192.解除
「……それは本当なのレイ?」
アレクシアは俺の言った事が余り信じられなくて本当かどうか尋ねてくる。香奈と麻里ちゃんも信じられなさそうに俺を見てくる。
それもそうだよな。2年近く信用して付けていたものが、まさかの付けてはいけないものだったなんて。だけどこの腕輪は間違いない。
「間違いないよ。制約の首輪よりかは、付けられる命令が少ないけど、これはそれと似たものだ」
「そ、そんな……」
香奈も麻里ちゃんもショックで声が出ないようだ。しかし、今まで気が付かなかったという事は、命令とかはされてこなかったという事だろう。
多分、勇者組が言う事を聞かなかった時に使おうとか思っていたのだろう。……それでも付けること自体腹が立つ。
「もう、レイ落ち着きなさい」
「ああ」
俺が怒っているのがわかったのかアレクシアが俺の手を握る。反対側をクロナが握って俺を見上げてくる。ふぅ、落ち着いた。帝国に対してキレても仕方がないな。まずは腕輪をどうにかしなければ。
「これから香奈たちの腕輪を外す。外したりしたら何か問題はあるかな?」
「無理矢理外したらダメでしょうけど、レイのアレなら大丈夫でしょう」
よし、アレクシアのお墨付きも貰った。2人は不思議そうな顔で見てくるが、少し待ってくれ。王領からあいつ呼ぶから。
◇◇◇
「ライトさん、この資料をそちらにお願いできますか?」
「はい、ヘレンさ……おっと、申し訳ございませんヘレン様。お呼出しがありました。少し先を外させてもらいます」
「ええ。あっ、行っちゃった。帝国にいるレイさんたちに何かあったのかしら?」
◇◇◇
「ライト来てくれ!」
俺が呼ぶと、俺の前が光りだす。そして王領に残したライトが目の前に現れる。突然現れたライトに香奈と麻里ちゃんは驚きの表情を浮かべる。
「お呼びでしょうか、レイ様」
「ああ、彼女たちの腕に付いている腕輪を『断ち切る者』で外したい」
「かしこまりました」
俺は2人の側に寄りしゃがみこみ腕輪が付いている方の右腕を掴む。
「香奈、麻里ちゃん。今からこの腕輪を外す。まあ、痛みとかは無いから大丈夫だ」
俺が言うと2人は頷いてくれる。俺はまず香奈の制約の腕輪を掴み、ライトを見る。ライトが『断ち切る者』を発動すると、制約の腕輪を掴んでいる俺の右手が光りだす。
その光が少しずつ腕輪へと流れて行く。そして『断ち切る者』の光が腕輪を全て覆い尽くすと、パキンッと音を鳴らして腕輪が外れた。
俺が香奈の腕輪の付いていたところを確かめると、香奈はくすぐったそうにする。少し我慢してくれ。……よし、特に異常はなさそうだな。
「香奈、どこかおかしなところとかは無いか?」
「……うん、大丈夫です従兄さん」
香奈は笑顔で答えてくれる。うん、良かった。魔力でもおかしなところは無いな。よし、次は
「次は麻里ちゃんだ。右腕を出して」
「あ、は、はい」
……なんで顔を赤くしているのだろうか? まあいいか。香奈の時と同じように腕輪を掴む。そして魔力を流す。俺の手が輝き出し、その光が少しずつ腕輪を覆っていく。
先程と同じように光が腕輪全体を覆い尽くすと、バチンッと音がして腕輪が外れた。よし。あとは特に問題が無いか確認してっと……俺が見る限りは大丈夫そうだな。
「麻里ちゃん、どこかおかしなところは無いかい?」
「……」
…….ん? 返事が返ってこない。顔を上げるとぼーっと俺を見ている麻里ちゃんの顔があった。ぼーっとしてどうしたのだろうか? 何か異常でもあったのか?
「麻里ちゃん、大丈夫か?」
「えっ!? ひゃ、ひゃいです!」
顔を真っ赤にしてどうしたのだろうか? おでこを触って確かめても熱はなさそうだし。
「本当に大丈夫か? もしどこかおかしいなら……」
「い、いえっ! だだだ、大丈夫ですからぁ!」
そう言って、物凄い速さで俺から離れていく麻里ちゃん。……ああ、俺が触れたから顔を赤くして怒っていたのか。それは悪い事をしてしまった。
「また、レイは……はぁ」
「うぅっ、麻里ちゃんまで従兄さんの事を……」
アレクシアと香奈が何かを言っているが、いまいちわからない。まあ、見た限りは特におかしなところも無さそうだから大丈夫だろう。
「ふぅ、何とかなったな。ライトありがとう。助かったよ」
「いえ、お役に立てて良かったです。それでは私は戻ります」
そう言ってライトは消えてしまった。……普通に呼んだけど、結構な距離があるのに行き来出来るんだな。精霊って不思議だな。
「さっきの腕輪は他の勇者も付けているのか?」
「はい。最初にこの世界に来た時に皇帝陛下から渡されましたから」
俺は地面に落ちた腕輪を拾う。普通に見る分にはただの腕輪だが、詳しく調べて見ると、呪文が腕輪の内側に書かれている。
「さあ、どうしたものか」
たぶん、香奈たちがつけていない事には直ぐに気が付かれるだろう。黙っていても仕方がない。
「行くの?」
「行かないと駄目だろう。本当に最悪の場合戦闘になる。クロナは急いでメリア将軍のところに行ってくれ。マリリン、クロナについてあげてくれ」
「わかりました、レイ様!」
『わかったわ、主様』
クロナは急いで部屋を出る。マリリンが後ろについて行っているのがわかる。まあ、そうならないのが一番だが。
◇◇◇
「ほらっ! リリーちゃん! 起きて行くよ!」
「……めんどくさい……」
「もうっ! ようやくみんな起きたんだから始めぐらいシャキッとしようよ!」
「まあまあ、イレーズ。落ち着いて下さい。宣戦布告をしに行くだけなので、いてくれれば大丈夫ですよ。それではクロノ様。行きましょうか」
「ああ。これで俺が世界の神に……」




