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再会?と遭遇8

はい、続きです。

 目覚めると、そこには知らない天井が広がっていた。白い天井、白いカーテン、白いベッド。俺は病院のベッドに寝かされていた。


 病院の医師の話によると、俺たちは派遣された救急隊員によって救助され、G市内にあるG病院に搬送されたらしい。

 俺は打撲と衰弱、特に衰弱の方が酷かったらしいが、点滴をして安静にしていれば三、四日ほどで退院できるそうだ。打撲は思ったよりも軽傷だったようだが、いくつかの検査は受けないといけないらしい。

 三郎と雅治は、俺よりも症状が軽かったようだ。まあ、トンネル内を徘徊していただけだからかもしれないが、納得できない。なぜ俺の方が重症なんだ。

 そして三葉に関してだが、彼女は俺たちの中で一番はじめにあのトンネル内に囚われていたのだが、なぜか俺よりも症状が軽かった。

 やはりヤツに直接生気を吸い取られた俺の方が、症状が重かったのかもしれない。

 とはいえ、三人共二、三日の入院は必要らしい。


 結局、どういう経緯で今回の騒動が起こったのだろう?

 聴取に来た警官の話によると、三葉は親戚の家に行った帰りに行方不明になったそうだ。親戚の家というのが、Oロードを通った先にあり、先方からはもう帰ったと家に連絡があったそうだ。だから警察は、その間にあるOロード付近が怪しいと踏んだようだ。

 しかし、三葉はOロードではなく近道であるHトンネルを通り、ヤツの恨みに巻き込まれてしまったようだ。

 三郎と雅治についてだが、Oロードには行方不明になった生徒(三葉)の手掛かりがなかったから、少し離れたところにあるHトンネルへ足を伸ばしたそうだ。そして、Hトンネルの中に入り巻き込まれたようだ。

 しかし、三人共中での事はあまり覚えていないという。

 これも警官の話なのだが、どうもHトンネル内に有毒なガスが溜まっていたらしい。車の排ガスではなく、発生源も特定できたそうだ。トンネル内の一部の壁が崩れていて、その奥に休憩所のような部屋があり、そこが発生源だったらしい。つまり、彼が亡くなっていた部屋だ。最近頻発していた地震によって壁が崩れたらしいが、あのトンネルを使う者が少なかったことが発見の遅れに繋がったようだ。その部屋には幻覚や記憶障害を引き起すとされる毒キノコが木製の机や椅子に生息していて、それが腐敗し発生したガスがトンネル内に流れ出て、三郎たちに軽い記憶障害と幻覚を引き起こしたと考えられる、と言っていた。

 外での一日がトンネル内では五日って、どこの「精神と時の部屋」だよ、と突っ込みたくなったが、それなら納得できる。

 すべては偶然が引き起こしたもので、その偶然に三葉たちは巻き込まれたのだ。

 まさか誤魔化すために適当に言ったガス説が本当に起こっていたとは驚きだ。

 これらの話を聞き、警察には同じように話した。「あまり覚えていません」と。

 記憶障害の原因は有毒ガスなのかもしれないが、幻覚の原因は……。でも、そんなことは言えない。【黒い靄】とか悪霊とか祓い屋だなんて、妙なことを言えば頭がおかしいと思われるか、まだ毒が抜け切れていないのでは? と思われかねない。その所為で入院が長引くなんて願い下げだ。


ボフッ


 俺は程よく硬いベッドに倒れ込み、見慣れてきた天井を見上げた。


「結局、あれは何だったんだろう?」

『だねぇ。でも、みんな無事でよかったよ』

「そうだな…………へ?」


 この声は紛れもなく彼女の―――

 俺はガバッと身体を起こし、声のした方へ振り返った。

 彼女の『うわっ!?』という声が聞こえたが、そんなことはどうでもいい。

 目の前に、椅子に腰かけた彼女の姿があった。俺の反応に驚いているようで、その瞳は大きく見開かれ真っ直ぐに俺を見つめている。後ろで束ねた髪がゆらゆらと揺れ、可愛らしい唇はポカンと開き、声を発することを忘れているようだ。


「先輩。どうしてここに? だって先輩は……。」

『なに?』


 先輩はなぜか不満顔だった。いや、今はそれどころではない。


「先輩、あの人たちについて行かなかったんですか?」

『え? どうして?』


 先輩は本当にわからないといった表情で首を傾げている。


「いや、だって先輩、成仏したいんですよね? あの人たちなら先輩を成仏させられたんじゃないですか?」

『え? ……あ―――!? その手があった!?』


 先輩は頭を抱えてこれ以上ない程後悔している。そこまで考えが至らなかったのだろうか。

 と思ったが、俺の顔を見てニヤリと笑った。


『なんてね。成仏はしたいけど、倒れてる勇人君を置いてなんていけないよ』

「そうですか。なんかすいません、俺の所為で……」

『あ、ううん違う違う。勇人君の所為とかじゃないよ。私が決めたことだから』

「決めたって何をですか?」

『決まってるじゃない。自分で成仏するってことよ』

「いや、それができないから困ってたんですよね?」

『まあ、そうだけど、私一人じゃなくて勇人君と一緒ならできそうな気がするのよ』

「そんな根拠のない理由で……」

『いいじゃない別に、あんなよくわからない人について行くより、勇人君の方がよっぽど信頼できるもん。それに、勇人君を一人にするのも心配なのよね』

「心配って、やっぱり頼りないって思ってるじゃないですか!?」

『いや、そうじゃなくて、なんか勇人君いろいろと巻き込まれそうじゃない? 今回の事もそうだけど、駅でも巻き込まれてたじゃない? あの人も言ってたけど、あまり変なことに首を突っ込むと、本当に私と一緒に成仏することになっちゃうよ?』

