形見の太刀(1)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
1間半後。龍と柚は奏の奢りでホテル内のレストランで夕食をご馳走になっていた。
そこで話題に上がっていたのは、やはり彼女のことだった。
「……あの時は、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「いや、そのことはもういいんだけど……にしてもびっくりしたよ。まさか柚がブラック・ナイトのメンバーとはね。正直まだ信じらんないよ」
何故奏がブラック・ナイトのことを知っていて、ここまで落ち着いていられるのか。
それは、龍が記憶を取り戻した日の夜、彼から直接電話で伝えられていたからである。
「ですが事実です。そして、彼が私の仇敵だということも」
「猫宮さん……」
いまだ柚の恨みの根は深い。それを改めて思い知り、沈黙する龍とは対照的に、奏は同情しつつも、龍の姉としての立場から、復讐をやめてくれるよう説得した。
あの分からず屋の柚が聞くわけがなかったが。
そのせいで空気が少し重くなっているところに、ウェイターが魚料理を運んできた。
すると柚は、何故か持参してきた菊一文字零式・真打を邪魔にならないようテーブルから離し、料理が置かれウェイターが席から離れたのを確認すると、再び元の位置に置き直した。
この光景に最も疑問を感じていたのは、一般人の奏だった。
「そういえばさっきも店員に止められていたけど、なんで持ってきたの? その模造刀」
「姉さん。あれ模造刀じゃないよ」
「え!? てことは、本物!? なら尚更ダメじゃない! 今すぐ部屋に戻してきなさい!」
奏はそう注意したが、柚は頑として聞く耳を持たなかった。
「お断りします。ホテルの人が清掃中に触るかもしれないのに、置いておくなんてできません」
「危険人物と思われかねないから?」
「いいえ。誰にも触れてほしくないからです。鴉さんの銃なら、ペガサス君や雲雀さん達が触っても構わないのですが、この刀だけは……」
そう言う柚の手は、よほど触れさせないのか、菊一文字零式・真打を守るように力強く握りしめていた。
今回のサブタイトルの意味。それは言うまでもないかもしれませんね。




