第四話 泥の中の真相
第四話!
ついに部屋を手にした零!彼の研究室ではどんなけんきゅうをするのだろう。
手に入れた石造りの小屋は、お世辞にも「研究所」と呼べる代物ではなかった。床は埃まみれで、隙間風が嫌な音を立てて吹き込む。だが、私にとっては、この世界の誰にも邪魔されない『聖域』だ。
「さて、まずは文明の進歩『火種』を収穫しに行こうか」
私は、村の焼け跡から拾い集めた煤けた袋を手に、小屋を出た。
向かったのは、街のきらびやかな大通りではない。その真逆――街外れの家畜小屋の裏、人々の排泄物が溜まる「肥溜め」の近く。街で最も不潔で、忌み嫌われる場所だ。
「あった!硝酸カリウムの結晶だ、これがあれば!」
ラボに持ち帰った「汚物まみれの結晶」を、私は迷わず鍋に放り込んだ。
焼け跡から拾った木炭を砕き、粒子を極限まで細かくする。次に、道中で採取しておいた硫黄の塊を正確に調合する。
五歳の小さな掌は、煤と泥で真っ黒だ。だが、私の脳内では完璧な化学反応式が踊るように脳内を回っている。
「……混合比は、75対10対15。誤差は許されない」
魔法使いが呪文を唱えるように、私は慎重に、しかし大胆に素材を混ぜ合わせていく。硝酸カリウムが75%木炭が15%硫黄が10%それは見事に混ざり合った。
次に必要なのは、爆発の力を一方向に、かつ強力に閉じ込めるための『容器』だ。私はガラクタの山から、厚手の小さな鉄パイプの破片を見つけ出した。その両端を加工し、導火線代わりの糸を差し込む。
周囲からは、変なガキが泥遊びをしているようにしか見えないだろう。だが、今、私の手元にあるのは単なる鉄の塊ではない。それは、人類が魔法という『理不尽』に引導を渡すための、最初の鍵だ。数時間の作業の末、机の上には、掌に収まるサイズの無機質な鉄の筒が置かれていた。
見た目は不格好で、泥にまみれている。
だが、その内部には、魔族の強固な障壁さえも物理的に粉砕するだけの、圧倒的なエネルギー密度が封じ込められている。
「……完成だ」
私は、窓の外を飛ぶ魔族の影を、冷徹な目で見上げた。
彼らが『奇跡』と呼ぶ現象を、私は今、この手で『ただの物理法則』へと引きずり下ろしたのだ。
五歳のカイとしてではなく、一ノ瀬零としての記憶を持ち。
私は、まだ見ぬ敵に向かって静かに微笑んだ。
「さあ……デバッグを始めようか」
ご覧いただきありがとうございます。
前世の知識を持ち込んで硝酸カリウムと木炭と硫黄を混ぜて作った黒色火薬、デバッグという彼の決め台詞第五話はどんな話になるのか!




