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密猟者をとっちめろ!の巻

 カニーナの脱皮場所探しにアセスナとユリンは付きあうといい、カニーナもそうすべきと言ったが、ユニコーンがいることを鑑みて人間を信用しきれなかったムツハは「お忙しいでしょうから」と断る、実際魔法薬の仕込みなど魔女たちが忙しいのも確かだが、テイマーついて彼女たちもまたよく知らない、人に見られたくない秘密を持っている可能性も考慮したところもあっただろう、そういうわけでムツハたちだけで行く。


 土地勘があるわけでもなし、やっぱり付き添ってもらったほうがよかったかもと思いつつも、館の裏手から森ある道を通り沢沿いに出て進んだ先に良さそうな場所を見つけた。

 カニーナが脱皮する場所は清流近くの砂利が多い場所に決定する。ここまで大きな個体になれば十数年に一度の命がけの大仕事であるから、あまり人の来ない場所が望ましい。

 しばらく一緒にいられないからだろう「村の人たちに挨拶をなさい」だとか「怪しまれないよう、信用されるよう努めなさい」といった話をする。そういったことも含め今まではカニーナがサポートしてくれていたが、今回は頼れないことも気が重い。


 クモンビーは歩きながら至る所に細い糸を張り巡らせる、この糸で接近してくる相手を探知するわけだが、若く経験の浅いクモンビーがどの程度接近してくる相手を識別できるかは未知数だ。


「ブクブクブクブク……」

(しっかりやるのよ、一週間後くらいに会いましょう)

「ブリブリブリブリブリブリ」

(カニーナ姐さんの留守中は俺っちがあずかりますぜ)

「たまに様子を見に来るよ」

「ヴヴヴヴヴヴヴ……」

(カニーナ姐さん以外ウチに頼れる人いないっすから)


 奇しくも、綺麗な水のあるところはユニコーンが現れやすいスポットでもある、ここで出くわしたなら、カニーナは動けないなりに何らかのアドバイスをしてくれるかもしれないとムツハは思った。

 カニーナの脱皮が済むまでは下手に動かないことが最善であると考えていたのに、何故かカニーナがいないときにユニコーンに出会ったときのことを考えて動いている、冷静に最善の行動を常に選び取れるようになるのにも、経験というやつが必要なのだ。


 クモンビーが結界を張ったこと見届けたカニーナは沢沿いに穴を掘りみるみるうちに地下に潜ってゆく、地味だが普通の生物ではなし得ない、これが魔物の力だ。そして甲長1.6m程度もある巨大な陸棲甲殻類がたかだか一週間程度で脱皮完了するのもまた魔物であるからなのだ。

 そして人離れた姿と生態でありながら人に近い精神を宿している者も多い、何故かはわからないが事実としてそうなのだから受け入れるしかない。


 カニーナが地面に潜ったのを見届け、帰路に就く一行。

「ヴ、ヴヴヴ!」(ム、ムッちゃん!)クモンビーが何かを察知する。

 蜘蛛は常に歩きながらしおり糸という細い糸を出し続けている、その糸は道しるべや命綱であり、振動を察知する拡張された感覚器でもある。


「なに? いきなりユニコーン登場!?」

「ヴヴヴヴヴ……ヴヴヴ……?」

(いやー二足歩行だと思う……人間かなぁ……?)


 クモンビーは震えてムツハの陰に隠れ、怯えながら何かがいる場所を指さす、敗北のショックがなければ、飛びついて牙から直接電撃を食らわせる流れだったかもしれない。

 ノリユキは思う。


 敵か?……カニーナ姐さんが動けねえ時に……クモンビーはあんなんだし、ムツハの魔法じゃとても戦えねえ……


「誰ですか!? そこにいるのはわかってます」

「完全に気配を消していたつもりなのだが……君もユニコーンを狙っているのかね?」


 藪の中から聞こえる余裕に満ちた男の声、その口ぶりからもう話を聞きつけて密猟者が入ってきているのだろう。身構えるムツハたち、やはり魔女たちに付き添ってもらうべきだったと後悔する。


「ブリブリブリャーッ!!」(姿を現せ下郎ーっ!)


