなくて途中で辞めたかもしれない。

 みぅと一緒に入れて楽しかったし嬉しかった」


「ねいねちゃ……」


みぅは思わず涙声になってしまう。


「泣かないのっw またお店でね!

 その時に店長も一緒にいっぱいおしゃべりしましょう!

 じゃあね!おやすみなさい!」


「うんっ!おやすみなさい!」


そう言って知奈とみぅは別れた。


……

………



「ただいまー」


知奈は自分の部屋に入ると

真っ先にPCの電源を入れて

八月朔日のチャンネルページに飛んだ。


これは仕事から帰ったらいつもやっている事。

しかし、これも今日で最後なのだ。


今日は配信予定ではなくページ左上にある

最新のアーカイブ動画をクリックする。


当然、配信コメントやスパチャを

投げる事は出来ないが、その代わり

心の中で”ありがとう”という言葉を呟きながら。


「……ん?」


待機ムービーがいつもと違う。


いつもの液体の中で髪を揺らしながら

眠り続ける待機ムービではなく、

無機質な育成ポッド用の調整画面。


CONNEXION…OK

Start system monitor and backup.

Outside air introduction control system


とても最終回とは思えない

新しい何かが動き出すような演出。


「な、なによこれ……」


そして待機ムービーがフェードアウトして

いつもの八月朔日・パトラクシェが登場する。


「こんばんはサンプルさん。

 今日はここでの最後の配信になるから

 いっぱい話したいな。よろしくね」


という挨拶の後、更に話は続いた。


「あ、最後に重大告知ムービーがあるから

 是非見て欲しいな」


待機場の特殊ムービーの事もあり

コメント欄がざわつく。


あの待機画面は何だったのか。

そして重大告知ムービーとは何なのか。


ただ一つわかる事はこれは

”普通の”最後の配信では無い。



― 私、ドキドキが止まらないよ ―



知奈はネタバレを回避する為に

ネットは最大限シャットアウトしているから

これから起きる事を知らない。



……

………


それから20分程経過しているが、

配信内容自体はいつもの雑談配信だ。


今までの思い出話は最近の配信で

たくさん話しているとはいえ、

ここまで自然体な雑談だとは思わなかった。


人にとっては拍子抜けにも

焦らしにも見えるだろうが

知奈にとっては最高の配信だった。


そして、ロボバト決勝戦が始まる頃、

八月朔日はロボバトの話題を切り出した。


「あ。そろそろロボバト決勝戦が始まるね」


その言葉に反応してコメント欄は

ロボバト、そしてねいねの事について

盛り上がっている。


「……///」


こうやってコメントが流れるのを見て

思わず知奈は赤面してしまう。


「……もし、サンプルさん達が良いのなら

 少しだけ決勝戦の実況したいけどいいかな」


これまでの配信、そしてTVでの

応援メッセージを通して八月朔日が

ねいね推しだという事はサンプルは

みんな知っている。


大多数のサンプルはOKを出した。


八月朔日は趣味に全力な人造人間なのを

知っているからこその返事なのだろう。


「うそ……ありがとう……」


知奈は半泣きになりながら

みんなにお礼の言葉をつぶやいた。


「皆さんありがとう」


と言って八月朔日は突発の

ロボバト実況配信を始めた。


……

………


それからの10分弱、

”ねいね”にとって幸せの時間だった。


知奈の涙が止まらない。


配信にはTVの画面は音は乗せられない。

しかし、ほづみ君の実況や流れる

コメントでどのシーンか容易に思い出せる。


ピンチになった時の頑張れコール。

そして最後の大逆転の時の盛り上がり。


この実況を聞いて改めて全力で頑張った事、

そして勝てて良かったと

”ねいね”は心から思った。


………

……


実況が終わり、配信は元の雑談タイムに戻った。


知奈は放心状態になりそうになりながらも

最後の配信だからと必死に集中して見続ける。

ほづみ君の全てを見逃さない為に。



楽しくて、幸せで、かけがえのない時間。



しかし、それは永遠に続かないと告げるように

ピピピピ…ピピピピ…という音が流れ、

それに合わせて八月朔日の周りにある

無数の機械が作動し始めた。



「ようやくプログラムの準備が出来たみたいだね」



八月朔日は嬉しいような、そして少し

寂しいような声で喋りはじめた。



「今、起動させてるのはラストプログラム。

 僕が外界に出る為の最終調整」


「これから数週間、もしくは数ヵ月間

 僕はポッドで眠り続ける」


「今度目が覚める時は皮膚の定着も

 外界への適応も完了しているだろう」


「サンプルさんから頂いた沢山の外界の知識と

 楽しい思い出を胸に僕は新しい世界へ旅立つんだ」


ついにお別れの時間がやってきてしまった。


コメント欄は”今までありがとう!”

