第129話 負け犬達
(…白き竜?)
ポカーンと固まっていた俺に、
フィズルが確かめるように声をかけて来た。
「それより、これからどうしましょうか?」
「あ、ああ……。
そうだな、予定通り皆を家に帰そう。
捕虜はガルフ・バウに送ってみるか。
人質として使えるかもしれん。
後の事は、ガルフ・バウの戦況を見て判断しよう」
「分かりました。ではそのように」
こうして俺達は、一度話し合った通り、
故郷への帰還を進める事にした。
ここには乙女座騎士隊だけを残し、
俺達は一度捕虜を連れて全員でカナンへ戻る。
兵達を家に帰した後、
捕虜とタリオン達を伴ってガルフ・バウまで向かう。
こういう計画だ。
"ワープ"でカナンまでの入り口を作ると、
皆テキパキと行動に移し始めた。
(……白き竜に敗れる?
他にも神獣種がいるのか?)
マーリンの言葉が頭から離れない。
いっそ、仲間達に聞いちまうか。
「なぁ。誰か、"白き竜"って知っているか?」
フィズルが首を傾げる。
「何かあったんですか?」
「マーリンというハルピュイアの女に言われたんだ。
"赤き竜は白き竜に敗れる"ってな。
"予知夢"の能力を持ってやがった」
皆、互いに顔を見合わせるばかりで、
答えは返ってこない。
すると、イーリアが小さく唸りぽつりと呟いた。
「確か、ロスデア北方のグリム=ガルド剣王国に
白き竜の伝承があったはず………
だけど、既に討伐されたはずよ」
■ロスデア島:勢力図
(グリム=ガルド剣王国……討伐済み、ね)
ラグナルが腕を組み、低く唸る。
「ハルピュイアか…悪戯好きの種族じゃ。
ただの悪戯の可能性もあるぞ」
そういえば、あのマーリン――
“ぷぷぷー♪”なんて、煽って来やがったな。
「くそー。ただの悪戯なのか?」
真意は分からん。
が、情報が無い以上、今は考えてもしゃーないか。
しかし、何とも後味の悪い話だ。
俺はモヤモヤを抱えながらも、その場を後にした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――カナン
■地図:ウェルス地方:カナン
ワープホールを潜り抜けた先の故郷で、
俺は熱烈な歓迎を受けた。
"主が捕虜を引き連れて帰って来た"
その事実が、村を熱狂に包んだ。
先に帰還していたダークエルフたちが
戦勝の報をもたらしていたようで、
広場では既に宴の準備が始まっている。
まったく、準備のいい奴らだ。
………俺からも火を入れてやるか。
付いて来てくれた仲間達に報いるべく、
戦利品を分配する事にした。
カナン、エル=ネザリ、グラントハルに
それぞれ300万 Rb。
三男のエドワード・ブルスターからぶんどった金だ。
日本円にしておよそ3億。
願ってもいない臨時収入に、村は更に沸き立つ。
「おかえりなさい!」
「おー!無事だったか!」
人間族、エルフ族、妖精族……種族の垣根を越えて、
皆がお互いの無事を喜び合っている。
難民達も、共に危機を乗り越えたことで、
本当の仲間になれた気がする。
そんな光景を見ながら、
俺はいつもより深く息を吸い込んだ。
どこか懐かしい木々の香りが肺に満ちる。
全員、無事帰還――
ようやく、家に帰って来たのだと実感が湧いてきた。
肩の荷がどっと軽くなったのを感じる。
どうやら俺も無意識のうちに抱え込んでいたらしい。
ふと視線を向けると、
ウィルが先に避難していた夫人たちと合流し、
互いの無事を確かめ合っていた。
(あっ、そうだ)
そんなウィルの姿を見て、
イスニア要塞で言いかけたことを思い出す。
村を襲っていたエドワードを襲撃したこと。
その時の救援要請が、ウィルの村の襲撃に繋がったかもしれない事。
俺は正直に話すことにした。
ウィルはしばらく黙って聞いていたが、
やがて、ふっと肩の力を抜いたように微笑んだ。
「なんだ。そんなことを気にかけていたのかね。
恐らく……襲撃は時間の問題だったさ」
逆に、ウィルは俺を慰めるように
スタルディア星王国の事情を語り始めた。
およそ70年前、"北方人の征服戦争"から続く、
ケルティア人とノルド人の根深い対立。
十字軍で長男を失ったブルスター家。
その悲しみが、ノルド人とブラスデン騎士団への
歪んだ逆恨みへと変わっていったこと。
そしてブルスター家に従属を迫られた時、
【弓聖】ロイド・ボーウェンが割って入り、
事を収めたこと。
彼は射手座騎士隊を率いて、
騎士団の戦列に加わった。
全ては子供たちの故郷を守るために。
「それでガルフ・バウへ来たって訳か…」
俺がそう呟くと、
ウィルはスッと近づいて来て静かに頭を下げた。
「頼む。
そのガルフ・バウとやらへ私も同行させてほしい。
そして恥を重ねて頼む。
ロイドを……射手座騎士隊を
引き上げさせる為に力を貸してほしい」
故郷を守るためにブルスター家に従って来ていたのに、
その故郷は奪われてしまった。
もうブルスター家に従う必要は無いということか。
(しかしなぁ………。
【弓聖】が抜けるのは大賛成だが、
3,000の軍勢の中にいるんだろ?
