凍土と鮮血の武道大会(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
それから約5時間半後のロシア時間午後5時頃。いよいよ最狂の武道大会・コンバットデスマッチが幕を開けた。
当日から参加の白虎は、対戦相手達をほとんど掌打1発で秒殺していき、危なげなく予選を突破した。
彗星の如く現れた日本からの刺客。ムルタのみならず、皆が注目するには十分すぎる戦績である。
次は本選。そう思い、深夜から筋トレをしていた大牙は、夜食で空腹を満たしてから寝ようと、売店を探すことにした。
しかし、どれだけ歩いてもそれらしい店がみつからない。どうやら消灯している建物の中で迷子になってしまったらしい。
「やっべ。元来た道もわかんなくなっちまった。どうしよう……」
そう言い、困り果てながらあたりを見渡していると、一筋の光が見えた。
案内板を照らす光か。それとも誰かがいて点けたものなのか。いずれにしても、部屋に帰る手掛かりがあると考えた大牙は、光が差す方へと向かうと、そこは月光に照らされた試合会場の観客席だった。
試合が行われていないこんな夜更けに人がいるとは到底思えない。落胆した大牙は引き返そうかと一瞬思ったが、気配を感じ振り向くと、カンフーの服に身を包んだ女性がリングに近寄るのが見えた。十中八九大会出場者。それも自分と同じ本選出場者だろう。
「へー。この大会って女も出るんすね」
女にも聞こえるように大きな声でそう言ったあと、大牙は観客席から跳躍して近寄り、驚く彼女に自己紹介した。
「噂の日本人か。私の名は雷緋蘭。雷孔雀拳の使い手で、見てのとおりの中国人だ。よろしく」
それを聞いて頭を下げようとした大牙は、そこで初めて気付いた。
出発前に翔馬から受け取った小型翻訳機を部屋に置いてきてしまい、今は耳に装着されていない。
それでも流暢な日本語で聞こえるということは、それだけ彼女の日本語が自然だということである。
不思議に思った大牙が訳を聞くと、緋蘭は話の流れで自らのことを語ってくれた。
慣れない土地で無闇に出歩いてはならない。大牙にはいい教訓になったかと思います。