「嫌な事言いますね」

『だ・か・ら、そうならないようにしばらく私が勇人君の側にいようと、じゃなくて、監視しようと思ったの』

「は?」

『まあ、私が成仏するまでの間だけどね』


 何を言ってるんだこの人は。


「それって、ずっと側にいるってことですか? 四六時中?」

『うん、そうだよ』

「そうだよって、軽いなぁ」

『え? ダメなの?』

「いや、ダメというかずっと一緒って言うのは、ちょっと……」


 年頃の男子としては、四六時中女の子(幽霊だけど)と一緒にいるというのは精神衛生上問題があるというかなんと言うか……。


『ああ、勇人君も男の子だもんね。大丈夫、エッチな本とか見たくなったら席外すし、好きにしちゃってていいから』

「なっ!? 何言ってるんですか! そ、そんな本ありませんよ!」

『またまたぁ、ベッドの下に隠してあるでしょ?』


 なぜそれを!? いや、きっとカマを掛けているに違いない。先輩が知っているはずがないんだから。

 とにかく、矛先を逸らさないと。


「そんな話はどうでもいいんです! そうじゃなくてですね、ずっと女の子と一緒っていうのは昼も夜もでしょ? 昼はともかく夜は……」

『え? あ、ああ、そう言う事? コホン、大丈夫、勇人君は私を襲ったりしないから。ていうか襲えないから』

「それはチキンという事でしょうか」

『それもあるけど……』

「あるんですね……」

『あ、いや、違う違う! そうじゃなくてね、勇人君は女の子が嫌がるようなことはしないってわかってるからよ。うん』


 そんな取って付けたようにフォローされてもなぁ。それに、男のあれは理性では制御できない暴走機関車となり果てることもある。自制できなくなることがあるかもしれない。その覚悟があるのだろうか? ……いや、しないよ? しないけど一応ね……。


『それに、私幽霊じゃない?』

「ん? 幽霊だから俺には触れられないって言いたいんですか? でも、トンネルでは触れられましたよね?」

『え? あ……うん』


 あの時確かに先輩に触れられた。理由はわからないど腕を掴めたし、それに……。

 余計なことを思い出してしまった。なんだか気まずいな。

 先輩もその時の事を思い出したのか、顔を真っ赤にしている。更に気まずくなってしまったぞ。


「えっと、だから、必ずしも安全というわけでもないのではないかと……」


 なんだこの口調は。動揺してるのか?

 先輩は気持ちを切り替えるように一つ咳ばらいをした。


『コホン、えっとね。たぶんそれは、あのトンネル内が特殊だったからよ。試しに触れてみて』


 先輩はそう言うと、ヒラヒラと手を差し出した。

 細くて綺麗な手だ。握りたい衝動に駆られる。


『ほれほれ、遠慮せずにガシッと』

「ガシッとって……じゃあ、失礼して」


 俺はおずおずと手を伸ばした。


 スカッ

「え?」

 スカスカッ


 俺の手は見事なまでに先輩の手をすり抜けていた。


「……なんで?」


 握れない。もとい触れられない。どういうことだ? トンネル内では確かに触られたのに、それなのに今はまったく触れられない。先輩の言う通りあそこが特殊な空間だったからか? 確かにあそこは「結界」なんて不可思議なものが張られていた。信じられない話だが、それが原因なのか?


『ふふん、言った通りでしょ?』


 先輩は『えっへん』と口にしそうなほど胸を張っている。

 余程胸を強調したいのか、これでもかという程身体を反らしている。その所為で、腰がグラビアアイドル並みに反っていた。

 ウエストからヒップにかけてのラインが色っぽく見えるが、これって結構辛い体勢のはず。そこまで胸を強調しなくてもいいでしょうに。残念ながら全く強調はされてないんだから……ん? それとも。

 俺はその控えめな胸に手を伸ばした。


スカッ


 残念、やはり触れられない。


『ちょっ、ちょっと! 触れないからってどこで試してるのよ!』

「あ、すいません。堂々と胸を張っていたのでてっきりいいのかと」

『そ、そんなわけないじゃない!』

「ですよね。すいません」

『まったく、油断も隙も無いんだから……と・に・か・く!! これからよろしくね!』

「は、はい! よろしくお願いします……」


 とてもよろしくと言っている語気ではないが、勢いに呑まれ了承してしまった。

 でもまあ、幽霊とはいえこんな綺麗な先輩となら、共同生活も悪くないのかもしれない。

 こうして、櫻木先輩(幽霊)との共同生活がスタートした。



 とはいえ、成仏の手掛かりのない今、それがいつまで続くかもわからない。一週間か、一か月か、もっと長いかもしれない。そんなことにすら考えがいかず、この時の俺は安易に了承していた。


幽霊と同棲? しかも実家でって。とはいえ、しばらく入院生活ですが。

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