 相手にはブリブリ言っているだけにしか聞こえないが、華麗なドレスと縦ロール髪、お嬢様スタイルの男が藪の中から現れた。


「えっ!?」


 さすがに髭は剃っているし、長身だがそこまでがっしりした体形というわけでもない、遠巻きに見れば乙女に見えなくもない……かもしれない。

 男はこちらの怪訝な眼差しに気づいたようだが、努めて余裕のある程度を崩さない。


「目的のために必要な手段だ、君がもし協力をしてくれるならば、こんな格好をしなくていいのだが……どうだね?」

「お、お断り致します」

「この衣装一式と鬘は結構な値が張ってね……ユニコーンを捕えたあとは譲ってもいい。君、ドレスなんて着る機会など今までなかっただろう? 仕立て直す費用もこちらが負担するが、どうかね?」


 明らかに農民ではない、よそから来たトレジャーハンターか何かだろうか?

 如何に綺麗なドレスであっても、サイズ以前に変態男のお古を着るのは抵抗があるし、小馬鹿にしていることくらいはわかる。


「それと錬金術師に作らせた乙女フレグランス」女装男は香水を振りまく「これも非常に高価なものだ」


「うわぁ……それで引っ掛かるとは思えないんですが」

「いや、私はこれで一度はユニコーンをおびき寄せたことがある」


「えっ!?」ひっかっかったの? ムツハは驚愕する。


「その時は失敗したが手ごたえは掴めた、もし君が協力してくれるならば、君には角の値段の四割、報酬として出してもいい」


 ノリユキがコイツ隙がねえと思いつつ、女装男の足に粘液を吐きかけると命中する、相手はこちらを完全に侮っているのがわかる。


「やれやれ……ペットのしつけがなってないようだね、粘液でべとべとにすべきは私の靴ではなく、君のご主人様ではないかな?」

「ブリブリブリブリブリブーリ、ブリブリブリブリブリブリブリブリ」

(テメエが何言ってんのかわかんねーが、なんかきっしょいことだけは伝わってきたぜ)


 大抵の場合、魔物に人間の言葉は伝わらないがそれでもこのように何かが伝わることはあるのだ。


「仰るところの意味はよくわからないんですが、変態だということはわかりました」

「ハハハハ、随分失礼だなぁ君は、お里が知れるぞ?」


 男は実に余裕に満ちていた、足取りや立ち姿も強者のそれだ、ノリユキやクモンビーだってそれを感じているのがわかる。こっちくんなと言いつつノリユキは粘液を吐き続けるが、男は華麗な足取りでかわしつつ余裕の態度を崩さない。


「こちらの提案を飲んではくれないかね? 私としても紳士的に解決したいと思っているのだが」

「こ、答えは変わりません……ユニコーンに対しても紳士であってくれませんか?」

「よく考えてみたまえ、あれは生娘に目がない性獣、男性経験があれば突き殺しかねない性癖が歪んだ害獣に過ぎないと私は思うのだが?」

「それはが事実ならその通りですが……それと密猟の是非は別問題です」

「君はペットにしたいのだろう? それは許されると?」

「仲間に加える気もありません、守れる自信なんてありませんから」


 粘液を吐き続けたノリユキはかなり消耗している、そこにムツハは水の魔法をかけると「ブリブリ! ブリブリブリ!」(クモンビー! ぶちかませ!)そう言ってノリユキは後ろ飛びのく。


「ヴッ、ヴヴ……」(で、でも……)

「ブリブリブリブリブリブリブリ!」(ここで痺れるアレをやらねーでどうする!)

「ヴヴヴヴ……」

(で、でも……)

「おやおや、急にどうしたのかね? 内輪もめかな?」

「ブリブリブリーブリブリブリブリ!? ブリブリブリブリ!」

(俺っちみてーにゃなりたかねえんだろ!? なら男をみせやがれ!)

「ま、この程度の低ランクモンスター、私の敵ではないがね」

「ブリブリブリブリブリ!ブリブリブリ!?」(ここでビリビリやるだけでいいんだよ! 簡単だろ!?)


