反省
私は大国に産まれ何不自由なく育ってきた。兄が2人と姉が3人もいて1番下の私を皆可愛がってくれ大事に育ててもらった自覚はある。
「またどっかと戦争ですって。お父様好きよね。」
お父様達が他の国へ押し入ったりしていたが、どこか他人事でまた戦争してるんだーって思っていた。大国故に安全で相手国に対し早く降伏したらいいのにねって侍女達と話をしていた時もあった。
ある日廊下を歩いていると、お父様に会いにきたお客様の集団を遠くから見た。その中でも金髪碧眼で体格もスラッとしていてとても素敵な方がいた。私は昔読んだ絵本の王子様に憧れていたので気になった。
「格好良い。王子様みたい。あんな方が旦那様だったらいいのに。」
私は本当に軽い気持ちで呟いたのを侍女が聞き漏らさなかった。すぐに侍女から従者を通してお父様まで話がまわって、気付けば私の婚約者へとなっていた。お父様としては可愛い娘が望んだ相手と結婚してもらいたかったのだろう。
「隣国の第二王子みたいですね。」
「え?本当に王子様なの?絵本みたいに愛してくれるかしら?」
「可愛い姫様ならすぐに愛されますよ。」
嬉しい!早くお会いしたいわ。2週間後には会えると聞いて嬉しくて堪らなった。
「私も行くわ!迎えに行かなくっちゃ。」
迎えに行くと聞いて私も同行する事にした。私の旦那様だもの、もちろん迎えに行かないと!軽い気持ちでいたが敗戦国に行くため反感があるかも知れないから、気をつけるようにと家族や侍女達に言われた。大丈夫よ。きっとレオンハルト様が守ってくれるわ。可愛い私を見たら一目で恋に落ちるはずだもの。
「第二王子も可哀想にな…」
「本当ずっと仲良かったのに。」
道中の宿で不穏な話を聞いた。第二王子様には昔から仲が良い婚約者がいて大国の皇女が奪い取ったと。嘘よね?て同行してくれた侍女に聞くと、姫様が欲しいものは人の物でも何でも手に入りますよ。と笑っている。呆然としてしまう。
「私そんな…嘘よね?」
「戦争で結婚が伸びていたそうですよ。姫様良かったですね。」
違う!そんなの望んでない!噂をしていた人に詳しく聞くと、幼い頃からとても仲睦まじくお互いを想い合っていたと。私が2人の仲を切り裂いたんだ…。嬉しかった気持ちがどんどん萎んでいく。これから会うのが怖い。罵られるかもしれない。こんな私なんて愛してもらえない。
「出迎えありがとうございます。レオンハルト様はじめまして。マリアベルと申します。」
「ようこそいらっしゃいました。迎えに来て頂きありがとうございます。」
到着した私をレオンハルト様が出迎えてくれ私は少し驚いてしまった。目元にクマができていて最初見た時より痩せている。それでも優しく微笑んでくれる。
「こちらへどうぞ。」
レオンハルト様が私の手を取り中へ案内してくれる。両陛下がお待ちですと部屋に向かう。レオンハルト様のお父様と挨拶を交わし、聞きたい事があると言い人払いをしてもらった。レオンハルト様にも退室頂いた。
「この度はすいませんでした!レオンハルト様に婚約者が居たなんて知らなくて…」
私は両陛下にすぐさま頭を下げ謝る。婚約者との仲を裂いてしまって本当にすいませんでしたと。レオンハルト様にも直接謝りたいが、嫌われるのは怖い。けど知らなかったではすまされない。嘘でもいいから私に笑ってもらいたい。
「謝らないでください。レオンハルトは貴方様の婿になり幸せにする覚悟を決めています。マリアベル様はあの子を心から好いてくれているんだね?」
「はい!もちろんです。でもあんな人が旦那様なら良いなって言ったことを今とても後悔しています。まさか仲睦まじい婚約者がいて奪い取っていたなんて…」
「私達家族と前婚約者の願いはあの子の幸せです。今更いらないと言った所で、もう無かった事にはなりません。今回の事は大国で産まれたマリアベル様だからこそ、気をつけねばならない発言を今後に活かしていってください。レオンハルトを末永くよろしくお願いいたします。」
私は涙ながら頷き頭を下げる。その国にはその国の人達がいる。今まで他人事だったけど知らないうちに踏みにじっているかも知れない事があるんだと深く反省した。
「お待たせしました。」
レオンハルト様の元へ行くと、話は終わりましたか?と微笑んで聞いてくれる。もういつでも出発できますよって。
「私は一生かけて貴方様を幸せにしたいと思っています。これからよろしくお願いいたします。」
レオンハルト様が私の手取り、優しく笑い言ってくれた。2人で歩いて行くと馬車の前にご家族が集まっている。皆涙を出さないようにお別れを言っていた。私がいるから反感を買わないようにしているんだ。私は婚約者だけでなく家族をも奪い取った。何て愚かなのだろう。迎えに来るまでずっと自分の事だけ考えていた事実に驚愕してしまう。
「レオンハルト様私あちらに居ますね。」
ふと横を見ると少し離れた所に年配の夫婦がいて、寂しそうな目をしていた。レオンハルト様は近寄ってその方達から1輪の鈴蘭を受け取っている。一瞬悲しげな顔をし頭を下げ、大事そうに胸ポケットへ片付けた。
「マリアベル様お待たせしてすいません。」
「まだ時間あるから大丈夫よ。」
こちらを振り向く時にはそれを感じさせない表情をしていた。きっと婚約者だった方のご両親だと思う。婚約者だった方とは解消になった時点から会っていないと聞いた。大事だった方と別れもお見送りもさせず連れて帰るなんて…私は何てヒドイ人間なんだろう。
「レオンハルト様少し用事してまいりますね。ご家族と居てください。」
私は絶対彼を幸せにしないといけない。もう嫌われているかもしれないし、仲良くしてもらえないかもしれない。それでも私が犯した罪は無くならない。
「本当にごめんなさい。謝っても謝りきれません。絶対誰よりも幸せにするって約束します。」
帰りかけていたその年配のご夫婦に走り寄り伝える。よろしくお願いしますと頭を下げられた。あの子の分までお願いしますって。私はこの人達の幸せも奪ったんだ。泣きそうになるが泣くな。私が泣いたらダメだと心に誓う。
「レオンハルト様は何が好きですか?仲良なくなるために何でも知りたいです。」
馬車に乗り込み聞く。今回犯した罪は深く重い。私は私に出来る方法を考えながら何年かかってもこの人を幸せにしたいと思う。




