38.奥様って言われると照れるわ
スルファム帝国は、初代皇帝が西の賢者の知恵を借り広大な砂漠に広大なオアシスを作ったのが始まりだった。オアシスは、旅人の喉を潤し食物を育て人が集まり巨大な帝国を作り上げた。中央に位置する皇帝が座する宮は、何度もの戦火をへて現在の優美な白く大きな城壁の宮がたつ見た目になっている。
しかし城壁から離れるにしたがって貴族、平民、流民と貧しくなっていく。だから帝都に入りまず最初に見るのは、帝都に入れず襤褸を纏うものたちだった。
「いつ見ても心が痛いわ。何かあったらあの方たちが最初に犠牲になってしまうのよ」
「そうですね。最初に犠牲になるのは弱いものたちだけです。せめて領地では、そういう者たちを雇って仕事をしてもらうようにしていたが。限度があります」
「人数が多いですし、何より施しに慣れてしまった者たちでは働こうとしないと……?」
「えぇ、働かないで貰えるという環境は楽ですから。そうなってしまった時に働くには、働くとよいことがあるという環境にしなければ」
「そこまで考えていたのですか?」
エルメスは、働く先が必要だとい思っていたがエイダーはさらにその先まで考えていたらしい。環境まで考えるとは、とても視点が広いのだと感心した。
「僕だって働きたくない日があるんですよ。お金も住むところも何もない人が嫌々働かされたらもっと働きたくなくなりますよ。……為政者としては異質な考え方でしょうがね」
「私が知るあなたは、とても一生懸命だから意外だっただけですわ。そもそもあなたは、働きすぎです」
「エルメスが休憩に誘ってくれるので前よりも休んでいますよ。おかげでメントルの機嫌がずっといいですよ」
確かにエイダーは、初めて屋敷であった時よりも顔色が良いように見える。
「だからでしょうかね。前より色々出来る余裕があるんです。あぁ、関所に到着しましたね」
話している間に貴族区間へ通じる関所についたらしい。エルメスは、途中にある商業区間を眺めるのが好きなのに見逃したらしい。
「閣下、門番から預かりました」
「ありがとう」
封蝋で閉じられた手紙には、家門や個人を示すものがなかった。後ろ暗いものか、関わりがあると知られたくない相手だろう。
エイダーは、手紙をその場で開けた。
「エイダー?」
「エルメス嬢、今夜は外で食べましょう。知り合いが美味しいお店を教えてくれました」
「えぇ、よいですわ。でもてっきりお屋敷で食べるのかと思いましたわ」
「そこは大丈夫ですよ。城壁が近いですね。ここまでくればあと少しです」
確かに窓から見える城壁は、とても大きく見える。シュルプリーズ家の屋敷も貴族街にあるが振興貴族のため端に近い。やはり元公爵家は、中心に近いらしい。
そう考えると縁あって共にいるが出戻りの子爵令嬢と侯爵家当主の差が大きい。
「さぁ、着いたよ。アフェクシオンの王都の屋敷です」
「大きいですわね」
馬車から見ても大きな屋敷であることが伺える。
「公爵家のときからあるからね。さぁ、手をとって」
エイダーの手を取り馬車から降りると玄関では、使用人達が待っていた。
「おかえりなさいませ旦那様、奥様」
まだ奥様ではないものの受け入れてくれてるというのが嬉しい。
「ただいま皆、彼女が僕の奥さんになるエルメスです」
「はじめまして、よろしくお願いしますわ」
だいぶ長くなりましたが、これから帝都編で終盤になります。よろしくお願いします。




