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前日譚 或る吸血鬼の話

【覚悟の日→英雄の時代の終焉へ】

PL(参加プレイヤー)天川よろずくん


セムリナパレス。

サージ家。


よろずは、既に心を決めていた。

6年前、孤独に旅をしていた彼に、安息と仲間を繋いでくれた宿。

夜の眷属たる自分を受け入れてくれた木蘭さん。

そのひとが死に瀕しているという、現実。

彼女のために他の人が死ぬことを、彼女は善しとしないだろう。

だけど、自分は人ではないから。


「それで、行くのね?」


テーブルの向かい側に座った、プラチナブロンドの髪の女性に問われた。

俺は迷い無く答えられたと思う。


「はい。

 すみませんが」


申し訳ないと思っていた。

自分を受け入れてくれたのは、木蘭さんだけではなかったから。

セラフィルさんは俺に居場所をくれたから。

ずっとここに居ていいと、言ってくれたから。


「いいけど、いつ帰ってこれるのかしら?」

「・・・・・・」


こともなげに発せられたその問いに、なんと答えたものかと思う。

この人は頭がいい。

今回の闘いで、俺がどうなる確率が最も高いのか、わからない人ではないだろう。

それなのに・・・。


「恐らく、1ヶ月以内には」


なんとか、欺瞞を口に紡ぎだす。

俺とて、帰ってこられるなら、帰って来たい。

暖かい、この家に。


「それで、俺が帰ってこなかったときはこれを・・・」


そう言って一通の手紙を取り出す。

200年近くの生の中で色々なものを手にした。

その一部を、サージの家の役に立てて欲しいと思った。


「一ヶ月ね」


その手紙を手にして、セラフィルさんは立ち上がる。


「はい。

 長いこと続く闘いでは・・・・・・って!

 ちょ!」


何を思ったのか、受け取ってすぐ彼女は暖炉に手紙を放り込んだ。

元が薄い紙っぺらである。

俺が一日迷って書いた手紙が一瞬で灰になって消えた。


「こんなものは要りません」


アイスブルーの瞳で真っ直ぐ俺のほうを見て、告げられる。


「帰ってこられなかったら?

 よろず君らしくも無い寝言ですね」

「・・・・・・いや」

「死ぬつもりで戦うものは、死ぬだけ、です。

 行くなら帰ってきなさい」

「・・・あの」

「まだ何か寝言が言いたいんですか?」


驚いて声も出なかった。

この人にこんな風に喋られたことが衝撃的だった。

同時にそういう風に何かを言わせている自分に気づいて、恥じた。

そうだ、セラフィルさんは強い人だ。

そして、木蘭さんも。


「いえ、なんというか。

 今のは無しでお願いします」

「あら、何のハナシをしていたかしら?」


おまけに、優しい。

これは完全に負けだ。

穏やかな笑みを向けられる。

ここに来られて良かったと思う。

帰って来たいと改めて思える。


「ちょっとアイリンで商談があるので留守にします。

 お土産買ってきますね」

「はい。

 年度末は忙しいので、早めに帰ってきてくださいね」


挨拶をして部屋を出ると、そこには3人の子供と、お父さんのスレイクルさん。


「君が居ないとチェスの相手が居ないから、早めに帰ってきてくれよ」

「寒いから風邪ひかないように気をつけてねー」

「お土産は食べれるものがいいです」

「よろは一杯遊びにいけていいなぁ」

「なに盗み聞きしてんですか!

 スレイクルさんまで!」


笑って手を振って出発する。

帰ってこられる家と家族を目に焼き付けて。

北に歩を向けて決意する。

皆が幸せになれるように頑張ろう。

あの人を守って、みんなを守ろう。


そのためには生き残らなきゃだけどな。

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