”行かないで!” という書き込みで溢れている。


「ほづみ君……!」


知奈もその光景を見ながら

泣きそうな声で呟く。


ついに画面上部にカウントダウンの表示が現れた。


「これはしばしの別れだからね。

 サンプルさんとはまた再会出来るから

 その時はまたよろしくね」


刻一刻と時間がカウントされる中

八月朔日は優しい笑みを見せ続けている。


「本当に皆さん今までありがとうございました」


「ほづみ君こそありがとう!」


「みんな、またね!」



ついにカウントが0になり、

画面が黒くフェードアウトしていく。


「ほづみ君……!」


そしてそのまま告知されていた

スペシャルムービーが流れる。


今までの配信ダイジェストが流れ、

それを思い出しながら寝ている

八月蒴日・パトラクシェが映し出される。


今までの待機画面では無表情だった顔が

とても幸せそうな顔になっている。


知奈はその顔を見てとても嬉しくなった。


「ありがとう……」


そして、スペシャルムービーの最後、

開始時と同じ育成ポッド用の調整画面となり、

そこに信じられないモノがうっすらと映りだされた。


「えっ!?」


それを見た知奈は思わず大声を出した。


それはVTuberファンどころか

一般のオタクでも知っているロゴマーク。



「スタジオトゥースリー……」



スタジオトゥースリー。

それは最近一部上場した

世界最大のVTuber運営会社であり、

150名を超える所属VTuberが

各種プラットフォームにて活動している。



『スタジオトゥースリー!?』

『ちょっとこれどういう事!?』

『えええええええええっ!!!!』



コメント欄も大騒ぎになっている。


ロゴが映ったのはわずか数秒間。

そのまま画面がフェードアウトして

配信は終了してしまった。


「ちょ、ちょっと待ってよ!」


知奈はすぐにスタジオトゥースリーのHPや

Twitter等のSNSで情報を集めた。


当然八月蒴日のTwitterは更新は無いものの

もう一方のスタジオトゥースリーの方から

”匂わせ”の様なコメントが発表されていた。


今日の配信を考察していた者も多いが

結論は殆どの人が同じだった。



― スタジオトゥースリーへの移籍 ―



転生の可能性もあるが、

その場合は隠すのが一般的だから

今回は移籍で間違いないだろう。


個人勢から企業Vになるのは普通にある事。

もっとも外見そのままでの移籍は少し珍しいが

無い事は無く、スタジオトゥースリーでも

過去に2人その流れでデビューしている。


「つまり、またほづみ君に会う事が出来る!」


知奈はそう確信した。

ほづみ君が前の配信で言っていた。


『大丈夫です。僕はあなたを

 悲しませるような事はしません』


という言葉は本当だったのだ。


「あはっ。あはははははっ!」


知奈は楽しくて、そして嬉しくて

声を出して笑った。笑い続けた。


そして、今までの事、

これからの事に思いを馳せる。



今日という日、ううん。

ロボバトが始まってから

本当に色々な事があった。


泣いたり、笑ったり。

時には怒ったり、悩んだり。

なんやかんや大変だった。


でも、ほづみ君やみんなの応援が

あったからこそ最後まで頑張って

皆にとって最高の思い出が出来た。


今の私がいるのは皆のおかげ。

そして私はまだまだ走れる。飛べる。


これからの事はわからないけど、

もし来年のロボバトに出場するのなら

私は全力で頑張るし、それ相応の

結果も残せると確信している。


ほづみ君、そしてみんなが

私を応援してくれるなら!


だからね?ほづみ君……



「これからもねいねの事を見ててね。

 あなたの為に高く、高く羽ばたくから!」



知奈はそう言うと「おーっ!」と

天に向かって両手を高らかに上げた。




----- 完 -----


推しVロボ EDソング 「ディスプレイの外のあなたへ」

挿絵(By みてみん)

↑動画ページは上画像、もしくはリンクをクリックして

 移動先のURLからYouTubeへ飛べます


なお、YouTubeアドレスはこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=KpsU-y9bFqo


推しVロボを最後まで読んで頂いて

ありがとうございました!


過去作は全て完成後に一斉投稿する

短編小説でしたが、推しVロボはほぼ

書き溜め無しの週1更新になりました。


1回の遅延も無く投稿を続けて

中編小説として完結まで持っていけたのは

皆様のおかげです。ありがとうございます。


感想やブックマーク、

評価等を頂けるととても報われます。

是非よろしくお願いします。


少し毛色は違いますが他作品も

読んで頂けたら幸いです。


https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/2404046/


それでは本当にありがとうございました!

また新作でお会いしましょう。


TEKKON

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