凍土と鮮血の武道大会(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
数分後。琴音の部屋に連れられた龍と大牙は、彼女とビジネスの話をした。
お察しのとおり、今回の依頼者は彼女、琴音である。
その依頼内容はもちろん、ムルタとイワンの殺害。
動機は、借金苦で強制的にこの大会に参加させられたが、誰一人殺さずチャンピオンまで上り詰めた父・不知火高志を、ムルタに嬲り殺されたからである。それも自分の目の前で。
「……父は私の誇りでした。強くて優しくて、何度ダウンしても不屈の闘志で立ち上がる。まるで不死鳥のような立派な男でした」
それを聞いた格闘技マニアの大牙は、『不死鳥』というフレーズから、彼女の父親が何者なのかわかり、いまいちピンときていない龍に、興奮しながら説明した。
彼の父のリングネームは、マスク・ド・フェニックス。プロレス出身で、K-1ファイターとして一時期その名を轟かせていた一流のプロレスラーである。
投げ技よりもロープアクションを駆使した空中技を得意とした選手であり、キメ技はロープに乗って跳躍し、上空から相手を踏みつけるライトニングフェニックスという技だったそうだ。
大牙は幼少期から彼の大ファンで、修行がてら彼の技を何とか会得しようとするほど筋金入りだった。
それだけに、彼が死んでいたことを知った大牙は、その死を悲しく思った。
「あいつが、マスク・ド・フェニックスを……」
「はい。なのでどうか、父の仇を討ってください! 今日の予選と明日の決勝トーナメントを勝ち進めば、特別シードであるムルタと直接対決することができます。そこで彼を……!」
「わかった。尊敬するマスク・ド・フェニックスの弔いデスマッチ、全力でやってやるぜ!」
やる気十分の大牙を見た琴音は、請け負ってくれた彼に礼を述べ、参加資格を持たない龍はムルタの相手を彼に任せ、自分はもう1人のターゲットであるイワンの行動パターンを探るための調査を開始した。
初の海外での依頼が幕を開けました。
ちなみに、マスク・ド・フェニックスは空中戦を得意としますが、別の獣マスクのプロレスラーをモデルにしたわけではありません。




