第三十三話 虐殺者
第三十三話!
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砂漠のオアシスにある小さな村は、一瞬にして地獄へと変わっていた。
天を突くような青白い炎。石造りの家々が飴細工のように溶け、砂漠の熱風に混じって、生臭い焦げた匂いが鼻を突く。
「聖子様……あれは、あれは一体何なのですか……!?」
背後で自警団の隊長が震える声で叫んでいた。だが、僕は答えない。いや、答えられなかった。
零から贈られたレンズを単眼鏡のように構え、その破壊の中心地に立つ影を捉えた時、僕の心臓は医学的な限界を超えて激しく拍動した。
「……あ……」
そこにいたのは、僕が死ぬ気で探し続けてきた、たった一人の親友だった。
青い髪を振り乱し、かつての冷徹な天才工学者の面影を歪ませた、7歳の零。
彼は笑っていた。頬を伝う涙を拭いもせず、自分の喉をかきむしりながら、壊れた機械のように。
「……ッハ、ハハハッ! ヒ、ヒヒヒヒヒッ!!」
その笑い声が響くたび、空から「論理的な物理破壊」が降り注ぐ。
魔法というバグを嫌悪していたはずのあいつが、今やそのバグの権身となり、無慈悲に村をデバッグ(蹂躙)していた。
「止めろ……止めろ、零っ!!」
僕は叫び、一歩前へ踏み出した。
「隊長、狙撃準備! 殺すな、動きを止めるだけでいい! 僕が近づく隙を作れ!」
……だが、返事はなかった。
おかしいと思い、僕は振り返る。
「……え?」
そこには、誰もいなかった。
つい数秒前まで僕の背後を固めていたはずの三千人の軍勢。僕が心血を注いで作り上げた最強の科学軍団。
僕が気づかない一瞬の「消失魔法」で消し飛ばされたのだ。
燃え盛る村の入り口に、ポツンと取り残された2歳の僕。
そして、炎の向こうで笑い続ける7歳の親友。
数キロ先に見えるはずだった『砂漠の研究所』さえも、今は遠い。
熱風が砂を巻き上げ、僕たちの間の距離を埋めていく。
「ハハッ、アハハハハハハッ!!」
零の視線が、ゆっくりとこちらを向いた。
焦点の合わない、真っ黒な瞳。
絶望的な静寂の中で、僕と零――世界で二人だけの『共同研究者』による、最悪の再会が始まった。
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