引き上げさせると言ってもどうやって――)
返事を迷っていると、
執事長のセバスチャンが静かに歩み寄って来た。
そして主のウィルと同様、深々と頭を下げる。
「旦那様は、
これは貴族流の断れない依頼だと申しております」
やかましいわっ!こいつめ!
「あ~わかったよ。協力しよう。
しかし約束はできんぞ。
なんせ殺し合いの最中なんだからな」
そう言うと、ウィルは心なしかニヤリと笑っていた。
きっと俺がエドワード襲撃の件を話した時から、
このお願いをいつ持ち出すか考えていたのだろう。
……"曲者"め。
「そろそろ行くか」
こうして俺たちは、カナンで束の間の平穏を味わい、
ガルフ・バウへと発った。
"ワープ"
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――ガルフ・バウ
■地図:ウェルス地方:ガルフ・バウ
冒険者ギルドの酒場、モーマンタイは
ルベル=オーガに占領されていた。
極悪にして非道。
ガルフ・バウで最も暴虐を好むオーガ種のクラン。
その中心にいるのはもちろん、"赤鬼姉妹"だ。
スカエルヴァはいつものように
飯を食らいながら、捕虜にマ〇コを舐めさせていた。
■スカエルヴァ
■オリガ
「しかし、妙なことになってんな~あいつら」
――この数日
スカエルヴァ達の話題をかっさらっていたのは、
射手座騎士隊であった。
攻城戦のあの日、
【弓聖】ロイド・ボーウェンはその業で戦況を覆した。
神の御業としか思えないあの射抜き。
厳しい戦いになることを覚悟したが、
【弓聖】が戦ったのはその瞬間だけであった。
魔法教団の禍災姉妹を撃ち抜くと、
射手座騎士隊はあっさりと撤退していったのである。
襲撃にしてもそう。
これまで何度か夜襲を仕掛けたが、
奴らは危険を払う程度に矢を放つだけで、
こちらへ攻め込んでくる気配がまるでない。
こちらも射手座騎士隊の領域だけは
踏み入れることが出来ず、
攻めあぐねる日々が続いていた。
「なんなんだろうな?あいつらのやる気の無さは」
スカエルヴァがぼやくと、
妹のオリガは遠くを見ながらため息交じりに答える。
「やっぱ、北の戦況を気にしてるんじゃないか?」
「んだよー。また北の戦況かよ~
アレクの事がそんなに気になるかよ~?」
スカエルヴァがからかうと、
オリガの耳がわずかに赤く染まる。
「ち、ちげーよ!戦略的に見てもだな――
……ん?」
その時、二人は外が騒がしいことに気付いた。
店の入り口を塞いでいた捕虜の男が
何やら揉めているかと思えば、
次の瞬間には勢いよく吹っ飛んできた。
「おい!ここは貸し切り――ほげぷぅ!!」
男は床を滑り、スカエルヴァたちの足元で止まる。
「アレク!!」
「お~噂をすれば♡………
イーリアまでいるじゃねーの♡」
そこには北の別動隊1,200を迎えに行ったはずの
アレクの達の姿があった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
赤鬼姉妹の姿が目に入った俺は、
眉をひそめながら答えた。
「ここに居たか、赤鬼姉妹。
ギルドも空になっているしよ、みんなどこ行ったんだ?」
スカエルヴァは、
飯を食いながら捕虜の頭を押さえつけていた。
オリガはというと、
姉の奇行にはもう慣れたのか、
特に止める気配もない。
それでいて普通に挨拶してくるんだから、
頭のネジが抜けきっちゃって、
もう見つからないんだろうな………。
そんなオリガが目を輝かせて近づいて来た。
「東の監視砦――"狼の領域"にみんないるぞ。
案内しよう。それより……勝ったんだな?」
「ああ」
そう言って、背後にズラリと並ぶ捕虜を見せつけた。
人間族の列が珍しいのだろう。
ガルフ・バウの住人が興味津々とばかりに集まってきている。
その中から特別な捕虜を連れて来て、
赤鬼姉妹の前に差し出した。
―――――――――――――――――――
・エドワード・ブルスター
└人間族:ケルティア人:♂:16歳
└ブランの息子、三男、男爵。
└蠍座騎士隊:隊長
・パトリシオ・ブルスター
└人間族:ケルティア人:♂:8歳
└ブランの息子、四男、男爵。
└乙女座騎士隊:隊長
―――――――――――――――――――
「こいつらはブルスター家のもんだ。
一応捕虜として連れて来たが、いるか?」
今度はスカエルヴァの目が一瞬で輝いた。
「マジかよ!おい!
