第113話 ペンドラゴン
―――スタルディア星王国:イスニア要塞
■地図:イスニア要塞
ブラスデンと領地を競る国境沿いの要塞で、
ブルスター家の三男、エドワード・ブルスターは人生について考えていた。
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・エドワード・ブルスター
└人間族:ケルティア人:♂:16歳
└ブランの息子、三男、男爵。
└蠍座騎士隊:隊長
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ケチの付き始めは今から約2年前の事か。
14歳の成人を迎えたその日、
親父に呼び出された俺は、そこで運命を告げられた。
親父の弟、ルートおじさんの手で蠍座騎士隊の隊長に任じられ、
そのまま"第二回 金星十字軍"へ送り出されたのだ。
…昔から親父との折り合いは悪かった。
よっぽど家に置いておきたくなかったんだろう。
当然、俺がまじめに前線なんぞ行くはずなく、
その辺の村を襲っては女を犯して回っていたのだが、
ある時、しくっちまった。
襲った女に強く抵抗され、揉み合っているうちに村の衛兵に取り押さえられたのだ。
その結果、俺は自領の要塞に引き戻され、
長い軟禁生活を送る羽目になった。
――2年だ。あまりにも長い軟禁生活だった。
オカズにも困り果てたよ。
幸いにも、帝国士官学校で一目見た王女の姿が脳裏に焼き付いていた。
■イーリア
来る日も来る日も、王女を犯すことだけを夢見て生きて来た。
あの女のおかげで長い軟禁生活を凌げたと言ってもいい。
今は逃亡中の身とのことだが、
見つけたら、念入りにボコってからブチ犯してやる。
…
……
この軟禁生活で、嫌と言う程思い知ったよ。
俺の立ち位置ってやつをな。
俺が日の目を見る未来なんざやって来ねぇ。
――だから計画を立てたのさ。
全員殺す。
ブルスター家は全員ぶち殺して俺が取り仕切る。
幸いにも、ちょいと従順な態度を見せただけで、
親父たちは自分達に都合のいい計画を立て始めた。
短絡的な親父たちは子供が手足の如く動くと信じ込んでいるらしい。
……そのまま油断してやがれ。
まずは、弟のパトリシオから殺そうか。
昔は俺を慕っていたので可愛がってやっていたが、
俺が軟禁されると態度を一変させやがった。
この俺をあからさまに見下しやがったあのガキは、
命乞いさせてから殺す。
次に、兄貴のネイサンだ。
偉大な長兄、レイル・ブルスターの後を継いだのがあのガリ勉だと?
俺があのナヨナヨしたザコに劣るってのか?
到底許容できねぇ。
徹底的に力の差を分からせてから殺してやる。
そして最後に、糞親父。
俺以外の跡継ぎが全員死んだと伝えたら、どんな顔をするだろうなぁ♪
悲痛に歪む顔を目に焼き付けてから殺してやる。
くっくっく。
「ア~ニ~キ~!」
そんなことを考えていると、
聞き覚えのある声が聞こえて来た。
帝国士官学校の舎弟、ドランの声だ。
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・ドラン
└人間族:ケルティア人:♂:16歳
└騎士、エドワードの舎弟
└蠍座騎士隊:隊員
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石畳をドスドスと揺らすような足音が近づくと、
息を切らしたデブが飛び込んできた。
丸みを帯びた腹が、キモイ汗で滲んでいる。
「ア…アニキ!来ました!
"ドラゴン・ジェミナ"発動っす!!」
肩で大きく息をしつつも、
ドランは興奮を抑えきれない様子で報告した。
検問と称して隊商を略奪してきたが、
それも飽きて来たんだろう。
新しい刺激がやって来たと言わんばかりだ。
「お~し」
"ドラゴン・ジェミナ"………
ここから南のドラコニス山脈へ出向き、
補給路を敷設するとかいう聞くだけで眠くなる作戦だ。
そんな計画に、まじめに従うと思ったか?
