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無駄使いするデブといいましたか?いいえ必要経費ですわ  作者: 猫田33


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46.憧れと言われて悪い気はしませんわ


「浮かない顔ですね。エルメス。まだ彼に情がありましたか」

「そんなのございませんわ。でもあまりすっきりした気分ではないわと。どうしてかしら。いいところを皇帝に持っていかれたからかしら。私が言ったことより凹んでいたわ」

「人によって大事に思うことが違いますからね。たぶん彼は、地位と名声が大事だったのでしょう」

「そうね」


 騎士団長であることが誇りであることは明白だった。それが無くなれば衝撃が大きいのだろう。


「切り替えて美味しいものを食べましょう。エイダーは、今何を食べたいかしら。あそこの七面鳥のローストは、照りがよくて美味しそうですし。テリーヌは、彩りが美しいわ」

「君が食べたいのでしょう?」


 穏やかに小さく笑うエイダーを見て肩の力が抜ける。知らず知らずのうちにエルメスは、体を強張らせていたようだ。


「そうとも言いますわ」

「僕は、そうですね。あれが気になるのですがピンチョスというのでしょうか」

「えぇ、ピンチョスで合っているわ。それにしてもエイダー、あなた結構お酒に合う食べ物が好きね」

「……そうかも。君といると色々なことを知れて面白いなぁ」


 まだ皇帝が何かをしかけてくるかもしれないと気を抜くべきではないだろう。それでも料理は、他の貴族も食べるものなので毒を仕込むという真似はしないとエルメスは思っている。

 それにコレール伯爵家を皇帝が切ったことにより貴族の勢力図がかわるだろう。


「大変だったわねぇ。あなたがた」

「前公爵夫人」

「本当は、息子たちだけでよいのだけれど。私が気にかけている親戚の子があなたに会いたいと言っていたから連れてきたの。今日がデビュタントなのよ」

「はじめまして、ネピア伯爵の娘シェイライアと申します。エルメス様に会えてうれしいですっ」


 デビュタントらしい白いドレスを着た初々しい少女が期待に頬を赤く染め話しかけてきた。エルメスは、昔の自分もこういう時があっただろうかと思っていたがデビュタントを迎える前にコレール前伯爵により、ジャンとの婚約の打診があったため、デビュタントらしいデビュタントをしていない気がした。

 そういえば親代わりでもあった姉がそのことをとても気にしていたことを思い出した。


「エルメス様?」

「あらごめんなさいね。あまり若い貴族女性と話すことがなくて何を話したらと思ったの」

「エルメス様とお話出来るならなんでも嬉しいです。滅多に人を褒めない叔母様がお褒めになっていたんだもの」


 夫の帰りを家を守りながら待つのを美徳とする貴族女性として、エルメスもその姉シャネルも異端の存在だった。


「商人として、貴族の夫人として領地経営をしていたと聞いてすごいなと思ったのです」

「私もとても光栄だわ」


 前公爵婦人を見れば思い切り顔を背けられたが照れ隠しにしか見えない。教えてくれたシェイライアには、感謝しなければ。


「私、ジャノルド侯爵家のギルバート様と婚約が決まりましたの。だから同じく侯爵家に輿入れなさるエルメス様を参考にしたくて」

「私は私であなたはあなた。人の幸せは異なるけれど努力して常に知ることは何にでも通じますわ」


 傷ついたけれど出会った人たちがみんながみんな私を傷つけるわけではないと理解して感じていった。


「そして知って行動してきたことは無駄じゃないことを知っていて」

「はいっ、ありがとうございます!」

「シェイライア、ジャノルド侯爵家へ挨拶していた方達が終わったようですからいきますわよ」

「はい、エルメス様とお話出来て嬉しかったですわ。御機嫌よう!」


 シェイライアは、輝く笑顔で前公爵婦人についていった。


「エイダー、ずっと黙っておりましたわね」

「どうも僕には合わなくて。つい」

「仕方のない人ね。でも若い子に鼻を伸ばされるよりもいいのだけど」

「僕は、エルメス一筋です」


 エイダーに体を引き寄せられると貴族たちが集まってきた。


「アフェクシオン侯爵、お会いできて光栄です。私は」

「待て俺が先だ」


 先を争い話しかけようとしているようだ。皇帝と公爵家と縁があるとわかったからだろうか。ここは伯爵家で培った社交力を使う時だとエルメスが気合を入れた時、エイダーがそれぞれに向かい話しかける。

 いつも通りの穏やかな口調で争いの雰囲気が霧散した。前々から思っていたがエイダーは、とても聞き上手だ。そして頑張り屋でもある。


「エイダー、私喉が渇きましたわ」

「皆さんとお話出来てよかったです。婚約者を休ませたいので失礼いたします」


 休憩室につくとエイダーが珍しく深くソファーに座り込み顔を手で覆う。その隣にエルメスは、座った。


「私もあれには疲れましたわ。よく全員憶えておりましたわね」

「オンラードに叩き込まされたよ。アフェクシオンにこんなに注目が来るなんて思いませんでした」

「なるほど、でも堂々として恰好よかったですわ」


 頬にキスするとエイダーは、耳まで真っ赤にさせた。


「この歳で褒められると効きますね」

「これからもっと褒めますから覚悟なさって。どんな時もおりますわ。辛い時も楽しい時もずっと」

「僕のお嫁さんの方が恰好いいことを言いますねぇ」

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