青龍と赤龍と伝説と(3)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
彼がここまで怒りを露わにするのには理由がある。
そもそもE・Cことロジャーは、元からこんな性格だったわけではない。なんなら、多くの兵士らの尊敬を集め、誰よりもアメリカを愛していた愛国心の塊のような男だった。
そんな伝説と謳われた老兵を変えてしまったのは、ある訓練生達との出会いからである。彼らを受け持ったロジャーは、教官として愛国心の欠片もない訓練生らに必死にその想いを説いてきたが、誰一人として耳を傾けてはくれなかった。
やがて、愛国心のない兵士に存在価値はないという過激思想を抱くようになったロジャーは、国のためと涙を呑んで訓練生ら125人をその手にかけた。
これで正しさを貫けた。そう思っていた彼を待っていたのは、国からの裏切り。アメリカ政府は自分ではなく訓練生らを擁護し、ロジャーをテロリストとして断罪しようとしたのである。
その結果、愛する国に裏切られ顔に重傷を負ったロジャーは、自分を決して裏切らない帝国を建国し、ひとりぼっちの独善的な皇帝・E・Cと自称するようになった。
そう。この国そのものが、E・Cの世界に対する復讐。とすれば、その執念の深さも並ではない。
E・Cが胸のポケットから何かのスイッチを取り出し、それを押すと、V-0のケースに蓋がされ、周囲の床が開いていった。
「樹海を核で燃やしても無駄だ。V-0は消せん。この国を創立してから、私が何もしていなかったと思うか?」
その言葉とV-0の周辺の様子から3人は、彼が何をしようとしているのか予想できた。
V-0をミサイルに搭載して打ち上げ、大気圏でばらまくことで、世界に蔓延させるつもりなのだ。
発射台から身を守るための隔壁が閉じられたら、もうどうすることもできない。そう直感したアレックスはV-0の元へと急いだが、気付くのが少し遅かったらしく、下りようとしてくる隔壁を踏ん張って止めることしかできなかった。
となれば、頼みの綱は渓しかいないが、その手は未だに拘束されている。このままでは隔壁を通過できても、V-0を覆っている蓋を開けることができない。
そうこうしている間に、アレックスの踏ん張りが効かなくなっていく。足腰にヒビが入っているし、早くしないと隔壁に挟まれ、圧殺されることになる。
行き過ぎた愛国心は悪に等しい。幼すぎる正義も同様です。E・Cの行動はその見本といっても過言ではないでしょう。




