歪な心(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
ちなみに、このことを知っているのは、ブラック・ナイトのメンバーと、彼らを独自に調査していた特捜5課だけ。なので、今更それを見たところで新鮮味がない憲伸は驚いていない。それどころか、内心ワクワクしているようだった。
「なるほど。流石は誠の剣というわけか。」
「バカにしているんですか?」
「いや。そのつもりはない。むしろ、嬉しいんだ。かつての秩序の犬とこうして渡り合えるのだからな。それに怯えているようでは、新たな秩序を打ち立てるなど夢のまた夢だ」
「新たな秩序? どういうことですか?」
黒猫がそう尋ねると、憲伸は自分の理想を語り出した。
憲伸いわく、この世の法律は犯罪者に対して甘く、ぬるい。よっぽど重罪を犯さない限り、死刑にはならないし、精神鑑定や情状酌量、年齢や精神疾患による責任能力の有無によっては、無罪や減刑にもなりうる。
それではダメなのだ。犯罪を犯した時点でそいつは生きる価値の無いゴミクズ。ゴミクズは殺処分以外ありえない。
故に彼は、今ある警察や司法組織等、法に関わる全ての組織を一旦リセットし、より厳格な法とそれを実行する司法組織を作ろうとしているのだ。自分が頂点に君臨する新たな秩序の下で。
そんなバカげた持論を得意げに聞かされた黒猫の口からは、呆れのため息しか出なかった。
「……所詮、イヌは飼い主に似るってことね」
「どういう意味だ?」
「言葉通りの意味よ。犯罪者ってだけでクズと決めつけ抹殺する。そうやって人の大切なものを平気で奪っていくところがそっくりだって言ってるの」
「それの何が悪い? クズに大切なものなど不要。あるのは尊厳すら踏みにじる惨めな罰のみ。それを与えてこそ正義だ」
「違う。そんなの正義じゃない。そもそも、あなたのような輩が、軽々しく正義なんて語らないで。虫唾が走る!」
そう言うと黒猫は、愛刀を時計の針のように回して円状の剣圧を放ち、
「闇夜流剣術奥義・朧月!」
と言いながら、刀を横にして前に突き出し、胴体を両断しようと突撃した。
確実に肋骨の下あたりに当たった。黒猫はそう確信したが、憲伸は全く斬られておらず、ピンピンしていた。
驚く黒猫は最初、訳がわからなかったが、原因を探ろうと刀を離したことで、すぐに理由が判明した。切れているのは警備会社の制服だけで、その下から彼が特捜5課時代から愛用している防刃スーツを着ているのが見えた。どうやらこれで、黒猫の渾身の一太刀を防いだらしい。
「残念だったな。嬢ちゃん。お前の太刀なんか、痛くも痒くもねぇよ」
そう言うと憲伸は両手を握り、黒猫の頭めがけてハンマーのように振り下ろした。
重たい一撃をくらった黒猫は、顔を地べたに叩きつけられるも、めげずに反撃しようとしたが、立ち上がった瞬間に、彼の部下に背後から足を撃たれてしまった。
「よくやった。が、まだ殺すなよ。この嬢ちゃんには、たっぷりとお仕置きをしないといけねぇからな」
「わかっています」
「それと、嬢ちゃんが持ってきていた武器を全部回収しとけ。取り返されないようにな」
「了解」
「さーて、覚悟してもらおうか? 嬢ちゃん」
そう言って憲伸は、指をポキポキと鳴らし、部下と共に包囲しながら、彼女にジリジリと近寄っていった。
憲伸や特捜5課の言う正義は極論すぎますが、あながち間違いではないかもしれません。
実際の被害者遺族からすれば、犯人が減刑や無罪になったら、『ふざけるな』と思い、極刑を望むでしょうから。




