第二十七話 二歳の薬師
第二十七話!
化学を終えて次は医学
楽しんで!
夜明け前。僕は森を抜け、隣町の大きな城門の前に辿り着いた。門番たちは、夜の闇から現れた泥だらけの赤ん坊を見て、幽霊でも見るような顔で槍を向けた。
「な、なんだ……赤ん坊か? 呪いか、それとも魔物の化け物か!」
僕はレンズを単眼鏡のように構え、門番の顔を鋭く観察した。不規則な呼吸、眼球の充血、そして首筋に浮き出た特有の湿疹。
「……おじさん、槍を下ろしたほうがいい。興奮すると、その『熱病』が一気に脳まで回るよ」
二歳の子供から放たれた、あまりに理知的な声。門番たちは硬直した。
「その湿疹は、北の森に自生する『腐毒草』の胞子によるものだ。放置すれば三日後には死ぬ。……でも、僕ならその『不具合』を治してあげられる」
【解読剤の精製プロセス】
僕はリビルド(魔法)を使えない。代わりに、僕は道端の泥を払い、必要な植物を自らの手で選び出した。
「いいかい、おじさん。毒があれば、必ずそこには『拮抗薬』が存在する。それが生物学的多様性の基本だ。」
僕はまず、湿った日陰に生えている『月見苔』をむしり取った。これには胞子の毒性を分解するアルカロイドが含まれている。それを石の凹みに入れ、零から贈られたレンズを虫眼鏡代わりにして、朝日を集約させた。
「……熱を加えることで、酵素の活性を早める。さらに、そこにある『苦蓬』の茎を潰して混ぜる。蓬の成分が血管を拡張させ、解毒剤の浸透効率を跳ね上げるんだ。」
二歳の小さな手で、石を使い、植物の繊維を徹底的に叩き潰す。出てきた暗緑色のドロドロとした液体。リビルドなら一瞬だが、自分の指で温度と粘りを確認しながら作るこのプロセスこそが、本来の『医学』だ。
「……これを噛んで、汁だけ飲み込んで。五分で熱が引くよ。門を通してくれるなら、この処方箋、タダでいい。」
五分後。劇的に体調が回復した門番たちは、僕を「聖子」か何かだと勘違いし、跪いて門を開けた。
「……ハッピーバースデー、零。一人のサバイバルは、上々の滑り出しだよ。」
僕は街の喧騒の中へと踏み出した。
活気溢れる朝の市場。だが、僕の目にはそれが『症例』の山にしか見えなかった。
この世界の医療は、想像以上に遅れている。
(……ちょうどいい。ここを僕の『病院』にしよう)
僕は広場の中心へ行き、適当な空き箱の上に座った。
「……診断してあげるよ。一回、パン一つでいい。……命を安売りしたくないなら、僕の言葉を聞くべきだね。」
二歳の医学者が、自らの知恵だけで街を掌握し始める。
待っていろよ、零。僕がこの街を支配し、君を救い出すための『最強の特効薬』を作り上げてやる。
ご覧いただきありがとうございます。
やっぱり医学は化学より自分で考えて書くのが難しい!