 ノリユキはさっきまで自分がいた場所を角で示す。


「ブリブリブリブリブリ! ブリブリブリブリブリブリ!」

(あいつは俺っちたちを見くびってる! 今ムツハを守れるのはお前だけなんだ!)


 言葉は通じない、だが侮られているならば不意打ちは通じるはず、クモンビーはええーいままよ! とノリユキの指示した場所に飛び発電する。


「セニョリータ!」


 変態男は、ダブルアヘ顔ピース状態で卒倒する「うわぁ」とちょっと引いているムツハ。

 やみくもに粘液を吐き続けていたのではない、クモンビーの糸とノリユキの粘液は女装男に続いていたのだ。


「ヴヴヴヴヴキュィィィィン!!」(どうだあああああああああああ!!」

「ブリブリブリブリ、ブリブリブリ!」(見たか変態野郎、これが男ってもんだぜ!)

「ヴヴヴヴヴヴヴ!」(最強タッグで粘液&電気!)

「ブーリブリブリブーリブリブリブリブリブリリ~」(すーくうために傷つくのが友情だから~♪)


 二人はブリブリヴヴヴヴ言いながら、仲良く勝利のポーズをとりつつ踊っている。


「クックックックッ」

「ブリッ!?」(なにっ!?)


 変態男は手を叩きつつ言う「いやぁ素晴らしい刺激だね」


「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!」(強がるなぁあああああああ!!)


「ひっ……」ムツハは小さく悲鳴を上げた、スカートが盛り上がっている、バッキバキにエレクチオンしているのだ。


「ブリブリブリブリャァァ!?」(なんだあああぁぁぁ!?)

「今の電気的刺激により私のスティックセニョールがグランドームと化したと言っておこうか」


 変態はその態勢を維持したまま立ち上がる、普通の人間では不可能な技、やはりただ者ではないのだろう。ムツハは恐怖でへたり込んでしまう。


「安心し給え、私の急所のふるまいは努めて紳士的(ジェントル)であるものだし、君をキズモノにしてしまっては目的は達せられない、ただ君は私に協力してくれたらそれですべてが丸く収ま」


 コキュリ……そう音がしたかどうかは定かではないが、変態の目が上を向き白目となった。


「ブリブリブリブリブリブリ、ブリブリブリ」

(人間の野郎はここが弱点らしいが、マジで弱ええんだな)


 スカートの中からノリユキが出てきた。

 手に持っていた乙女フレグランスの瓶が落ち土に埋まった石にあたって割れると、乙女なスメルが立ちこめてくる。

 鉄の股間は萎え、金の玉は力を失い、うずもれた砲は二度と火を噴くことはない、変態ちんこは死んだのだ……だが、念のため拘束するためクモンビーの糸で縛っておく、本来ハエトリグモの仲間は獲物を糸でくるんだりはしない。テイマーやほかの魔物との交流の中で生じた新しい行動、この積み重ねがいつか、独りでは動かせない現実を乗り越えうるものとなることだろう。


 変態はなかなか長身なうえにドレスにはところどころ金属の装甲版も入っており、ユニコーンに組打ちでも仕掛けるつもりだったことを想起させる。ムツハたちではとても運べず、魔女たちと相談の上、村に駐在している兵士に運んでもらった。

 輸送される際、睾丸を破壊された上に、追い打ちをかけるがごとく、女装をしている姿を何人もの人間に見られ、変な目で見られたのはかなり効いたらしく、すっかり意気消沈している。

 その上村の収入になりうるユニコーンを密猟しに来たのだから、その心象がよい筈もなく……

 なお、次の日乙女フレグランスの瓶が割れたところにユニコーンらしき足跡を発見したが、ユニコーンそのものを見ることはできなかった。


 村に滞在してから五日目、カニーナの様子を伺いに沢へ行く。

 カニーナも脱皮は終わったがまだ体が完全ではなく、今は抜け殻を食べながら体を回復させているという。

 土の中であるが会話はできる、人語をしゃべらぬ異なる魔物同士、そしてテイマーと話ができるかといえば、意思を伝えようとする力、念波のようなものがそれを可能にしていると考えられている。無論そうであるならば、テイマーはあらゆる言語の人々と会話が可能かと言えばそういうわけでもないため、もっと事情は複雑なものなのだろう。


