正義を否定する深淵(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
それによって部下達が惨殺されていくのを見て、尻に火がついた憲伸は、あらかじめ用意していた両刃付きの刺又・重刃刺又を装備し、力任せに黒猫を真っ二つに叩き斬ろうとした。
その危機を青龍が見逃すはずがない。サッと黒猫と憲伸の間に入ると、片手で振り下ろされた重たい一撃をツインドラコスラッシャーで受け止めた。
「つっ! 片腕だけでこのパワー……流石は元特捜5課の警部ってわけですか」
「お前……! 訳わかんねぇ。何故そいつを庇う!? 友達とはいえ、逆恨みでお前の命を狙っているクソ野郎だぞ? 自分を捨ててまで守る価値があるほど、そいつは善人じゃねぇだろ!?」
黒猫を庇ったこの行動を理解できない憲伸がそう聞くと、青龍は黒猫の怒りを買うことを覚悟でその理由を語った。
憲伸の言うとおり、黒猫は善人じゃない。人類発展の為なら犠牲を生むことも辞さない。ブラック・ナイトの理念を忠実に貫こうとする黒猫は、明らかに間違っている。そこに正義は無い。
だが、だからといって、特捜5課や憲伸の考えを認めるつもりもない。正義の名の下、犯罪者を問答無用で抹殺する。それが正しい行いなわけがない。ブラック・ナイト同様、彼らにも正義は無いのだ。
目の前の犯罪者にそう言われ、自身を全否定された憲伸は怒り狂った。
「てめぇ! 犯罪者のくせに、俺達を否定しようってのか!?」
「その傲慢さが1番の間違いなんです! あなた達の歪んだ正義感が、黒猫のような悲しい人を生み出している。そのことに気付いてください!」
「それが自分を捨てて、俺に刃を向ける理由か? 理解できねぇな。いつ後ろから斬られるかもしれねぇってのに」
「それでも僕は、その瞬間まで彼女を守り、償いをし続けます。それが、黒猫の人生を狂わせた僕ができるせめてもの償いですから」
真っ直ぐな目で青龍がそう言うと、憲伸は皮肉な笑みを浮かべた。
「綺麗事ばっかで自己犠牲心も強い。お前は聖者みたいな奴だな」
「よく言われます」
「なら、犯罪者には不相応なその心を持ったままくたばっちまえ。クソガキ!」
そう言って憲伸は、力任せに重刃刺又をフルスイングした。
いくら何でも直撃はマズい。そう思った青龍は黒猫と共に回避し、彼から距離をとった。
青龍が自分を捨てて黒猫を助けるのには、もう一つ理由があります。
それは皆さんご存知の通り、大切にすべき自分というものが無いからです。
それらも含めて聖者という言葉は彼にぴったりだと思います。