頃合いをみて、パトリシオから始末してやる。
「それともう一つ、女も見つけました!」
「ほほぉ~?」
2年前、犯し損ねた女の居場所が分かったらしい。
イスニア要塞へ派兵された直後、
速攻で村を焼きに行ったが、そこにあの女は居なかった。
幸い、家からの支給に加え、
これまで散々略奪を繰り返してきたおかげで、
金は腐るほどある。
当初は騎士50、従士100の
150人の集まりに過ぎなかった蠍座騎士隊も、
今や冒険者や荒れくれ者を雇いまくって800を超える大所帯だ。
万が一もねぇ。村なんざ跡形もなく消し飛ぶ戦力だ。
パトリシオの乙女座騎士隊と一戦交える前に、
ちょうどいい肩慣らしにもなるか。
「おぅし、景気付けにその村焼きに行くぞ♡」
こうして、蠍座騎士隊は
イスニア要塞から動き出した。
…自領の村を目指して。
■地図:さそり座騎士隊
奪い、犯し、殺す。
それこそが人生だろう?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――ドラコニス山脈:カナン
アレクは自分の城で
家政水晶を眺めながらため息をついていた。
水晶に手をかざすと、そこには"侍従長"と"執事長"という
二つのジョブの任命権限が表示される。
フィズルの説明では、
侍従長は主人の身の回りを取り仕切る責任者、
執事長は邸宅の最高位で家財全般を管理する立場らしく、
どちらも任命権限を持つ重要なジョブの為、
慎重に選任する必要があるのだとか。
■家政
メイドを雇えるのは男の夢かもしれんが、
……さすがにこれに3億円はやり過ぎよな。
やり過ぎたかと肩を落としていると、
背後から弾むような声が飛んできた。
「ただいま戻りました。旦那様♡」
!!
この声は!!
■イヴ
■リーシャ
「おお!イヴ、リーシャ!!」
ラエルノアのもとで修行していた二人が、ついに帰ってきた。
途中、情けなくも何度か迎えに行こうかと思ったが……
今日までよく我慢したものだ、俺。
二人に抱きつくと、
懐かしい雌の香りが漂ってくる。
(ああ、いい匂いだ。この匂いが俺を狂わせる)
二人の香りを堪能しながら、ステータスを確認する。
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・イヴ:Lv.61
・リーシャ:Lv.64
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「二人とも、レベルが5つ位上がったか?
よく頑張ったな」
「新しい魔法も覚えたんですよ」
「なんだと…!?」
能力も確認っと。
■イヴ:魔法
「"花の魔法"に…"神聖魔法"!?」
「はい!ラエルノア様から教えていただきました!」
まじかよ…【聖杖】"イス"ラエルノア直伝とは恐れ入る。
イヴは神話の腕輪 《ブリューナク・ブレイセル》無しでも
神聖魔法を使えるようになったってのか。
俺は【アドニス】の力で自分が覚えている魔法は女に写すことが出来るのだが、
二つとも俺が覚えていない魔法である。
大変ありがたい。
「ご主人様ぁ…私の方はどうですかぁ?」
リーシャも甘えた声で寄りかかって来る。
どれどれ…
■リーシャ:魔法
「おお!"香の魔法"に…混沌魔法!!」
「はい。ナイレアお姉さ…
ナイレア様とアリス様に教えてもらいました♡」
「そうか!リーシャの師匠は《王杖》の二人か!!」
フィズルも目を輝かせ、足早に近づいてきた。
「二人ともすごいです!これは大変なことですよ!!」
フィズルは魔法教団で魔法を学んでいた身だ。
よほど大変なこと来意。
アウラや、ネイも興奮を抑えきれない様子で、
跳ねるように駆けつけて来ると、
イヴとリーシャに甘えている。まるで姉妹の様だ。
(………おや?リーシャの奴、
さっきナイレアの事を"お姉様"と呼びかけたか?
……っは!まさか!!)
リーシャは"両性愛"、ナイレアは"同性愛"だ。
リーシャ!!ナイレアと寝やがったな!!
これはどうなんだ?
愛奴の主人として、厳正に判断する必要がある。
…
……
(レズはセーフっ!!)
