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 負けヒロインと間接キス


「もどりー」


「ダンボール出してくれてありがとう。奏くんお茶いる?家には冷蔵庫あるからキンキンに冷えてるよ」


俺が小鳥の部屋に戻ったことを伝えると、小鳥がリビングから顔だけをひょっこりと出した。


「いる」


「ふふっ、じゃあ大きめのコップで用意しとくね。あっ、手洗いうがいをしっかりしてね」


「ほーい」


俺は小鳥に返事を返すと廊下を歩いて右にある洗面所に入る。


水で軽く洗って、その後ハンドソープをつけ1分くらいかけて丁寧に洗う。そして水で泡を綺麗に流し、コップを手に取った瞬間ある考えが脳内を電流のように通り抜け固まった。


(これって、俺が口をつけるところによっては間接キスじゃないか?)


そう考えてしまったが最後、俺はこのコップの何処に口をつけるのが正解なのか真剣に考える。


(普通はコップの取っ手を持ってやるから、取っ手を持って真っ正面と反対側はアウト。そうなると取っ手側とその反対側だが、反対側はワンチャン取っ手を使わずにうがいをした場合口をつける可能性があるのでここもアウト。つまり俺が口を付けるべき場所取っ手側だ!)


俺はその結論に辿り着いた瞬間そこに口をつけようとして、またもある考えが脳裏をよぎった。


(これ、俺の唾液で取っ手汚れないか?)


そんなの洗えばいいだろうと冷静になれば分かることなのだが生憎、奏はこの時冷静ではない。

奏はどうすればいいんだ!?コップを片手に1分ほど何処に口を付けるべきか考えていると、


「奏くん、お茶の準備出来たよ〜」


「ああっ、今いく」


小鳥がリビングから奏を呼ぶ声が聞こえ、反射的に返事を返してしまい後悔した。

返事をしてしまった手前すぐにいかなければ可笑しいだろう。つまり奏が決断を下すまでの猶予は先程の返事をしたせいでなくなった。


(こうなりゃ、ヤケだ!)


奏は、人思いに真っ正面に口を付け水を口に含んでうがいを3回ほどした。


それが終わった後、コップをもとあった場所に戻して奏はリビングに向かった。


「?…奏くん頰赤くない」


「そ、そうか?いつも通りだろ」


小鳥は奏の頰がほんのり赤くなっているのを指摘され、奏はどうにか誤魔化すためとぼけた。


「?まぁ、体調が悪いなら言ってよ。しっかり看病してあげるから。もちろんそうなったら、おかゆをフーフーしてあーんしてあげるからね」


「それ小鳥がしたいだけだろ……」


「えへへっ、バレちゃったか♪」


小鳥はそう言って嬉しそうに頰を緩めチロッと舌をだす。


(可愛い!せっかくおさまってきたのに、そんなの見せられたらまた顔に熱が集まるだろ!?)


奏は、間接キスのせいでいつもよりも小鳥のことを意識してしまっているため小鳥の何気ない行動ですら魅力的だなと思ってしまう。


奏は彼は不味いと思い、小鳥が出したお茶を受け取りゆっくりと飲み、心を落ち着けようとする。


「あっ、それ……私が先に口つけてるやつ」


「ぶっ!」


奏は小鳥の指摘によってお茶が気管支に入りむせてしまう。


「かはっ、かはっ、それもうちょっと早く、かはっ、言って欲しかった」


「それは流石に無理だよ、あんな自然に飲まれたら」


「かはっ、かはっ、そうだな。すまん」


「別に気にしなくていいけど……間接キスをそんなに意識してくれてるなんて嬉しいな」


「……付き合ってないんだから仕方ないだろ。小鳥は可愛から尚更意識するし」


奏は小鳥がほんのり頰を染めながらはにかんでいるのを見て、顔をはぶてた子供のように俯ける。


「ふぇっ?…今なんて言ったの?もう一回いって」


「……言いたくない」


「むぅ、別に可愛いって言われたのは嬉しかったけど、それに反応したわけじゃないよ」


「なら、何に反応したんだよ?」


「そこは察して欲しいな」


奏は自身の発言で恥ずかしいことを言った覚えはそれしかない、他に何かあるだろうか?と思い自身の発言を振り返るも思い当たる節が……あった。


「小鳥」


「正解だよ!えへへっ嬉しいな。ねぇ、もう一回呼んで?」


「……小鳥」


「な〜に〜奏くん♪」


「何でもない、呼んだだけ」


「そっか〜」


小鳥はその後も、奏に下の名前を呼ばれたのが嬉しくて寿司が届くまでの間ずっと頰が緩みっぱなしだったという。


「ねぇ、何で下の名前で呼んでくれるようになったの?」


「……何となく」














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