 あの日以降、密猟者がいることもあり、魔女のアスセナとユリンに付き添ってもらうようになった。そもそもふたりが間に立ってくれること、それからクモンビーの鼠退治などのおかげで村人たちもムツハに対してあまり警戒はしなくなったし、ノリユキとクモンビーも子供たちの遊び相手を務めることもある。

 魔女二人は村人に信頼されている、であればその恩恵にあずかればムツハへの警戒心も薄くなるのは当たり前の話だったが、ムツハはユニコーンの件もあって人間を疑っており、そもそも自分が周りから得体の知れない存在と見られていることが頭から抜けていたのである、余裕がないと人間は的確な判断ができなくなるものだ。


 人間は人の間で生きてゆくものだから人間なのだというカニーナのいうことがちょっとだけわかった気がする。

 田舎が排他的な側面がある理由も密猟者が散見される今ならわかる、村にやってくるあやしい滞在者はわかりやすい、だあから旅人は地元の人々にそう思われないようふるまわなければならない。

 彼らもそれを理解してか、村に滞在せず山野に潜む者もおり、そういった人間は結構強いから厄介だが、その厄介な連中を田舎に住む若い魔女が制圧できるのだから驚きである。


「嘆かわしい……魔法使いの風上にも置けない真似を」


 アセスナが密猟者の男女の魔術師を一瞥してそう言った、今まで現れた密猟者たちはアセスナとユリンの敵ではなく、この二人は魔法を使う間もなく制圧、その手腕を見てムツハは思う。


 わたしは神に感謝することがある……あのふたりが敵ではなかったことに……!

 

 あの女装男に続き成敗したユニコーン目的の密猟者は三組目、野営の痕跡から数名でチームを組んでいると思われる連中もいるがまだ出くわしていない。一番厄介なのはユニコーン狙いの村人がいた場合、暴力で制圧したくはないし、黙認以外の選択をすればおそらく村の中がギクシャクし始めるだろう。

 幸い今は秋の農繁期で忙しく、目撃例も複数ありその動きの俊敏さ、何より娘が一人襲われていたのを目撃もしているから恐れてもいるのだ、村人がかけたであろう罠を時折見かけるが、今のところ全て何者かに無力化されている。


「ユニコーンは保護獣です、厄介な生き物ですが、捕り尽くしたら薬もなにもあったもんじゃないんですよ」

「国だって本気で保護する気なんてないでしょ、たまたま罠にかかったとか、事故死していたのを拾ったとか、そんな言い訳がまかり通ってるんだし」

「そうだ、あんたたちだって狙ってるくせに、自分たちの獲物ってだけだろ?」

「んにゃ、村の近くから追い出すためにテイマーに協力してもらってる、村がギスギスするのは見たくない」

「ユニコーンの角のせいで不幸になった人が大勢いることくらい知ってるでしょ、軽い気持ちで危険な行為に手を染めないで」

「あんたたちに何がわかる……僕たちはユニコーンの角が必要なんだ」

「恋人を危険な目にあわせてまで、ですか?」

「それは私が望んでやってるの……!」


 魔法使いにとって最も重要なのは魔力ではなく使用倫理であるという、蔑ろにする者はいずれ社会的に破滅する、要するに力を好き勝手に振るう者は社会から排除されるという当たり前の話を魔法使いを養成する学校では最重要項目として教えるのだという。


「あんたらがそれなりの魔術師だってわかるよ、学校でも社会に出てからも問題起こさず頑張ってきたんじゃないの? ……どうしてこんなことを」

「田舎で適当にやってる魔女になんてわかんないわよ……頑張って勝ち抜いて、ストレスばっかりたまる職場に入って、この程度で終わるなってことがなんとなく見えてくる……私たち幸せになっちゃいけないの?」