慎重に審議を重ねた結果、
リトル・アレクは"問題なし"との判断を下した。
"百合の世界は侵すこと能わぬ聖域であり、男がこれに判断を下すことはできない"
との判決文だ。
※キュキュ―!!※
「ん?」
リーシャの使役獣、スライムの"Q"だ。
何だか色が変わっているような…
"解析"
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・粘体(中位種):ピンク・スライム Lv.21
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おお?粘体(下位種)が、粘体(中位種)へと変わっている。
フィズルの目にも珍しく映ったようで、目を丸くしている。
「え?どうしたんですか?Qちゃん?」
リーシャは気まずそうに答える。
「……一緒に訓練していたら、進化したらしくて」
「魔獣が"進化"するのは知っていましたが、
ピンク色のスライムは見たことがありません。
何か特殊な進化条件があるのかしら…」
「魔法教団でも新種ではないかと、
話題になっていたわね……」
リーシャには進化条件に心当たりがあるようで、
含む所があるようだった。
「それよりも、旦那様…」
急に、イヴの声が暗くなる。
そうだ。2人が帰ってきた理由。
――戦争が近づいているのだ。
「心配するな、早速明日、
1,200の軍勢とやらの様子を探って来る」
そう告げると、案の定、
愛奴達は一緒に行くと言い出した。
だが、さすがに許可できない。
ヤバくなったらさっさと"ワープ"で撤退するつもりだが、
人数が増えれば増えるほど、素早い撤退が行えなくなる。
もたつけば命取りだ。
「だが、私は必要だろう?」
「む?」
ヨルが立候補して来た。
■ヨル
「軍隊を見に行くなら、
スタルディアの事情に明るい奴が必要だ」
フーム。それは…確かにそうか。
「よし、分かった。
明日は俺とヨルで出るぞ。3日以内に戻る」
言い切った瞬間、胸の奥にひやりとした影が差した。
――戻れないかもしれない。
そんな考えが、ふと脳裏をかすめる。
もし俺が死んだら、みんなには逃げてもらわないとな。
そのことを伝えようと口を開きかけた、その時だった。
「そう言うことでしたら、
今夜は張り切って晩御飯を支度しましょうか」
イヴが柔らかく微笑んだ。
まるで、俺の胸のざわつきを見透かしたかのように。
その笑みは、送り出す者の祈りそのものだ。
不安を抱えた俺を、そっと肯定してくれる温かさがあった。
いつだってそうだ。
イヴは俺が迷いに沈みそうな時ほど、静かに支えてくれる。
俺は吹っ切れたように家政水晶へ手を伸ばすと、
一つのワードを登録した。
"ペンドラゴン"
淡い光が水晶の内部を走り、文字が刻まれた。
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名前:アレク・ペンドラゴン Lv.167
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「あの…それは?」
「ああ、たった今、苗字を設定した。
今日から俺はアレク・ペンドラゴンだ」
そしてイヴの手を取り、水晶に近づける。
「俺と同じ苗字になってくれるか?」
「…はい♡」
水晶に光が走り、イヴの名前が刻まれた。
■イヴ・ペンドラゴン
「すごい!すごい!
氏族になったんだ!私も登録したい!」
「ああ、お前たちは俺の家族だ」
光が連続して走り、次々と名前が刻まれていく。
■リーシャ・ペンドラゴン
■アウラ・ペンドラゴン
■フィズル・ペンドラゴン
■ネイ・ペンドラゴン
俺は必ず戻って来るぞ。そして誰も死なせん。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺がベッドに横たわると、
イヴとリーシャが、生まれたままの姿で俺の前に立つ。
部屋には強烈な雌の香りが充満し、
第六感が大量の危険信号を上げている。
――うるさい。黙れ。俺の邪魔をするな。
今日は思いっきり二人を抱くと決めたんだ。
当然、朝までだ。
…
……
二人の乳房が迫って来たのが最後の光景だった。
そこから先はよく覚えておらんのだ。
「んほぉおおおおおお♡」
潮を噴かされ、情っけない声を城中に響かせてしまった事だけは覚えている。
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