丁度捕虜が欲しい事情があってよ~♡
全部くれ♡」
需要があるようで何よりだ。
牡牛座騎士団との戦いに備え、
交渉材料にでも使うつもりなのだろう。
連れて来てよかった。
「アレク、早く行こうぜ♪」
「お、おう」
俺は捕虜全員をルベル=オーガに引き渡すと、
オリガの案内について行った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人の背中を見送って、
スカエルヴァはため息をついた。
あんな嬉しそうなオリガを見たのは久しぶりだ。
まるで妹を盗られたみたいで、少し嫉妬した。
「…はぁ。もういいぞ。下手くそ」
乱暴に男の髪をつかんで顔を上げさせる。
その捕虜は、最初の襲撃で攫って来た騎士隊長であった。
―――――――――――――――――――
・エルドリン
└人間族:ケルティア人:♂:32歳
└牡牛座騎士団:騎士隊長
―――――――――――――――――――
「へっ♡へっ♡」
ここまでの"教育"に付いて来ただけの事はある。
中々の仕上がりなのだが……まだ心が足りない。
"スカエルヴァ様に奉仕させていただく"という心が。
それに、新しい捕虜達にも教育を施さねばならない。
やることは盛りだくさんだ。これから忙しくなる。
(さて、妹を盗られた鬱憤を晴らすとするか♡)
スカエルヴァが合図すると、
部下達はエドワードとパトリシオのズボンを脱がし始め、
脚を強引に広げて拘束した。
「何しやがるっ!女ぁ!!」
「余が誰か知っておるのか!」
辱めを受けた二人の怒号が響くが、
ルベル=オーガの女たちの嘲笑にかき消される。
「しょっぼいチ〇ポだな…」
スカエルヴァはそれだけ言うと、
エドワードの前に立った。
そして―――
「オラァ!」
〇〇
↓
××
振り抜かれた蹴りが、
エドワードの股間に容赦なく突き刺さる。
「ぴぎゃぁあああ!!」
金玉を潰されたエドワードは、
白目を向き、泡をふいて地面に崩れ落ちた。
「ほぉ~♡喘ぎ声は立派じゃねぇか♡」
もだえ苦しむ姿を見下ろしながら、
スカエルヴァの顔は紅潮していく。
そしてゆっくりと視線を横へ向けた。
次の標的――パトリシオへと。
「ひっ……!ま…待ってくれ……!
余は跡継ぎを残さねばならんっ!!」
「ウラァ!」
〇〇
↓
××
「跡継ぎがぁあああ!!」
兄と同様、パトリシオも白目を向き、
泡をふいて地面に崩れ落ちる。
二人とも、お尻を突き出して失神していた。
「つまらん喘ぎ声だな。…ん?」
そんな2人に、熱い視線を送るオスがいた。
メンブとモンブ。
彼らは、ルベル=オーガに珍しい"玉付き"のオーガだ。
(……チ〇ポは使えんが、ケツは使えそうだな)
思い立ったスカエルヴァは、
メンブとモンブに2人の教育を任せる事にした。
「イインデスカ?アネゴ…?」
「あぁ、いいぞ」
「ヤッタ♪ヤッタ♪」
「アナホリスンベ♪」
メンブとモンブは狂喜し、
失神している二人を担いでどこかへと消えていった。
「さぁ~て♡」
スカエルヴァの視線が、
アレクが連れてきた捕虜たちへと向けられる。
本格的な“教育”の始まりである。
その時、元気のいい負け犬の鳴き声が響いた。
「ワンッ!」
声の主はドラン。
アレクにめった刺しにされたものの、
治癒を受けて命だけは繋いだ。
だが右足はまだ引きずっている。
「ほぉ。見上げた犬だな。
足が悪いみたいだが、何があった?」
「ワンワンッ!」
「……それでいい。合格だ♡
犬は吠えることしかできない」
こうして、捕虜達は次々と
ルベル=オーガに組み込まれて行った。
平均寿命20日とも囁かれる捕虜専属の部隊。
――"スカエルヴァ様と負け犬達"。
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