「幸せって……」ユリンは困った様子で言った「アセスナちゃん……どうする?」


「アセスナ……」男の魔術師は攻撃的な笑いを浮かべる「お前あのアセスナか?」


「だ、だからなんだっていうのさ」そう言いつつ目をそらすアセスナは青ざめていた。


「帝国立高等魔法学院(ていま)で校庭氷結事件起こして退学したアセスナだろ? 何善人ぶってるんだ? 大量殺人未遂を起こしたお前が」


 動揺するアセスナを守るべく、ユリンは「もう、しゃべるな」と二人の魔術師の頸動脈を魔法で冷やすことで頸動脈洞反射を引き起こさせ意識を失わせた。

 ユリンはアセスナを抱き寄せて「大丈夫だから」と言って頭を撫でる、ユリンの肩に顔を押し付けたアセスナは静かに嗚咽する。

 ユリンはアセスナの背中を撫でながらため息をつき言った。


「私たちが先生のところに厄介になってるわけは、学生時代に問題をおこしたからなの、わたしは力を見せつけながら、これくらい普通でしょ? みたいな感じ粋がってたら、友達がいなくなっちゃってね、仲間外れにされてるのに耐えられなくなって、中心にいた子をナイフで切りつけて捕まった」


 ユリンは私はやらかしたけど、アセスナが起こした事件で深く傷ついた人はいないということを繰り返して言う、なぜそんなことをしたかは言わなかったし、聞けるはずもない。

 かつての彼女らのような幼く危うい魔法使いを更生させる手段として、主に地方に住む人格的に優れたベテランの魔女の元で修行と更生を図るプログラムがあるのだという。むかしのふたりは力に溺れそれ故に間違いを犯し、今はそれを恥じているからだろうその反動もあって非常に真面目だ。


 ムツハの兄も強力で凶暴な魔物の威を得て慢心し、友達というか子分と共に散々周囲に迷惑をかけ「俺たちは成り上がる」などと言ってやくざな仕事にも手を出していた。


「お前の兄ちゃんみたいなやつがいるから、おれたちは差別されるんだ」


 と、自分を率先して責めてきたのは当時好きだった男の子だ、大きくなって顧みるにそれに関して異論はないのだが、わたしにそんなこと言われても……とも思う。

 当時彼がその差別を肌で感じていたわけではなく、親が言っていたことの鸚鵡返しに過ぎなかったということも今はわかる、だが大人たちの認識は子供に伝染するし、そうなれば友も遠ざかる、仕方のないことだ、自分を庇えば友達も裏切り者とみなされるのだから。


 兄のせいで散々嫌な思いをしてきたし、兄たちを止めるために両親と姉とその魔物たちは大変な思いをしたし犠牲者も出た、母の死をきっかけに兄たちの暴走は終わり、兄たちは魔物と心を通わせる力を奪われ、刑期を終えたのち里を追放された。

 母を死なせたことに関してさすがに後悔はしていたようだが、あんな取り返しのつかないことをやらかした鬼っ子は死ぬべきだとムツハは今も思っている、その時カニーナは脚を何本も捥がれて身動きできず母や仲間も守り切れなかったことを今でも悔やんでいる、欠損部が再生する蟹でなければカニーナだって再起不能になっていた。

 あいつがこのふたりみたいに更生できたとは到底思えない、ただ更生してたら今更いい人ぶりやがってと怒りがわいてくるし、更生していなければさっさと死ねばいいのにとしか思えない、つまりどのみち兄と和解するという選択肢はムツハにはない。


 あの二人は確かに過去過ちを起こしたが、聞いた範囲だと兄ほど取り返しのつかないものではないと思うし、そんなに責めてやるなという気持ちになったが、先にその人となりを知っていたからそう思うのだ。過去を理由にアセスナとユリンを今でも嫌っている人間がいるのだろう、もう許してあげればいいのにと思っているが、自分も状況が違えば二人に対し、兄に対するそれと同じ感情を抱いていたかもしれない。

 そして、密猟者たちを見て思う、もしこの人たちが友人だったとした場合、その言い分に渋い顔をしつつもやがて同意できる理由を見つけ出し、結局「よくないことだけど、しょうがないところもあるよね」と、不正を黙認してしまうのではないかと。

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