第四十一話 砂上のエラーコード
第四十一話!
楽しんで!
砂漠の熱風が、僕の焼けた肌を撫でる。
だが、今の僕にはその「熱さ」さえ正しく認識できない。全属性魔袋から流れ込む過剰なエネルギーが、僕の五感を狂わせていた。
視界は赤外線と紫外線が混ざり合ったサイケデリックな色彩に染まり、耳に届く風の音は、数万行の無意味な数式となって脳を埋め尽くす。
一歩、砂を踏みしめるたびに、足元から「土」の魔力が暴走し、砂漠に巨大な結晶の柱を突き立てていく。
「ア……ハ……ハハッ……ヒヒッ!!」
喉が、勝手に笑う。
肺が勝手に、リズムを刻む。
もう、自分が何を考えているのかすら分からない。
ただ、脳の底にこびりついた『唯一の未解決事案(誠)』というノイズだけが、僕を北の果てへと歩かせていた。
視界の端に、小さな村が見えた。
あそこなら、水分(H₂O)があるかもしれない。あるいは、誠へと繋がる手がかりがあるかもしれない。
だが、僕が村に一歩足を踏み入れた瞬間、僕の「全属性」が周囲を『外敵』と誤認した。
右手を振れば、大気中のアルミニウム粉末が魔法で生成され、酸素と結びついて『テルミット反応』を引き起こす。青白い数千度の炎が、村の家々を飴細工のように溶かしていく。
人々が逃げ惑う。悲鳴が上がる。
(止めろ……止めろ。僕は……こんな『非効率な破壊』をしたいわけじゃない……!)
心の中では叫んでいる。けれど、口から出るのは、どこまでも明るく、無機質な笑い声だけだ。
「ハハハハハハッ!! ヒヒヒッ!!」
涙が流れた。
その涙が頬の熱で気化し、さらに激しい魔力の火花を散らす。
僕は、自分の意志で腕を上げているのか、それとも『全属性』というシステムに操られているのか。
その時だった。
燃え盛る炎と砂塵の向こう側に、一つの『熱源』が現れた。
小さな、あまりに小さな、けれど僕の記憶の最も深い場所に刻まれたフォルム。
「……誠……?」
脳内を駆け巡るバグコードが、一瞬だけ静止した。
二歳になったばかりの、泥だらけの親友。
あいつは、レンズを構えて僕を見ている。恐怖と、悲しみと、そして絶え間ない『知性』を瞳に宿して。
会いたかった。
助けてほしかった。
でも、今の僕が誠に贈れるのは、誕生日の言葉でも、再会の抱擁でもなかった。
全属性が勝手に放つ、絶対零度と爆燃の挨拶。
「ハハッ……ヒ、ヒヒヒッ!! マ……コト……オメ…………ハハッ!!」
笑い声に掻き消された、僕の最後の一言。
視界が真っ白に染まっていく。
僕は、自分に向けられた誠のナイフを、まるで『救済のコード』のように待ち侘びながら、最後のエラー(笑い声)を解き放った。
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