第五十一話 三人目のロジック
第五十一話!
ごめんなさいちょっとさぼっちゃいました。
投稿する時間帯と曜日を決めたいと思います!
楽しんで!
「お前、サラか!」
八歳の僕(零)と三歳の誠の声が、北の村の静寂に同時に響き渡った。
複製された研究室の前に立ち尽くす、十歳ほどの黒髪の少女。彼女は地面に落とした本を見つめたまま、信じられないものを見るように僕たちを凝視していた。
サラ。
前世の研究所で、僕たちと一緒に机を並べ、数々の禁忌の薬品を精製していた、あの『天才毒学者』の白衣の姿が、目の前の幼い少女の輪郭と完全に重なり合う。
「……嘘。一ノ瀬(零)……それに、佐伯(誠)なの……?」
サラが呆然と呟く。その声はまだ十歳の子供のそれだったが、僕たちを見つめる理知的な眼差しは、間違いなく前世の彼女そのものだった。
「こっちのセリフだよ、サラ! なんでお前がこんなところにいるんだ! それに、この建物は一体どういうことだ……!?」
僕は自分の設計図と一ミクロンも狂わずに建てられた、隣の「複製された研究室」を指差した。
コンクリートの配合比も、僕にしか分からないはずの機械式の鍵の構造も、すべてが僕のラボの完全な複製品だ。
「……それが、私にもさっぱり分からないのよ」
サラはいつもの少し不敵な笑みを浮かべ、ドレスの裾についた土を払いながら、隣の建物を見上げた。
「数日前、目が覚めたら、なぜか私の家の隣にこの『見覚えのある建物』が忽然と建っていたの。中に入ったら、前世で一ノ瀬がよく使っていた実験室と全く同じ構造をしていて……。だから私は、ただここに隠れていただけよ」
「……なるほど。前世の僕たちの絆が、何か特別な現象でも引き起こしたのかな」
僕が納得すると、隣で三歳の誠が、短い腕を組んでサラを見上げて言った。
「相変わらず強運だね、サラ。でも、それならこの村の住人たちが消えた理由も、君なら知っているんじゃないかい?」
サラの表情が、ニヤリと毒学者らしい意地の悪いものに変わった。
「……ええ、私が眠らせたのよ。じっくり実験に集中したかったから、村の共有水源に『超高純度麻痺薬』をちょっとね。今頃全員、裏の倉庫で明日の朝までぐっすりよ」
「……相変わらずエグいデバッグ(手法)をするね、君は」
誠が呆れたように溜息をつく。
「そんなことより一ノ瀬、佐伯。次の『牙』を精製したいんでしょ? 高純度の『硫酸』なら、奥の棚にバッチリ用意してあるわよ。ちょっと待ってて」
サラはそう言うと、ラボの奥の暗がりの影へと身を隠した。
――そして、わずか数秒後。
「はい、これでいいかしら?」
サラは何の足音も立てず、僕が求めていた通りの厳重に密閉されたガラス瓶を、すぐに両手に抱えて戻ってきた。この世界のどこを探しても手に入らないはずの、前世の規格と全く同じ高純度の化学試薬だ。
「さすがサラ、完璧な調達速度だね。前世の実験室と中身まで同じなんて、最高じゃないか」
「当然よ! さあ、佐伯もぼさっとしないで、その3歳の短い手でフラスコを振りなさい!」
サラの頼もしい言葉に、誠も不敵に笑う。
地平線の向こうから、僕たちを討伐しにくるであろう教会の『聖騎士団』の本隊が近づいているとも知らずに、僕たちは再会の喜びと科学への興奮に浸っていた。
八歳、三歳、そして十歳。魔法を失った僕たちは、三人目の大天才『サラ』を迎えたことで、世界で最も危険な『最強の科学者トリオ』へと進化を遂げた。
ご覧いただきありがとうございました。
シアン化カリウム、アジ化ナトリウム、黄リン、パラチオン、アコニチン、テトロドトキシン、パリトキシン、マスタードガス、ルイサイト、硫化水素、塩化水素、リシン、ボツリヌストキシン、ホスゲン
出したい毒たちが数えきれないほどたくさんある!
これからもよろしくお願いします!




