後日談.結婚式編 俺の名前は
「行きます」
仮面の男は一言言うと、両手に1本ずつ持つ魔剣を構えて走ってくる。俺もガラドルクを握り直して構える。この円には近寄らせねえぞ?
仮面の男は間合いを詰めて右手の剣で切りかかってくる。俺はそれをガラドルクで受けると同時に雷を流す。仮面の男は咄嗟に離れるが、右手を振っていたので少し痺れたのだろう。
俺はその内に雷の槍を発動する。まずは10本だ。仮面の男は迫る雷の槍を避けて、弾いて近づいてくる。俺は少しずつ槍の数を増やして行く。
仮面の男は少しずつ押されて行く。雷の槍が体を擦り少しずつ傷ついていく。さあどうする? このままやられるのか? そう思った瞬間
「炎帝剣アモン、水帝剣ディーネ発動!」
仮面の男の魔力が膨れ上がった瞬間、俺の放った雷の槍が、炎に焼かれ水に流されてしまった。そして槍の中から現れたのは、さっきまで黒ずんでいたのに、右の剣は紅く輝き、左の剣は蒼く輝いていた。
そして、両方の剣に魔力を流すと、剣の先にそれぞれ炎と水が纏い先が伸びてくる。まるでエアリスの太刀のような長さだけど、多分重さは変わらないのだろう。
その両剣を俺に向かって振るってくる。本来ならあんな長い剣にもなれば動きが単調になったりするのだが、重さが変わらないし、周りを気にすることのない仮面の男の動きはかなり速い。
俺は円から出ないように剣戟を避ける。動きは昔に比べて格段と良くなっているな。この3年の間に色々と死地を乗り越えて来たのだろう。
仮面の男は上段から2本の魔剣を振り下ろしてくる。真っ向から吹き飛ばしてやる。俺はガラドルクに魔力を流し雷を流す。ガラドルクに激しく雷が迸り、荒れ狂うように辺りを穿つ。
「穿て、雷龍槍!」
俺がガラドルクを振ると、穂先から雷の龍が姿を現わす。大口を開けた雷の龍が仮面の男を噛み砕かんと迫る。
仮面の男の両剣は雷龍の牙とぶつかり拮抗している。
「うぉおおおおおっ!」
だが、その拮抗を崩そうと、仮面の男は更に魔力を流して対抗する。そして
「クロスエッジ!」
炎と水が交差して雷の龍を切り裂いてしまった。そして、そのまま俺の方へ向かってくる。今のは彼が3年前のままだと耐えられる技ではなかった。
良し、なら次のステージだ。
「耐えてみろ。雷装天衣」
俺は自分の得意な魔法、雷装天衣を発動する。体が青紫の雷を帯びるのと同時に、雷帝の武器庫も発動、俺を中心に雷の武器が宙を舞う。
その宙を舞う武器たちが次々と仮面の男へと降り注ぐ。一つ一つの武器がさっきの雷龍以上の威力を持っている。
仮面の男はさっきとは打って変わって防戦一方だ。降り注ぐ武器たちを防ぎきれずに先ほど以上に傷を負っていく。
その内に、残りの奴らに向けても放つと、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。中には会場から出ていく奴もいる。真っ向から受け止めようとする奴もいるが、武器に触れた瞬間感電する。
彼らを雇っていた貴族たちが喚いているが、そこまで言うならお前らが来いよ、と思う。黙らすために数発貴族に向けて放つと、大人しくなったが……あっ、同じ箇所に当てすぎて結界に少し穴が空いた。黙っておこう。
その間にも仮面の男は避け続けるが、そろそろ限界のようだな。俺は槍を仮面の男の方へと向ける。すると俺の周りに飛んでいる武器たちが全て仮面の男へと向く。
「行け」
そして、仮面の男へ向けて武器を放つ。仮面の男は逃げる素振りを見せずに真っ向から迎え撃とうする。全くこいつは。その時
「タクミ!」
仮面の男の名前を呼ぶ声が聞こえる。本当ならここで魔法を解くべきなのだろうけど、彼が望んでいない。だからこのままいく。怪我すれば治してやるから我慢しろよ?
ズドドドン! 武器が連続して降り注ぐ音が会場に鳴り響く。俺はそれと同時に仮面の男へ回復魔法をする。エレネたちに血塗れの姿を見させるわけにはいかないからな。
会場中はシーンと静かになり、砂煙が晴れるのを待っている。ただ待つと少しかかりそうなので、風魔法で砂煙を吹き飛ばす。
砂煙の中から現れたのは、ボロボロにはなっているが傷は無く、気を失っている仮面の男の姿だった。
他の参加者たちはいつの間にか会場から逃げ出していたようだ。やっと終わったかね。俺がチラッとダグリスを見ると、ダグリスも頷き
「参加者たち全員気絶及び棄権のため、レイの勝利!」
ダグリスが声高に勝利宣言をすると
「きゃぁ〜〜! パパが勝ったぁ〜!! ママ! パパが勝ったよぉ!」
と、エレネの喜ぶ声が聞こえる。この声を聞いただけで俺も頑張った甲斐があったというものだ!
ただ、その事を認めたく無い奴は当然いて
「貴様、反則をしたな!」
と、怒りながら会場へと入って来た。デブを先頭に他の貴族たちも一緒に。
「あの人数相手に勝てるわけがなかろう! 貴様は一体何をしたのだ! 答えろ!」
「別に何もしていないさ。いつも通り倒しただけだ」
「き、貴様ぁ! 此の期に及んで嘘を……」
「嘘はついておらんぞ」
デブの文句に辟易としていると、後ろからそんな声が聞こえて来た。振り向くとそこには
「あああ、あなた様は……」
「ナノール国王」
各国の王が会場まで来ていた。ナノール国王、獣王、教皇、シーリア国王、ロズベル皇帝、ティターニア女王、オッバーマン大統領、ミーティア魔王そしてアレクシア。
「彼の実力は本物だよ。今の結果に異議があるなら聞くけど?」
教皇が微笑みながら言うと、デブは顔を青くして首を横に振る。そして俺を睨んでくる。チラッとアレクシアを見ると、アレクシアも頷いて俺の隣に来る。そして俺の腕に抱きついて来る。
それを見たデブは顔を真っ赤にさせて俺に向かって指をさして来る。
「お、お前は一体誰なんだ!? 各国の王にアレクシアまで! お前は誰なんだ!」
俺が誰かって? 誰かって聞かれたら答えなくちゃな。
「俺は一度しか言わねえからしっかりと聞けよ、デブ。俺の名前は……レイヴェルト・ランウォーカーだ! ずっと、俺のことを待っていてくれた大切なアレクシアを狙うんじゃねぇ!」




